地方大会選手速報レポート【埼玉、東京、千葉】〜渡邉大樹(専大松戸)、井上祐太(花咲徳栄)
渡邉 大樹 わたなべ・だいき
専大松戸 2年
遊撃手・右投右打・181センチ76キロ
有望な3年生を追い抜かした2年生! これからの1年に注目だ!
今春の千葉県大会準決勝で専大松戸が松戸国際に勝利した直後の監督会見にて、持丸修一監督に故障で戦列を離れている有望ショートの3年生・西田廣の復帰時期について伺った際、「まあ、(西田が)仮に復帰が厳しくなったとしても、ショートはもう……ね」と、話すほどの信頼を得ていたのがこの渡邉大樹である。
確かに、この春から4番・ショートに入った渡邉は、2年生とは思えぬガッシリとした体格から鋭い打球を飛ばしており、十分な能力を見せつけていた。
特に特徴的なのは前の大きいスイング。テークバックは比較的コンパクトで、ボールをギリギリまで引きつけてトップを作っているかどうかがよくわからない感じだが、そこからのスイング軌道は大変大きく、前に飛ぶ打球は強烈なライナーとなるか、ゴロの場合でも強烈なトップスピンが効いて球足が速い。
ただ、現時点では、その打球スピードにより4番を打つことに何の不思議もないが、打球の角度自体は、いわゆるホームランアーティストのそれではなく、将来的には中距離ヒッターとして成長していく可能性の方が高い。もう少し始動を早めて、後ろに余裕がもてるようになれば、タイミングの取り方やボールをとらえる際の角度が変わってくるかもしれない。
まだ2年生。1年あれば大きく変化することもよくある高校生だけに、来年の今頃はどのような打者になっているか、楽しみに待ちたい。
井上 祐太 いのうえ・ゆうた
花咲徳栄 3年
投手・右投右打・173センチ75キロ
悲運の1回戦負けも「らしさ」は示した!
この夏、埼玉大会は序盤で浦和学院や聖望学園といった優勝候補が初戦敗退を喫する波乱となったが、その口火を切ることになってしまったのが、開幕戦で花咲徳栄が山村国際に1−2で敗れた試合だった。
勝った山村国際には賞賛以外の言葉は何もないが、花咲徳栄も別に大きなミスが出たわけではなく、山村国際の好守に得点機を阻まれたことによる惜敗だった。
特に、花咲徳栄先発の井上祐太は、こと序盤に関しては圧巻の投球だったと言ってもいいだろう。サイドから140キロに達することもあるストレートは威力抜群だった。
この試合、配球的には初回にいきなり3番・堀内洸門の左顎付近に直撃する死球を与えたこともあり、外角一辺倒にならざるを得なかったのだが、それでも完全に球威で圧倒することができたほどだった。右打者外角のストレートは、ややシュート回転しながら2シームのように沈むときもあれば、ボールの下側を切るようにリリースして高目に浮き上がるようなときもあり、腕が振れているときはホームベースの外角一杯から左打者のバッターボックスのラインくらいまでの際どいところに力のあるボールが集まった。
ただ、サイドスロー特有のベース幅を一杯に使ったピッチングが持ち味ゆえ、外角の際どいストレートをストライクにとってもらえないと苦しくなる。初戦敗退の際も、空振りも多かったとはいえ思い切ってスイングしてきた山村国際打線に対し、中盤になってやや慎重になりすぎて、すべてフルカウントから3者連続四球で満塁。次打者にも初球がボールになり、ストライクを取りにいった腕の振りの鈍いストレートをレフトフェンスに持って行かれ、その失投による2失点がそのまま決勝点となってしまった。
実戦で使える球種は、ほかに曲がりの小さいスライダーがあるのみなので、次のステージに向けての課題は、ストレートの球威を維持しつつ、シンカーやチェンジアップのように落差や緩急をつけられるかどうかにかかってくるだろう。明らかに不得手としている雰囲気だった左打者への対策にもなるはずだ。球威があるだけに、球の出し入れさえ習得すれば大学、社会人などで十分通用する投手になるに違いない。
堀内 汰門 ほりうち・たもん
山村国際 3年
捕手・右投右打・175センチ75キロ
◎花咲徳栄戦で金星を挙げた強肩強打の捕手。この試合中の二塁送球は1秒99。実戦で2秒を切る高校生捕手は珍しく、能力は本物
谷井 怜央 やつい・れお
創価 1年
投手・右投両打・174センチ67キロ
◎低めのストレートの伸び、制球が抜群。この夏、日大三戦に先発して敗れたが、緊張した序盤以外は持ち味を発揮。今後が楽しみだ
諸積 怜 もろずみ・れん
流通経済大柏 3年
外野手・右投左打・178センチ74キロ
◎元ロッテ・諸積兼司(現ロッテスカウト)の息子。父も活躍したQVCマリンスタジアムで一塁かけ抜け3秒94。抜群の俊足も父譲り
中道 大波 なかみち・ひろなみ
帝京 2年
内野手・右投右打・185センチ82キロ
◎2年生ながらいかつい体格の帝京らしい選手。パワフルな打撃は春までは強引だったが、夏はコンパクトに毎試合安打を放った
■プロフィール
文=キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球に関するありとあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。ライター活動の傍ら、2013年には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。
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