3月25日の開幕から3番・センターでスタメン出場していた松井は、3月29日の4試合目までの全17打席でヒットなし。出塁もエラーと四球がそれぞれひとつずつ。しかも、じつは昨年終盤も調子を落とし、23打席ヒットなしでシーズンを終えていたのだ。
つまり、3月29日の段階で、年をまたいで公式戦では40打席連続ノーヒット。さらにこの日は、守備のときにレフトのウィーラーと交錯して、ヒザを負傷。登録抹消こそまぬがれたが、大事を取ってベンチで待機することになる。
復帰したのは、4月13日のロッテ戦。1打席目は四球を選び、続く2打席目に、イ・デウンからライトスタンドに放り込む今季第1号のアーチ。初ヒットをホームランで決め、連続ノーヒットを41打席で終わらせた。
1本出れば、そこは実力者。翌4月14日こそ音なしだったが、4月15、16、19日は、3試合連続で快音を響かせ、スランプ脱出の兆しはうかがえた。もう大丈夫だろう。
今季、ルーキーながら開幕からショートのレギュラーに定着しているチームメイトの茂木栄五郎(ドラフト3位)は、東京都武蔵野市出身。西武時代の松井に憧れ、ファンクラブに入って声援を送っていたほどの「推しメン」だったという。その松井のマネをして、もともと右打ちだったところを、左打ちも猛練習。プロでは左打ちだが、野球少年時代はスイッチヒッターとして試合に出ていたほど。
幼少期から憧れていた選手と、同じユニフォームを着てプロのグラウンドに立つという幸運に恵まれた茂木。これには、自身の努力だけではどうしようもない部分がある。憧れられる側の選手が、高齢になっても活躍し続けていなければ成立しないからだ。
現在では外野手に転向している松井だが、もともとはショート。走攻守揃った内野手という点では、茂木と松井は似たタイプの選手ではある。トリプルスリーの経験もある松井のレベルに茂木が達するには、そう簡単ではないだろうが、松井がこの先も現役を続けていれば、身近で見る茂木の成長もより促されるのではないだろうか。
今後のベテランの活躍に期待すると同時に、ルーキーへの波及効果にも注目しておきたい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)