プロ野球は後半戦が始まり、セ・リーグは広島、パ・リーグは西武が首位を走っている。しかし、これから勝負どころの夏場を迎えるだけに、まだまだCS進出も含めた順位争いは続く。この後半戦では一戦一戦がチームの順位に影響を及ぼし、重みが違ってくる。それはチームだけでなく、選手にとっても同様だ。特に戦力外の当落線上にいる選手たちは、必死にアピールしていかねばならない。
本特集「崖っぷちからの逆襲〜オレは戦力外候補じゃない!」の後編では、戦力外通告の可能性がありそうではあるが、「いや、まだやれる!」という選手を、エールを込めて独断で取り上げてみたい。今回は投手編。
セ・パ交流戦で最高勝率をマークしたヤクルト。その要因は勝利の方程式をはじめとした中継ぎ陣の好投だった。日本生命賞を受賞した石山泰稚が10試合で7セーブ、防御率0.00を記録し、近藤一樹、中尾輝らセットアッパーも軒並み好成績を残している。しかし、その一方で結果を残せなかった投手がいる。2005年の高校生ドラフト1巡目でプロ入りを果たした村中恭平だ。
今シーズン、6月3日に初めて1軍に登録された村中は、その2日後の初登板から3試合連続で失点してしまう。特に6月15日の日本ハム戦では1/3回を投げて、被安打1、与四球4の大乱調で3失点。降板後にベンチで青木宣親に励まされるシーンがネット上でも話題になった。その試合を最後に村中は登録を抹消され、2軍へ降格。以来、1軍に呼ばれていない。
チームの左腕事情を見ると、中継ぎでは中尾輝が台頭し、中澤雅人も踏ん張っている。先発ではベテランの石川雅規に、若手では寺島成輝、高橋奎二が控えているものの、十分に揃っているわけではない。村中の復活はチームにとっても、非常に大きな力となるだろう。
ここから2軍で結果を出して再び1軍へと這い上がり、巻き返しを図りたい。
「山賊打線」を軸に開幕から首位を走り続けている西武だが、エースの菊池雄星と榎田大樹を除いた投手陣に不安を抱えている。開幕から6連勝と勢いに乗っていた多和田真三郎もここにきて大量失点を喫するケースが増え、防御率は4.69まで跳ね上がってしまった。
また、中継ぎ陣も増田達至、武隈祥太をはじめ多くの選手が防御率4点台を超えており、1軍、2軍の入れ替えを頻繁に行ってしのいでいる苦しい台所事情だ。
しかし、そのような状況でも1軍に呼ばれていない投手が藤原良平だ。2016年は10試合、2017年は8試合と少ない登板数ながら、防御率は2016年が2.08、2017年が1.54と安定。今シーズンも中継ぎとしての出番があるかと思われた。ところが、2軍で14試合に登板して防御率6.86と結果を出すことができず、1軍の投手陣が不安定な内容ながら声がかからない。
今シーズンがプロ入り11年目の32歳。年齢的に上がり目はそう多くない。しかし、逆の見方をすれば、経験は若手よりも豊富だ。その経験を武器に、再び1軍の舞台で登板機会を得るためにも、まずは2軍で結果を出したい。
2009年のドラフト1位で楽天へ入団した戸村健次も今シーズンが正念場となりそうだ。2015年にキャリアハイとなる37試合に登板し、7勝(11敗)をマークしたものの、今シーズンはここまでわずか2試合の登板に留まっている。
5月22日のオリックス戦では打球がアゴに直撃し骨折。すでに手術を受け、復帰は夏場以降と報道されているが、近年、結果を残せていないために終盤戦でのアピールが必要となる。昨シーズンは「困ったときのトム」と頼りにされ、チームの窮地を救ってきた。今シーズンは自分自身のピンチを救う投球を見せたい。
同じく楽天では小山雄輝も苦しい状況だ。今シーズンは出番がなく、2軍でも6試合で防御率は5.87と苦しんでいる。巨人時代の2014年に先発として6勝(2敗)、防御率2.41をマークしたときの輝きを取り戻したい。
ここまで1軍、2軍で結果を出せていない選手にとって、後半戦は来シーズンへの生き残りを賭けた大事な時期になる。各選手ともに笑顔で契約更改を迎えられるよう期待したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)