2月1日から12球団が一斉にキャンプイン。今季の行方を左右する重要な期間だけに、各球団とも真剣に取り組んでいる。そんな中でも、ハプニングは発生するもの。過去の印象的な出来事をピックアップしてみたい。
キャンプでのハプニングの中で、おそらく「ほのぼの部門ベスト5」入りは間違いないのが「星野監督迷子事件」だろう。
それは楽天の監督に就任して1年目の久米島キャンプでのこと。初日の練習を終え、宿舎に帰る途中、自身の体力づくりも兼ねて、車を下りて歩くことにした星野仙一監督。しかし、今キャンプで初めて訪れた場所でもあり、途中で道に迷ってしまう。どうしたもんかと困っているところに、たまたま小学生の男子3人組に遭遇。これ幸いと少年たちに道案内を頼み、無事、宿舎まで帰ることができたのだった。
長距離砲による破壊弾。キャンプでもしばしば見られる光景だ。
2017年2月22日、巨人のギャレットがフリー打撃中に放った打球は、場外へ消え、駐車場に置いてあった某スポーツ紙が使用していたレンタカーに直撃。フロントガラスにはその衝撃を物語る亀裂が放射状に走った。
2019年2月14日には巨人のゲレーロがロングティーでかっ飛ばした打球が、屋外駐車場の車にズドン。車体の横のドアのあたりは、ぼっこりとへこまされた。
今年のキャンプでも、ヤクルトの村上宗隆が飛ばした打球が、キャンプ地である浦添市民球場のスコアボード上部を直撃。電光掲示板の一部をクラッシュしている。
ただ、それだけ飛ばすということは、打者の仕上がりがいい証でもある。キャンプ地の球場周辺に駐車する場合は、くれぐれもご注意を。
キャンプでの注目ポイントのひとつが「新外国人」だ。とくに、毎年のように大きな話題となるのが阪神。韓国では、2年連続で打率3割、30本塁打、100打点を記録したロサリオ。鳴り物入りでタテジマの一員となった2018年のキャンプでも、紅白戦などの実戦形式で12打数8安打、3本塁打、10打点と大当たり。金本知憲監督もキャンプMVPに選出し、大きな期待をかけていた。
ところがオープン戦では13試合で打率.143と落ち込み、本塁打も1本だけ。シーズンに入って多少は持ち直したものの、打率は2割台前半をうろうろし、6月には2軍落ち。その後も、盛り返すことなくシーズン終了。そしてロサリオは退団、阪神は17年ぶりの最下位に沈んだのだった。
今年も坂本勇人(巨人)が離脱するなど、インフルエンザはキャンプの大敵。その犠牲となってしまったのが、DeNAの中畑清監督だった。それは、2012年の沖縄・宜野湾キャンプでのこと。この年に監督に就任し、初めて迎える大事なキャンプ。気合いが入らないはずはない。ところが、キャンプが始まって2日目の夜、球団から「中畑監督がインフルエンザA型に感染したため、しばらく休養」との発表があった。
症状は軽かったものの、ウイルス拡散の可能性があるため、グラウンドに隣接するホテルで隔離状態に。そんな状況下でも、サービス精神を忘れないのが絶好調男・中畑清。翌日、グラウンドで朝の全体ミーティングが行われているとき、ホテルの上層階にあるベランダに出てきて手を振り、元気なところをアピールしたのだった。この様子に、報道陣やナインは大爆笑となった。
かつて球界で、服を脱ぐかどうかでこれほど大騒ぎになったことがあっただろうか? 2000年の巨人の宮崎キャンプにおいて、26年ぶりに背番号3を背負った長嶋茂雄監督が、それをいつ披露するのかが連日の話題となっていたのである。
長嶋監督は、キャンプが始まってからもグラウンドコートを脱ぐことなく延々と焦らしプレイ。ギャラリーや報道陣も“辛抱たまらん状態”となっていた。そして、ついにそのときが。実に、キャンプインから10日以上も経過した2月12日だった。待ちに待った「3」に詰めかけた5万人以上のジャイアンツファンからは大歓声。さすが、何をやっても絵になるミスターなのであった。
ちなみに、この現場に立ち会った少年が、いまや日本を代表するプロ野球選手になっていることをご存知だろうか。西武の源田壮亮である。源田は、父に連れられキャンプ地を訪れ、この光景を目にしているという。
自著『源田壮亮メッセージBOOK』(廣済堂出版刊)によると、当時6歳(小1)で、状況はよくわからず、ただ人が多かった記憶だけが残っているそうだが。時代がシンクロしていれば、三遊間を組んでいた可能性もなきにしもあらず。時を超えたニアミスだった。
文=藤山剣(ふじやま・けん)