知っておきたい球場の話。連載第5回となる今回は西武の本拠地・メットライフドームの大改修に焦点をあてたい。
メットライフドームといえば、なかなかクセの強い球場として知られている。「ドーム」と名がつくが、ご存知、客席と屋根の間に隙間があり、密閉されていない。ドームなのに雨が吹き込む、霧が出る、暑い、寒い、デカい虫がいる、などさまざまな「あるある」を生み出している。
1998年から1999年にかけての改修で西武球場に屋根を取りつけたわけだが、そもそもなぜあの屋根になったのか。
真相は定かではないが、まことしやかに巷でウワサされているのは、「税金対策」だ。当初、西武グループは球場+屋根(構築物)として申請していた。下と上は別物。屋根があるひとつの建物は「家屋」として定義されるが、これを避けて節税しようとした、という説だ。
しかし、所轄の埼玉県と所沢市は「さすがにひとつの家屋」と非情の課税通告。名称をドームではなく「大きな屋根の下の西武球場」にしておけば…。
ただ、西武グループ側も決定に従っており、節税は「副産物」だったのかもしれない。
屋根がついた頃から前出の問題が噴出したが、今や一周回って愛される球場になっている。熟練のパ・リーグファンは、メットライフドームで開催される声優やアイドルのライブで痛い目を見る「所沢ビギナー」を観察し、密かに優越感に浸るのだ。
そのメットライフドームもついに総額180億円の大改修が決まり、今年5月に起工。2021年春の完成に向け、姿を変える予定だ。
当初は「完全ドーム化か?」と囁かれていたが、法令に照らし合わせた試算の結果、新たなドーム球場が作れるほどの金額がかかることになり、「半ドーム」を生かした改修に決定。駅前や外周エリアを充実させる計画を発表している。
もはや、嬉しい。交通の便がいい球場も捨てがたいが、メットライフドームの「お出かけ感」「ピクニック感」は昂ぶるものがある。あの絶妙な自然融合感は西武にしかない財産だ。そこにグッズショップや新座席などが加わる。通路もきれいになれば、さらに洗練された「お出かけ感」が味わえるはずだ。
「公民館みたい」「高校の合宿所」とネタにされる平屋の若獅子寮もついに改修が決まり、若手選手も目を輝かせている。
改修を重ねつつ、1979年からの歴史を残す名球場。日本ハムの新球場とともに進化に期待したい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)