「鳥」で組んだベストナインのオーダーは以下の通りだ
1(DH):ダチョウ
2(二塁):焼き鳥
3(左翼):鷹
4(一塁):フラミンゴ(a.k.a.王貞治)
5(中堅):キングギドラ
6(捕手):コウテイペンギン
7(遊撃):鳥谷敬(阪神)
8(右翼):鳥羽一郎
9(三塁):ハシビロコウ
投手:ハヤブサ
まず投手には「最速の鳥」ハヤブサを選出。水平飛行では時速90キロ台、降下飛行では時速130キロ台、さらに獲物を狙っての急降下では、なんと時速380キロ台をマーク。これほどの緩急を駆使した投球をされては、全盛期のイチロー(マーリンズ)も苦戦必至に違いない。
また、長く孤独な宇宙の旅を続けた小惑星探査機「はやぶさ」に名前貸しをしているだけあって、「マウンドの孤独」への耐久力もばつぐん。どんな苦境にあっても闘志を切らさずマウンドを守り抜き、ペナントレースを完走できるハートはエースの証だ。
「隼(はやぶさ)」を戴くロッテのドラ1ルーキー・佐々木千隼も、この鳥類界の最速エースのように飛躍することを、鳥に成り代わって期待したい。
続いては捕手。時速90キロから380キロまでを捕球できる“ハヤブサの女房役”にはコウテイペンギン(オス)しかいない。
出身地は南極大陸。零下60℃の吹雪のなか、メスが生んだ卵(ボール)を両足の上に乗せ、だぶついたお腹の皮(キャッチャーミット)でしっかりと抱え(キャッチし)、ヒナが殻を破るまで耐えに耐える。この間、約65日は絶食だという。
コウテイペンギンの忍耐力とキャッチング能力こそ扇の要にふさわしい。最近では、この過酷すぎるトレーニングを乗り越える精神力に惹かれ、弟子入りを志願する若手捕手が続出。チームが垣根を越えて殺到しているとかなんとか……。
打者としては6番に座り、頼りがいのある打撃で走者を一掃。クリーンナップではないが、ここ一番では、皆が「コウテイペンギンにつなげ!」と思いをひとつにするほど、厚い信頼を得ている。
孤独に強い最速エースに、吹雪にも負けない捕手。このバッテリーは強すぎる。
次に内野陣を紹介しよう。
一塁はもちろん「世界のホームラン王」ことフラミンゴ(a.k.a.王貞治)。この選出に異論はないだろう(ちなみに「a.k.a.」とは「として知られる」という意味です)。一本足打法から放った本塁打は868本。その打棒は未だに健在で、今回の「鳥ベストナイン」でも不動の4番・一塁に座る。
二塁は死してなお「味なプレー」をやめない焼き鳥。タレと塩のグラブを使い分け、正肉、皮、つくね、せせり、砂肝など多彩なフィールディングとスローイングを見せる。この多彩さは2番打者としても◎。状況に応じた打撃も、相手投手の投球数を増やすファウル打ちもお手のものだ。
三塁は「動かない鳥」ハシビロコウ。何故、動かない鳥が選ばれたのか? それはインパクトのありすぎる強面の顔つきで、ホットコーナーから相手打者を恐怖に陥れるからだ。ポジショニングは三塁と本塁の中間あたり。この極端な前進守備でにらみをきかせてこそ、ハシビロコウのツラガマエは生きる。もし、強い打球が飛んできても、大きく頑丈そうな体で止めてくれるので大丈夫。なんたって動かないから。
ただ、打者としては動かない(バットを振らない)のでまったくダメ。しかし、自動アウトの9番打者ながら、相手投手になんだか嫌な疲労感を与えて上位打線につなぐなど、役には立っている。
今回は、ハシビロコウを写真で紹介できないのが残念。筆者はかつて、ハシビロコウ目当てに東京は上野動物園まで足を運び、最高の選手だと確信した。ぜひ、知らない方は動画や画像を検索してほしい。
遊撃は人間界からの助っ人・鳥谷敬(阪神)。加齢による衰えが囁かれているなか、「まだまだやれる!」とエールを送るべく選出した。三塁を守る「動かない鳥」ハシビロコウをカバーし、代わりにスローイングもしてやる遊撃手は鳥谷しかいない! 打順は負担の軽い7番に据えたので、まずは守備から復活へのきっかけをつかんでほしい。
外野には鉄壁の布陣を敷いた。
左翼には猛禽類から、鋭い爪とくちばし、強烈な握力、強くスピードに溢れた飛翔力を誇る鷹を選んだ。自然界での食物連鎖において、その生態系ピラミッドの上位に立つ勇者だ。
打ってよし、守ってよし、走ってよし。秋山幸二(ソフトバンク前監督)をしのぐ脅威の身体能力で、グラウンド狭しと暴れまわる。2014年から2年連続でトリプルスリー。昨季はなんとトリプルフォーを達成。今季はトリプルファイブも夢ではないと期待されている。
中堅には怪獣界からの助っ人・キングギドラ。昨年は映画『シン・ゴジラ』が大ヒットを記録したが、そのゴジラの最大の敵こそが全身金色に輝くこの鳥(?)。巨大な翼を羽ばたかせて飛び立ち、長くしなやかな3本の首の先にある顔を伸ばし、口で打球をくわえてキャッチ(ちなみに腕はない)。これまで、右中間、左中間も含め、自らの守備範囲において本塁打を1本も許したことのない超大型野手だ。
巨体を生かした打撃も強力。左右2本の首でバットを握り、5番打者として豪打を放つ。また、塁に出ると3本の長い首を生かしてのサイン盗みも巧み。相手の捕手は自分の手元を覗かれ、サインを盗まれているのをわかっているのだが、なにせ凶暴なワルだけに文句を言えない……。
右翼は鳥谷と同じく人間界からの助っ人を選出。ベテラン演歌歌手の鳥羽一郎だ。代表曲「兄弟船」で聴かせる無骨ながらもロマンチックな男気でチームを引き締める。歌詞にある「型は古いがしけにはつよい」というキラーフレーズの通り、チームの大ピンチこそ、この男の出番。「おやじゆずりの熱い血」をたぎらせては、「おやじのかたみ」の船を漕ぎ、どこまでも駆けつけ仲間を鼓舞する。
漁師の父親に育てられ、遠洋漁業船に乗り込んだ経験もあるだけに腕っぷしは強い。ワルで知られるキングギドラも鳥羽一郎には頭があがらないという。
打順は7番。不器用だが、必死でボールにくらいつく姿にファンは多い。「兄弟船」に乗って打席に向かう鳥羽一郎を見て、「古いタイプの野球ファン」がスタンドでそっと涙をぬぐっているのは、このチームの試合ではよく見かけられるシーン。ままならぬ人生を野球選手に投影する。そんな男たちが鳥羽一郎に希望のかけらを託し、鳥羽一郎は彼らの人生を今日も背中で受け止めている。
最後にDH。「飛べない鳥」ダチョウは守りを捨て、打撃に専念。体高2メートル30センチ。長身の1番打者だ。鳥類きっての脚力を生かし、最高時速約70キロで塁間を走り回る。強力クリーンナップが控えるだけに、本塁への生還率は90パーセント超。塁に出れば、ほぼ得点につなげるリードオフマンだ。
さて、妄想ベストナインはいかがだっただろうか。「これじゃないだろ」「この人を入れるべきだ」さまざまな意見があるとは思いますが、これを機にそれぞれのお気に入りのチーム構成を考えてみてください!
文・山本貴政