週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

アジア球界を渡り歩く「助っ人」の目から見た日韓野球 韓国でリスタートを切る外国人選手のいま

 3月になり、オープン戦たけなわの時期に入った。とは言っても、近年は各球団、2月から様々な形で対外試合を組むようになってきている。その際の相手として、韓国のプロ球団を選ぶチームも多い。2月末に行われた短期リーグ戦「2016球春みやざきベースボールゲームズ」でも昨年の韓国チャンピオン・斗山ベアーズが、日本ハムを除くパ・リーグ5球団と練習試合を行った。

☆アジアが気に入った外国人選手たち

 2月28日(日)に大王谷球場で行われた斗山対ロッテの試合前。野球場に隣接する、サブグラウンドとして使用されている陸上競技場で投手陣が体を動かしていた。両軍が同じフィールドで練習する風景は春の風物詩と言っていい。

 そのフィールドの一角で3人のアメリカ人投手が談笑していた。その一人はソフトバンクからロッテに移籍したスタンリッジ。日本で63勝を積み上げたベテラン助っ人も今年で日本でのプレーは9シーズン目を迎える。

 もう一人は斗山のエース、ダスティン・ニッパート。MLBでスターターの地位をつかみ損ねた彼は、移籍初年度の2011年から4年連続で2ケタ勝利を挙げ、名門チームの先発の柱となった。昨年は故障による離脱で6勝止まりだったものの、チームからの信頼はゆるぎなく、ポストシーズンでは主軸として起用された。期待に応える活躍もあり、斗山はレギュラーシーズン4位から韓国シリーズ優勝、という究極の「下剋上」を成し遂げた。

 談笑を終えて、メイン球場へ向かうもう一人の男、マイケル・ボウデンに「何を話してたんだい?」と声をかけた。

「いや、他愛もない話だよ。スタンリッジとは顔なじみなんでね。ロッテに移ったのは知らなかったけれど、ここで顔を見たんで、久々に声をかけたんだ」

試合前のサブグラウンドで談笑するボウデン(左)、ニッパート(中)、スタンリッジ(右)

 笑いながら返してきたボウデンは、一昨年は西武でプレーし、今季から斗山の新しい助っ人投手となった。メジャー6シーズンで3勝に終わった右腕は活躍の場を日本に求めたものの、定まらない起用法の中、2勝1敗と結果を残せず、2014年の1シーズン限りで退団している。

 昨年は3Aでプレー。先発投手として11勝5敗の好成績を収めると、代理人は再びアジア行きを勧めてきた。西武時代と比べても遜色ない提示額に首を横に振るという選択肢はなかった。なにより、金額よりもその国のトップリーグでのプレーすることは、マイナーとはやりがいが違う。それに日本にいる間、古都・鎌倉を訪ねたり、富士登山にチャレンジしたり、アジアの文化に魅力を感じていた。

「食事は全く問題ないよ。和食もよかったし、今はコリアンフードを楽しんでるよ」


☆日本と韓国の野球の違いとは……

 アジアの文化や食事は気に入っている、というセリフは斗山の打の新助っ人であるニック・エバンスからも聞いた。彼も2014年シーズンのわずかな期間ではあったが、楽天でプレーした。2本のヒットを打っただけで、2015年の契約に結びつけることはできなかったが、わずか2カ月ほどの日本滞在ですっかりアジアが気に入ってしまった。昨年、3Aでレギュラーの一塁手として3割を打つと、日本での経験を見込んだのか、斗山がオファーを出した。そして今、4番候補として2度目のアジア野球に挑戦している。


 彼とは27日(土)にお倉ヶ浜球場で行われた楽天戦の試合前に話した。“アジアン・ドリーム”をつかむため、懸命に新天地にアジャストしようしている彼に日本と韓国で野球に違いはあるか、と問うと、「まだわからないよ」という返答だった。これにはボウデンも「両者を比べるにはまだ早い」と声をそろえる。

顔をセンター方向に残す日本のバッターに対し、体を思い切り捻じるようにバットを振り切る韓国のスラッガー。
初回からバントでランナーを進める日本に対し、初球から好球必打の韓国。
相手のスキを見つければソツなく次の塁を陥れる日本に対し、ディフェンス面の粗さが目立つ韓国。

 この2日間、日韓球団の試合を見ていると、様々な違いが見受けられた。彼らはこれからの実戦を通じて、日本での失敗を踏まえて、母国・アメリカや日本の野球と韓国野球の違いを探し、アジャストしていくつもりのようだ。

☆韓国野球の練習は意外に牧歌的だった?

 意外だったのは、二人が日韓の練習量はさほど変わらないと言ったことだ。日本では韓国プロ野球の練習量が多く、厳しい、と韓国に渡った日本人選手の言葉として報道されていたが、実際はそうでもないらしい。

「韓国の方がリラックスしているね」

 とはボウデンの言葉。たしかに、斗山の練習風景は整然とした日本のチームのそれと違い、どこか牧歌的な感じがしないでもない。


 宮崎での“国際オープン戦”には多くの韓国人ファンがスタンドに押し寄せていた。日韓問題がなにかとネガティブに捉えられている昨今だが、元助っ人を訪ねて韓国に行ってはどうだろう。日韓戦とは違った韓国野球もまた興味深いものになるに違いない。


文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方