8月6日に令和初となる夏の甲子園が開幕! 観戦気分をさらに盛り上げるべく、2014年秋の初開催以来、抜群の人気を誇る本誌『野球太郎』の定番企画『スカウト的観戦者カルト座談会』が、東京・岩本町のとある一室で開催された。
今回は甲子園に出場する注目選手、惜しくも地方大会で敗れたドラフト候補を語り尽くす「夏の高校野球特別編」。ドラフトマニア、高校野球ファンが会場を埋めた。
出演者は本誌『野球太郎』でおなじみの“スカウト的観戦者”蔵建て男氏、yuki氏、高梨雅男氏、FGE(ファームゲームイーター)氏。皆、全国の選手をチェックし、スカウト顔負けの鋭い視点で逸材を発掘。注目選手の正味を見立ててきた面々だ。
週刊野球太郎では本イベントで名前が挙がった逸材のなかから“甲子園に出場する注目選手”数人にフォーカスしてダイジェストで紹介!
昨夏は“ミラクル金足農”にサヨナラ2ランスクイズで敗退。準々決勝で涙を飲んだ近江。昨夏、力のあるところを見せた左腕エース・林優樹、高校ナンバーワン捕手と評される有馬諒の強力バッテリーは今年も健在。2年生遊撃手・土田龍空などタレントが揃い、“今年こそ”と優勝を期している。この優勝候補の扇の要・有馬は蔵氏、yuki氏が注目選手リストに名を挙げている。
蔵:高校生の捕手のなかでは、トータルバランスは1番。肩がいいし打っては4番。とにかく欠点がない。有馬がいれば試合が壊れることはありません。
高梨:すばぬけていますよね。インサイドワーク、気配りも抜群。
yuki:総合力が高いです。打撃では強い球を引っ張れるし、ゆるい球もうまく拾える。甲子園では4番としても活躍しそうです。
また、本イベントの司会を務めた野球ライター・菊地選手も「有馬に取材すると、何手先も読んでいる棋士と話しているような気分になる。ほかの高校生の捕手と比べて頭2つ抜けている。格が違います」と高評価を与えた。
なお、蔵氏の優勝予想は近江。爆発力はさほどではないが完成度が高く“外さない”のが理由だ。ベスト4は固いか!?
一昨年は打撃記録を更新しまくった広陵の中村奨成(広島)、昨年は金足農の快進撃を支えた吉田輝星(日本ハム)と、キラ星のごとくスターが現れる甲子園。今年、そんな存在になりそうな気配を漂わせるのが前佑囲斗(津田学園)。蔵氏とFGE氏が前を推している。
FGE:甲子園に出場したことでドラフトの指名順位を上げそうなのは前でしょう。センスがありつつ、大化けしそうなロマンがある。器用なところもあるので、プロ野球の指導者は育てやすそうです。
蔵:前は球のスピンがすごい。指先感覚がいい。140キロくらいのストレートでも、相手のバッターは高めを振ってバットに当たらないんです。“奥行きのある”素材型ですね。でも、まだこんなものじゃない。プロでもローテーションが期待できる投手です。
また、前とともに“今夏の活躍で順位を上げそうな選手”として語られたのが、鈴木寛人(霞ヶ浦)。4氏全員がリストに入れた唯一の選手だった。
yuki:高校生BIG4に入ってもおかしくない投手です。140キロ中盤の力のあるストレートを低めに投げられる。今夏の甲子園では奥川恭伸(星稜)に次ぐ投手じゃないでしょうか。
高梨:以前はカクカクしたフォームでぎこちなさがありましたが、なめらかなフォームで投げられるようになりました。しかも、ゆったりしたフォームで投げるのでタイミングが取りづらいです。
ご存知の通り、甲子園では霞ヶ浦は初戦で履正社に敗退。先頭打者本塁打を浴びた影響が大きかったのか、鈴木の調子は上がらず3回途中7失点でノックアウト。悔しい結果に終わった。しかし、本イベントでの絶賛された逸材として今後の成長を楽しみにしたい。
センバツ準優勝から夏の頂点を目指す習志野の飯塚脩人、星稜悲願の初優勝という重責を担う星稜の奥川恭伸も、もちろんチェックすべき投手だ。まずは飯塚の評価から見ていこう。
yuki:飯塚はまだ体が細いですが、体幹がしっかりしていて150キロを超えてきます。ロングリリーフOKの精神力も評価点です。将来的な投手像としていろいろな可能性があるので、プロで使えるポイントは多そうです。
蔵:心身ともにタフになった。余裕を持って戦えるようになりましたね。
続いて、今夏最注目の投手・奥川は?
高梨:石川大会の準決勝、決勝で苦しんだ分、甲子園でのびのび戦うことができるか。ただ、チームが奥川頼りになってしまう展開がありそうなので、プレッシャーがかかる場面は多そう。
蔵:“夏の優勝投手”が似合う馬力型のエースですよね。石川大会がいい経験になったのではないでしょうか。
yuki:奥川は投げる球がすごい。ストレートもスライダーも。“間違いない投手”です。菅野智之(巨人)のように、プロで長い間、エースとして活躍できると思います。
高梨:ただ、石川大会の決勝で小松大谷に本塁打を2本打たれているのが気になります。もしかすると現状では投げ方にクセがあって、ライバル校にそれがバレているのではと……。
ともに優勝候補の習志野と星稜。ギリギリの戦いが続くなかで、飯塚と奥川が見せる真価を甲子園で確認したい。
なお“なかなか足を運べない地区をチェックする”がモットーのFGE氏が“ロマン枠”として隠し玉的に名前を挙げたのは、強打で鳴らす鶴岡東の丸山蓮。「とにかく飛距離がえげつない。スケールが大きい」とのこと。“ロマン枠”好きはぜひチェックを!
さあ、いよいよ甲子園は佳境に向かう。そして、この宴が終わればドラフトは目の前だ。本誌『野球太郎』やスカウト的観戦者たちの見立てをガイドに、注目選手の一挙手一投足に熱視線を注いでみよう!
蔵建て男(くらたてお)
ドラフトサイト「迷スカウト」管理人。ネットスカウトの草分け的な存在。ハンドルネームは競馬で「蔵を建てたい」という願望からきている。
西舘勇陽(花巻東) / 投手
鈴木寛人(霞ヶ浦) / 投手
有馬諒(近江) / 捕手
前佑囲斗(津田学園) / 投手
武岡龍世(八戸学院光星) / 遊撃手
井上温大(前橋商) / 投手
玉村昇悟(丹生) / 投手
落合秀市(和歌山東) / 投手
下村海翔(九州国際大付) / 投手
上野響平(京都国際) / 遊撃手
yuki(ゆき)
1996年から20年以上続く老舗サイト「ドラフト会議ホームページ」の管理人。
鈴木寛人(霞ヶ浦) / 投手
飯塚脩人(習志野) / 投手
有馬諒(近江) / 捕手
井上朋也(花咲徳栄、2年) / 外野手
常田唯斗(飯山、2年) / 投手
井上温大(前橋商) / 投手
鈴木健介(松商学園) / 投手
赤坂諒(上野学園) / 投手
田部隼人(開星) / 遊撃手
工藤ナイジェル(桐生第一) / 二塁手
高梨雅男(たかなし・まさお)
小学3年から『報知高校野球』を愛読し、今は高校野球の映像収集が趣味。強豪校野球部OB。
土田龍空(近江、2年) / 遊撃手
鈴木寛人(霞ヶ浦) / 投手
大久保翔太(関東一) / 外野手
宮崎恭輔(國學院久我山) / 捕手
菅野秀斗(山梨学院) / 二塁手
長岡秀樹(八千代松陰) / 遊撃手
篠木健太郎(木更津総合、2年) / 投手
森木大智(高知、1年) / 投手
赤坂諒(上野学園) / 投手
吉田力聖(光泉) / 投手
藤本竜輝(社) / 投手
FGE(ファームゲームイーター)
大学で硬式野球をしたのをきっかけに大学野球にハマる。ロマンあふれる選手を好む傾向が強い。
丸山蓮(鶴岡東) / 外野手
武岡龍世(八戸学院光星) / 遊撃手
鈴木寛人(霞ヶ浦) / 投手
前佑囲斗(津田学園) / 投手
東海林航介(星稜) / 外野手
石澤大和(網走南ヶ丘) / 投手
駒井将生(北陸) / 投手
赤坂諒(上野学園) / 投手
石黒佑弥(星城) / 投手
下村海翔(九州国際大付) / 投手
文=山本貴政(やまもと・たかまさ)