※こちらの記事には「野球芸人」アンガールズ・田中卓志さんは出てきません。ご了承ください。
※こちらの記事は『野球太郎 No.007』に掲載されたものと同じです。
2013年シーズンは16年ぶりのAクラスに入り、初めてクライマックスシリーズに出場した広島東洋カープ。ファーストステージでは、シーズンのほとんどの試合を阪神ファンで埋め尽くされる甲子園の一角を真っ赤に染めたファンのバイタリティとともに阪神を破った。
投手も野手も元気な若手選手が多く、今年もさらなるチーム力の上昇が期待される。さらに力を加えられる可能性を予感させたのが昨秋のドラフト会議だ。どんな選手が広島に加入し、どんな効果を与えられるのか? ドラフトの結果を振り返ってみよう!
ドラフトのポイント!
大瀬良大地(九州共立大)を担当スカウトが引き当てる「大仕事」
上位3位だけで指名を終えてもいい、と思えるくらいの「大成功」
◎今年のナンバーワン投手
1位指名で3球団が競合した即戦力右腕、大瀬良大地(九州共立大)の獲得に成功。さらに2位でも即戦力右腕の九里亜蓮(亜細亜大)を獲れて、3位では俊足好打の内野手、田中広輔(JR東日本)も獲った。これでもう指名を終わってもいい、と思えるぐらい、大成功のドラフトだった。
大瀬良は将来性も含めた器で言えば、今年の投手でナンバーワンだと思う。プロで10年以上、エースが張れるという、それだけのものを持っている大器だ。
ただし、低めのストレートの威力と、緩い変化球=100キロのカーブを本気で使う気になったときに、またガラッと変わってくるはず。言い換えれば、現状では65%から70%ですべてを見せていない。つまりまだ“宿題”があるわけだが、ともかく、広島に決まったのはめでたいと思う。
というのも、くじを引き当てた担当の田村恵スカウトは、いつも大瀬良を最後まで見ていた。どんなグラウンドでも、他のスカウトが5回、6回で帰ってしまっても、田村スカウトだけは試合終了まで見ていた。それで自らの手で引き当てたのだから本当によかったと思うし、大瀬良にとってもこういう入り方というのはいいと思う。
2位の九里は、大瀬良とは違うカラーを持った投手。実は九里の場合、「スピードがだんだん落ちてきた」とか、「いろんな投げ方をする。迷っている」とか、首をひねるスカウトの方が多かった。それでも高評価の広島、納得がいく。
理由は、高校時はとにかくスピードを追い求めていたのが、大学4年間で実戦力がついて、まったく別人になったから。すなわち、両サイドが使える制球力に、チェンジアップ系でカウントを作る技術、さらには〈常勝〉亜細亜のエースとしての重圧を背負って、丹念に投げる投球姿勢が身についた。その点、東浜巨(現ソフトバンク)というお手本がすぐ身近にいたのが大きかったようだ。
大柄な体格の九里だが、その器用さ、融通性、汎用性に関しては、見た感じ以上の才能だと思う。
3位の田中は、遊撃、二塁、どちらでも高いレベルでミスなく守れる選手。打撃にしても、ファーストストライクから長打が打てる、という資質を高校時代から持っている。そしてその資質を、彼は2年間、JR東日本でフルに発揮した。「いい打者」、「すごい打者」、いろんな表現があるが、彼は「怖い打者」だと思う。
広島の内野陣では来年、遊撃の梵英心も34歳。消耗の激しいポジションで故障も多いだけに、田中には梵を追い出すぐらいになってほしい。叩き上げの匂いがする選手なので、同じ匂いがする菊池涼介との二遊間はハマりそうだ。
4位の西原圭大(ニチダイ)は欠点がない社会人右腕。持ち球のスライダー、カットボール、スプリットを制球できる能力がある。あとは決め球を作りたい。
そして5位の中村祐太は、成長に期待の高校生右腕。上から投げて、低めに素晴らしく生きたボールがいくのが最大の魅力だ。打っては長距離砲の資質を持つので、万が一、投手でダメだったときには転向する手もある。
総じて、文句なしの顔ぶれ。100点満点としたいところだが、先述のとおり大瀬良には“宿題”がある。若干、その分を引いて、90点としておきたい。
即戦力で働けるのは?