高校野球の世界では、しばしば「小兵選手」が活躍する姿を目撃する。
古くは1954年春、飯田長姫高(現飯田OIDE長姫高)のエースとして活躍した身長157センチの「元祖小さな大投手」光沢毅。また、1971年夏の甲子園で決勝に進出した磐城高のエース・田村隆寿も165センチの「小さな大投手」と呼ばれた。最近では2013年夏の甲子園で「カット打法」が賛否を呼んだ156センチの切り込み隊長・千葉翔太(当時花巻東高、現日本大)を思い浮かべる人もいるだろう。
多くの場合、小兵選手はプロへ進みたいと思っても「身長の壁」が立ちはだかる。だからこそ、時としてその「身長の壁」を八艘飛びのごとく、ひょいと飛び越え、プロの世界に挑んでくる小兵選手の姿を見ると、つい声援を送ってしまいたくなるのだ。
今季のプロ野球は、そんな小兵選手たちの活躍が目覚ましい。身長の壁をものともしない大活躍ぶりをチェックしてみよう。
オリックス・バファローズのドラフト7位ルーキー・西野真弘。身長167センチは、現在の球界では163センチの内村賢介(DeNA)、水口大地(西武・育成)に次ぐ背の低さだ。そんな男が最下位に沈むチームにあって、身長の低さも、ドラフト順位の低さも感じさせない大きな活躍を見せている。
最近のプロ野球ではもう一人、170センチ未満の小兵ながら活躍を見せた人物がいる。身長169センチの大?雄太朗(西武)だ。
小兵選手たちの活躍とは裏腹に、今季のプロ野球では高身長選手たちの不遇が相次いでいる。
西野より38センチも大きい球界最高身長、205センチのミコライオ(楽天)は開幕前に椎間板ヘルニアを患い、復帰時期はいまだ未定となっている。球界2位の203センチの右腕・オンドルセク(ヤクルト)はチームの貴重なセットアッパーとして活躍しているものの、球界3位の201センチ、クロッタ(日本ハム)は開幕直後に2軍落ち。その後、1軍に昇格してもすぐにまた降格、を繰り返している。
最後にいま一度、問いかけたい。なぜ我々は小兵選手たちの活躍を願い、その勇姿を見た時に感動を覚えるのだろうか。
それは、彼らが常に「全力」だからだ。体格という、プロスポーツにおいては絶対的なハンデを負いながらも大男たちと伍して戦うためには、自らの肉体の可能性を最大限に生かす術を身につけ、常にそれを「全力」で発揮しなければならない。
西野が憧れる平野恵一にケガが多いのも、小兵を補って余るほどのハッスルプレーをいつも見せているからだ。
そして、大崎が参考にした森友哉にしても、170センチに似つかわしくないフルスイングでホームランを量産している。
高校球児のような「全力プレー」を見せる小兵選手たちが結果を残せば、全国の小さき者たちも勇気が持てるはずだ。だからこそ、我々は彼らの姿を追い続けなければならない。全力のプレーには、全力の声援で応えていこう。
(記録はすべて5月17日現在)
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)