『野球太郎』がオリックスの補強ポイントに挙げたのは「即戦力型投手」、「左投手」、「一塁、三塁の強打者タイプ」、「将来性ある高校生」、「下位指名の個性派社会人選手」だった。「即戦力投手」から順に指名結果を見ていこう。
今季、規定投球回に到達した投手は金子千尋、西勇輝、ディクソンの3人。だが、エースの金子は好不調の波が激しく、7勝9敗と本来の力を発揮できず。西は3年連続の2ケタ勝利を挙げたものの、負けが先行し防御率も4点台。ディクソンはパ・リーグ規定投球回到達投手のなかで、防御率が最下位。主戦の3投手の安定しない投球を象徴するようにチーム防御率は4.18とリーグ最下位となった。
リリーフ陣も安定感に欠けた。それでも、守護神の平野佳寿が防御率1点台で31セーブと完全復活。吉田一将や海田智行、塚原頌平も安定した投球を見せ、後半戦は明るい兆しが見えた。今季後半戦の形を来季にどれだけつなげられるか。
オリックスにとっては即戦力の先発投手の補強が急務だが、今年のドラフトでは山岡泰輔(東京ガス=写真)を1位で単独指名することに成功。願ってもない指名となった。
社会人No.1と称される山岡が期待通りの活躍をすれば、ローテーションの一角は埋まるだろう。また、2位の最速152キロ右腕・黒木優太(立正大)、5位・小林慶祐(日本生命)、8位・澤田圭佑(立教大)も即戦力を期待される。
「即戦力型投手の補強」という点では充実したドラフトになったといえる。
今季、一定の活躍を見せた左投手は海田智行と松葉貴大のみ。左投手が不足している。だが、今年のドラフトで指名した投手は全て右投手だった。
若手の伸び悩みもあるが、一塁、三塁を守れる選手が少ないオリックス。だが、今回のドラフトでの一塁手、三塁手の指名はなかった。現在、チームに在籍する若手の奮起をうながすしかない。
「将来性ある高校生」では3位で遊撃手・岡崎大輔(花咲徳栄高)、4位で最速151キロ右腕・山本由伸(都城高)、6位で右腕・山崎颯一郎(敦賀気比高)、9位で外野手・根本薫(霞ヶ浦高)、育成2位で日本とタイのハーフ右腕・榊原翼(浦和学院高)と大量指名。
4位の山本は最速151キロのストレートも魅力だが、多彩な変化球を操り、コントロールもいい。プロでどこまで成長するか楽しみだ。
「下位指名の個性派社会人選手」としては7位で捕手の飯田大祐(Honda鈴鹿)を指名。
遠投110メートル、二塁送球1.8〜1.9秒台の強肩と安定したスローイングに加え、インサイドワーク、キャッチングも優れている。打撃が課題ではあるが、2014年の都市対抗野球では6打数5安打3打点の固め打ちを披露。この勝負強さは魅力だ。
【総合評価】73点
今季、ペナント・レース最下位のオリックスはチーム防御率、打率ともにリーグ最下位。さらに交流戦、2軍も最下位という「完全最下位」。苦しいシーズンとなった。
「即戦力投手重視」という面では山岡と黒木の獲得に成功したが、もうひとつの投手陣の課題・左投手は獲得できなかった。これがどう響くか?
野手は、即戦力よりも将来性にかけるドラフトとなった。しかし、チーム打率がリーグ最下位の上に、糸井嘉男のFA流出も噂されている。「一塁、三塁の強打者タイプ」も獲得できなかった。このままでは来季も厳しいのでは? と、感じてしまう。
来季のチーム上昇のためには、今年のドラフトで指名した即戦力投手の活躍が不可欠になりそうだ。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)