天谷は福井商高時代、2年夏から3期連続で甲子園出場を果たしたことで、プロの注目を浴び2001年、ドラフト9位で広島に入団した。
7年目の2008年から頭角を現した天谷は1軍に定着。2015年シーズンまで、732試合に出場している。
そんな天谷の魅力は、俊足と選球眼の良さ、それとファンの想像を超えるダイナミックなプレーに尽きるだろう。
2010年には劇的な逆転サヨナラホームランを、2012年にはチーム20年ぶりのランニングホームランを放つなど随所に劇的な打撃でファンを魅了。
極めつけは、2010年8月22日の対横浜戦で、横浜のブレット・ハーパーが放ったセンターへの大飛球をフェンスによじ登りダイレクトキャッチしたスーパープレーだ。
このプレーのインパクトは絶大でファンの記憶に鮮明に残っている。天谷の代名詞とはこのホームランキャッチと言っても過言ではないだろう。
このように記憶に強く残るプレーを数多く演出してきたことで人気は高く、古くからのファンの間では、天谷待望論は根強く叫ばれ続けて久しい。
しかし、数々のビッグプレーで球場を沸かせる反面、ファンの想像を超える致命的なミスをやらかすことも多々ある。
ここ数年は守備面でのミスが悪目立ちしている事が影響してか、出場機会が激減。1軍定着以来、最少出場となった昨シーズンも、4月4日の対巨人戦で左翼手の守備固めで出場したにもかかわらず、フライを落球。チームの敗戦に繋がる致命的な失策を犯してしまう。
このプレー以前にも、しばしば凡ミスをやらかす傾向があり、ダイナミックなファインプレーと凡ミスが共存する色んな意味で派手な選手という位置付けになってしまっていた。
そんな中で迎えた2016年、天谷はかつての輝きを取り戻しつつある。オープン戦とはいえ、3割近くの打率を残し、守備では好守を連発。軒並み失敗を繰り返していた盗塁を決めるなど、存在感を強めている。
くしくも、右翼手の定位置を争う野間峻祥、鈴木誠也がキャンプで出遅れたこともあり、現状で天谷が定位置争いでわずかにリードしているように見える。
ド派手なプレーに目がいきがちだが、天谷の真骨頂は選球眼の良さだ。ボール球のスイング率が19%と低く、通算出塁率は.334と平均を上回る。瞬足で出塁率の高い天谷がトップバッターに座れば、攻撃のバリエーションは自ずと増えてくるはずだ。その点に置いても天谷の存在は非常に面白い。
このままオープン戦を通して好調を維持できれば、2010年以来5年ぶりの開幕スタメンも夢ではないだろう。再びダイヤモンドを駆け巡る天谷を期待しているファンは数多くいるはず。それだけ魅力ある選手が天谷なのだ。
明日のカープを担うのは、天谷宗一郎。ついにその日が来たと信じたい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)