このシーズンオフにFAで移籍したのは5人。糸井嘉男(オリックス→阪神)、陽岱鋼(日本ハム→巨人)、山口俊(DeNA→巨人)、森福允彦(ソフトバンク→巨人)、岸孝之(西武→楽天)だ。
3月13日現在でオープン戦に出場しているのは森福、岸の2名のみ。両ベテランは実績もあり調整も問題ないだろう。一方、糸井、山口、陽は故障、体調不良などもあり調整が遅れている。
自主トレ中に右ヒザ関節炎を発症した糸井は打撃練習、走塁練習を開始。3月9日にはスライディングも披露。急ピッチで開幕戦へ向け調整を進めている。金本知憲監督は3番・中堅を考えているようだが、はたして。
右肩痛、インフルエンザなどで出遅れた山口。春季キャンプでブルペン投球を行うまでに回復したものの、いまだ3軍での調整が続いている。開幕ローテーションを諦めていないと語っていたがほぼ絶望的。復帰時期に注目が集まる
陽はWBCを辞退してまで新天地での調整を優先した。しかし、下半身の張りを訴え3軍で調整。3月半ばに1軍実戦復帰予定だ。巨人の長年の課題だった中堅を埋めるピースとしてやってきた陽。残された実戦期間は少ないが、開幕スタメンを競争で勝ち取るつもりだ。
オフに行われたトレードによる移籍は2件。両方が巨人絡みだ。一番大きな話題となったのは巨人と日本ハムによる大田泰示・公文克彦と吉川光夫・石川慎吾のトレードだろう。
巨人は未完の大器として期待をかけ続けてきた大田をついに放出。代わりに2012年のMVP左腕・吉川が加入することで先発ローテーションに厚みをもたらそうとした。しかし、吉川はオープン戦で結果を残しておらず3試合、12回を投げ防御率7.50。今ひとつの仕上がりだ。
一方、大田は巨人とのオープン戦でスイングした際に負傷し、開幕出場は絶望的。両チームとも狙い通りにはいっていない。
続いて、もう1つのトレードを見てみよう。巨人は小山雄輝を放出し、二塁候補として柿澤貴裕を楽天から獲得。柿澤は8試合に出場して15打席を与えられたものの安打は0。開幕1軍は厳しそうだ。
一方、楽天に移った小山雄輝は中継ぎで3試合に登板。2試合を無失点に抑えたものの3試合目で3失点し、首脳陣から絶対的な信頼を得るには至っていない。開幕1軍を確実にするためにも、もうひと押しほしいところだ。
FA選手の人的補償としてチームを移った選手は2人。山口の人的補償として巨人からDeNAに移籍した平良拳太郎。そして糸井の補償として阪神からオリックスへ移籍した金田和之だ。
平良は紅白戦、オープン戦で結果を残しておりローテーション争いに踏みとどまっている。古巣・巨人相手のオープン戦では5回無失点、4奪三振としっかり恩返しを果たした。
金田は春季キャンプ終盤に利き手である右手中指を痛め2軍降格。開幕1軍は厳しい状況だ。
戦力外の崖っぷちで踏みとどまり、新天地を獲得したのは田中浩康(ヤクルト→DeNA)、柳瀬明宏(ソフトバンク→阪神)、柴田講平(阪神→ロッテ)、猪本健太郎(ソフトバンク→ロッテ)、久保裕也(DeNA→楽天)、大松尚逸(ロッテ→ヤクルト)、榎本葵(楽天→ヤクルト)、岩崎達郎(楽天→中日育成)の8人だ。
なかでも田中が結果を残しておりDeNAの二塁を奪う勢いだ。5試合ではあるが打率.357(14打数5安打)、3打点と申し分ない働き。守備面での不安を露呈したものの開幕1軍切符は目の前にある。
柴田は8試合に出場し打率.077(13打数1安打)、猪本、柳瀬、榎本、大松、岩崎、久保は出場していない。戦力外組のホープ・田中の開幕1軍に期待したい。
文=勝田 聡(かつた さとし)