ペナントレースは佳境を迎え、ドラフト会議が1カ月あまりに近づいてきた。大学野球のリーグ戦は残っているが、ドラフト前に行われる主要な大会はすべて終了。各球団のスカウトたちは、独自のリストを元に誰を指名するか頭を悩ませているだろう。
その指名を決める上で大きな要素となるのが、高卒、大卒、社会人出身といった入団経路だ。高卒であれば数年後の軸として期待し、大卒や社会人であれば即戦力としての働きを求めるのが一般的となっている。
連載企画「新発見! 野球太郎的成功&失敗の法則」の第2回では、今シーズン、高卒、大卒、社会人経由の選手がどのような成績を残しているのかをチェック。出身カテゴリーにおける法則を紐解いてみる。
(成績は2018年9月11日現在)
今シーズンの打率ランキングを見るとセ・リーグとパ・リーグで大きく傾向が異なっている。セ・リーグは外国人選手をのぞくと、坂本勇人(巨人)、平田良介(中日)、丸佳浩(広島)、鈴木誠也(広島)と続き、トップ10のうち7人が高卒でプロ入りを果たした選手なのである。
ベスト10に入っている高卒以外の選手は、青木宣親(ヤクルト)、宮崎敏郎(DeNA)だけ。セ・リーグでは高卒でプロ入りを果たした選手が多く活躍している傾向が見える。
一方のパ・リーグはトップ10に高卒の選手は3人だけ。大卒、社会人出身が7人とセ・リーグとは真逆の傾向となる。
本塁打ランキングでもその傾向は同じだ。セ・リーグのトップ5に名を連ねる4人の日本人選手は全員が高卒である。パ・リーグは5人中3人が大卒となっている。
■セ・リーグ打率ランキング
1位:ビシエド(中日)
2位:坂本勇人(巨人/光星学院高)
3位:平田良介(中日/大阪桐蔭高)
4位:青木宣親(ヤクルト/早稲田大)
5位:丸佳浩(広島/千葉経大付高)
6位:鈴木誠也(広島/二松学舎大付高)
7位:坂口智隆(ヤクルト/神戸国際大付高)
8位:宮崎敏郎(DeNA/セガサミー)
9位:山田哲人(ヤクルト/履正社高)
10位:岡本和真(巨人/智辯学園高)
■セ・リーグ本塁打ランキング
1位:丸佳浩(広島/千葉経大付高)
2位:筒香嘉智(DeNA/横浜高)
2位:バレンティン(ヤクルト)
4位:山田哲人(ヤクルト/履正社高)
5位:岡本和真(巨人/智辯学園高)
5位:ソト(DeNA)
■パ・リーグ打率ランキング
1位:柳田悠岐(ソフトバンク/広島経済大)
2位:近藤健介(日本ハム/横浜高)
3位:秋山翔吾(西武/八戸大)
4位:浅村栄斗(西武/大阪桐蔭高)
5位:吉田正尚(オリックス/青山学院大)
6位:井上晴哉(ロッテ/日本生命)
7位:外崎修汰(西武/富士大)
8位:中村晃(ソフトバンク/帝京高)
9位:中村奨吾(ロッテ/早稲田大)
10位:角中勝也(ロッテ/高知ファイティングドッグス)
■パ・リーグ本塁打ランキング
1位:山川穂高(西武/富士大)
2位:柳田悠岐(ソフトバンク/広島経済大)
3位:松田宣浩(ソフトバンク/亜細亜大)
4位:浅村栄斗(西武/大阪桐蔭高)
4位:レアード(日本ハム)
続いて投手を見ていく。近年、タイトルホルダーなどの実績がある投手の出身カテゴリーを見ると、こちらもある傾向が浮かび上がっている。大卒の先発投手はセ・リーグで活躍する傾向が強いのである。
今シーズンの防御率ランキングでは、セ・リーグは大瀬良大地(広島)、菅野智之(巨人)、東克樹(DeNA)と上位3人が大卒組。規定投球回に到達している選手を見ると、日本人投手は防御率上位の3人に加え、山口俊(巨人)、岡田明丈(広島)となっており、高卒で規定投球回に到達しているのは山口ただ1人だ。
規定に到達していないものの勝ち星を多く挙げている投手も小川泰弘(ヤクルト、7勝)、小野泰己(阪神、7勝)、九里亜蓮(広島、7勝)と大卒が続く。
また、タイトルホルダーを見ても最多勝、最優秀防御率において高卒選手が獲得したのは、過去10年で現ドジャースの前田健太(PL学園高→広島)しかいないのだ。
一方のパ・リーグは高卒投手の活躍が目立つ。防御率ランキングではトップこそ大卒の岸孝之(楽天)だが、以降は菊池雄星(西武)、上沢直之(日本ハム)と続き、他にも西勇輝(オリックス)、涌井秀章(ロッテ)と高卒の投手が多く名を連ねている。規定投球回には到達していないが、千賀滉大(ソフトバンク)も高卒だ。
少し遡ってみてもメジャーリーグで活躍する元パ・リーグ戦士の田中将大(ヤンキース)、ダルビッシュ有(カブス)、岩隈久志(マリナーズ)も高卒からプロの世界に飛び込んでいる。
もちろん大卒や社会人出身の選手が活躍していないわけではない。岸をはじめ、東浜巨(ソフトバンク)、有原航平(日本ハム)、石川歩(ロッテ)と実績ある選手も多い。しかし、セ・リーグに比べると高卒投手の活躍する割合が非常に高いのだ。
球場の広さ、DH制の有無、育成方針の違い……さまざまな要因はあるが、ひとつの傾向として高卒野手はセ・リーグ、投手はパ・リーグの方が活躍している。と頭の中に入れておくと、ドラフト会議をより楽しめるはずだ。
■セ・リーグ防御率ランキング
1位:大瀬良大地(広島/九州共立大)
2位:菅野智之(巨人/東海大)
3位:東克樹(DeNA/立命館大)
4位:ガルシア(中日)
5位:ジョンソン(広島)
■パ・リーグ防御率ランキング
1位:岸孝之(楽天/東北学院大)
2位:菊池雄星(西武/花巻東高)
3位:上沢直之(日本ハム/専大松戸高)
4位:マルティネス(日本ハム)
5位:西勇輝(オリックス/菰野高)
文=勝田聡(かつた・さとし)