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《連載第3回》ロッテ全試合のハイライトを書いたポスターを選手に手渡す。そして優勝へ!


手探りで描き出したロッテ


 僕は昨年、千葉ロッテマリーンズ全試合のハイライトシーンを描きました。ほとんど何も知らない状態から、試合を観ることでチームを知り、選手を知り、ファンの応援を知った一年でした。

 当初は気後れして、なかなか身につけることができなかった赤い〈CHIBAユニフォーム〉にもようやく着慣れ、千葉マリンスタジアム(現・ZOZOマリンスタジアム)のスタンドに自分にとっての特等席も見つけました。でも、未だライトスタンドには足を踏み入れていません。一年見たくらいではまだ立ち入ることを許されない聖域のような気がしています。

 でも、今年はそれを払拭し、選手と、そしてファンの皆さんと一緒に、大声で「We are!」を叫びたいと思っています。

選手に絵を見てもらいたい!


 一年間描いたことで、各選手の動きや特徴がつかめてきました。顔を描かずとも、誰なのかわかることが理想です。でも、毎日描いていても「とらえた!」と思える絵となると、それほど多くはなく、全体の2割ぐらい。これが打率ならあまり優秀とは言えない数字です。

 今シーズンは、これを3〜4割まで上げていきたいと思っています。活躍した選手とそのプレーを活写することが僕の応援であり、戦い方です。

 4割を超えたら胸を張ってライトスタンドへ行けるような気がする。今年こそ、晴れて一緒に「We are!」をしたいんです。そのためにも、昨シーズン描いた絵を選手に見てもらい、そしてジャッジしてもらいたい。今季の取り組みを筋の通ったものにしたい。そう思いました。さて、どうするか。


どうやってポスターを渡そう?


 まずは全ての絵の中から「これは!」と思えるシーンをピックアップし、そうして選んだ各選手のベストショットから1軍戦に出場した全選手が並ぶポスターを制作しました。

 このポスターを選手に渡すことで〈応援している〉、〈一緒に戦っている〉という気持ちを伝えようと思います。もし、「ありがとう!」と握手を交わすことができたら、勇気100倍、2017年は4割超えを目指してスタートできます。

 けれど、このポスターをどうやって選手に渡せばいいものか。球場への「入り待ち・出待ち」以外に思い浮かびません。でもそれって迷惑かもしれず、しかも全選手となるとなかなか至難の業です。

 クライマックスシリーズを勝ち進んでもらえるように、その前に渡したい! と勢い込んでシーズン終了前に制作したため、短期間で渡さなくてはならなくなり、輪をかけて大変なことに……。

 当初より、試合を描いていることは球団スタッフの方に報告していました。そこで、半ばダメ元で直接球団にお願いしたところ、「選手に渡すだけならお引き受けしましょう」という返答をいただきました。ありがとうございます!(泣)

いざ秋季キャンプへ!


 しかし、ご存知のようにロッテはCSでの“下克上”を果たせませんでした。これについて、僕の活動における理屈から言うと、まだ自分の絵は戦力になっていないということになります。

 確かに、何も知らないところから始めておいて「戦力になる!」なんて、ちゃんちゃらおかしな話です。でも、誰だって最初はあるわけで、それでも今こうして一年かけてようやくロッテの野球を理解し始めたときです。

 ここからが本当のスタートだと思えばいい。翌年(つまり今年)、ロッテでの活動2年目に4割超えを目指すのに足りないもの、やはりそれは選手とのやりとりです。描いた絵をしっかり見てもらおう! そう思いました。

 反応を知ることで今自分に足りないものを強化していくことができます。2017年は、そうすることでロッテの戦力になるべくスタートするんだ! という熱い気持ちが湧いてきました。そう思い立った僕は〈ポスター〉を持って、秋季キャンプ地の鴨川、ロッテ浦和球場、そして春季キャンプ地の石垣島へと向かうことにしました。

 いざ、鴨川!

 初めて訪れたキャンプ。正直ドキドキです。選手はもちろん、応援するファンの皆さんに対して「宜しくお願いします!」という気持ちが高まります。ポスターを受け取っていただくことができた選手には、ポスターをもうひと回り大きくしたボード上にサインを書き入れてもらいました。そして「戦力になるべく僕も頑張ります!」と伝えました。

 ほとんどの選手は「???」という反応です。でも、こんなヤツがいるということを知ってもらえたと思います。自分にとっては、それが何より重要なことなんです。

 秋季キャンプまでにやりとりできた選手は31人でした。



訪れたZOZOマリンスタジアム。優勝目指して戦う2017年が始まった!


 そして年を跨ぎ、3月を迎えました。まだやりとりできていない選手がいます。でも、もういいだろう。やるだけやったんだからこのまま開幕を迎えよう。

 そう言い聞かせようとする自分に「まだ諦めるのは早いぞ!」という天の声がありました。『野球太郎』です。野球を描いて戦力になろうとするオトコの手記を書いてみないかと。残る選手とのやりとりについては「ウチから球団に申請してみましょう」と!

 そして後日、球団から「練習日、1日でよければ来てください」と!

 あ、あ、ありがとうございます!!(泣泣泣!)

 こうして向かった“ZOZOマリンスタジアム”。練習後の選手に正面きって言うことができました。「僕も一緒に戦っています!」と。


 すでに退団した選手を除き、38名の選手にポスターを渡すことができました。ここで渡せなかった選手については2017年シーズンへ持ち越しです。いま全員とやりとりできてしまえば、それで満足し、目標を見失いかねない。そう、自分を納得させることにします。

 選手の皆さんにサインを書き込んでいただいたボードは、ここまでのやりとりも含めて『プロ野球画報2016』と題しました。現在、東京・南青山の岡本太郎記念館で開催中 の『TARO賞/20人の鬼子たち』展に展示されています。

 来館された方は選手に渡したものと同じ〈ポスター〉を持ち帰ることができます。ぜひ足をお運びいただいて、実物をご覧ください。そしてポスターを手にして下さい。そして、そして、これから迎える2017年シーズンの展開を期待してください!

 2017年シーズンは、いよいよその真価を試されるときです。まずはロッテファンの方々に認めてもらえるよう、しっかり描いていきます。そしてライトスタンドから「We are!」を叫び、優勝を目指して戦っていこうと思います。皆さま、どうぞ宜しくお願いします!


「プロ野球画報2016/千葉ロッテマリーンズ選手ポスター」
(2016)オフセット印刷/59×42cm

文・絵=ながさわたかひろ

※「プロ野球画報2016/千葉ロッテマリーンズ選手ポスター」は、東京・南青山の岡本太郎記念館で開催中の『TARO賞/20人の鬼子たち』展に展示されています。〜6/18まで。


ながさわたかひろ
1972年生まれ。第13回岡本太郎現代芸術賞で特別賞を受賞。試合を描くことが「応援となり、それがチームの戦力になる!」というモットーのもと、2010年から6年間に渡りヤクルトの全試合をイラストで描き続ける。著書に「プロ野球画報2015 東京ヤクルトスワローズ全試合」(雷鳥社)、「に・褒められたくて 版画家・ながさわたかひろの挑戦」(編集室屋上)などがある。

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