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1勝1敗でポイントとなりそうな第3戦へ! 紙一重の戦いの中、先に牙をむくのは虎か鷹か!?

【セ・リーグサイドから見た日本シリーズ】

 阪神タイガースと福岡ソフトバンクホークスによる頂上決戦となった今年の日本シリーズ。第2戦を終えた段階では、1勝1敗で互いに譲らず、非常に見どころが多い対戦となっている。

 今年のシリーズで目立つのは外国人選手たちの活躍だ。第1戦の先発マウンドは阪神がメッセンジャーに対して、ソフトバンクはスタンリッジ。そして、第1戦では阪神の4番・ゴメスが3打点をあげ、第2戦ではソフトバンクの4番・李大浩が貴重なホームランを放っている。

 だが、彼らをもり立て、チャンスメークする日本人選手たちの活躍からも目が離せない。その象徴的なシーンとして、第1戦の5回裏、1−0でリードしていた阪神の攻撃を見ていこう。

西岡剛への9球


 この回、先頭の大和はレフト前ヒットで出塁。続く9番・メッセンジャーが確実に送りバントを決め、打順は1番に戻って西岡剛が左バッターボックスに入った。

 今季の西岡は、シーズンの打率が.237。ケガによる長期離脱があったとはいえ、本人にとっては不本意なシーズンだったはず。だからこそ、日本シリーズで華々しい活躍をして目立ちたい……かと思いきや、この打席の西岡はまったく違う姿を見せた。

 スタンリッジの投じるストライクは全てファウルにし、ボールはしっかりと見極め、スタンリッジに9球を投げさせて、見事に四球を選んだのだ。

 続く上本博紀はアウトになったものの、3番・鳥谷敬も四球でつなぎ、ここから、ゴメス、マートン、福留孝介の3連打で阪神が一気に5点を挙げて試合を決めた。まさに、西岡が粘りに粘って得た四球が呼び水となって、ビッグイニングが生まれたのだ。

 続く第2戦では、チャンスメークではなく、西岡のバットが阪神に得点をもたらした。この試合、ソフトバンクの武田翔太をまったく攻略できなかった阪神打線だったが、6回裏、2死から代打の狩野恵輔がチーム初ヒットで出塁すると、打順はトップに戻って西岡。この日、阪神打線が苦しんでいた縦に割れるカーブをすくい上げると、ライト線への2点タイムリーヒット。結果的には1−2と、阪神はあともう1本が出ず、敗れたのだが、第1戦のスタメン野手で唯一、安打のなかった西岡に安打が出たことは大きいはずだ。

敵地で踏ん張り、甲子園球場での胴上げなるか!?


 甲子園での第1戦、第2戦は1勝1敗と互角の展開に見える。だが、自分たちの試合運びができたかどうか、といえば、阪神の方が“らしい”試合運びだったといえる。ゴメスとマートンで得点し、守備では、抑えの呉昇桓につなぐべく、今季、ホールド王の福原忍を中心に中継ぎ陣で踏ん張る。

 一方のソフトバンクは、3番・内川聖一、4番・李大浩は怖いものの、それ以外の打者はもうひとつ、といったところで自慢の打線がまだ目覚めていない状況だ。投手陣がソフトバンク打線をこのまま目覚めさせずに切り抜け、打線の反撃を待つ形に持ち込みたい。第3戦以降の先発陣、とりわけ、クライマックスシリーズでも好投を見せた藤浪晋太郎の出来が鍵を握るのではないだろうか。

 打つ方では、ゴメスとマートンの前後を打つ、3番・鳥谷、6番・福留の成績が鍵になりそう。ゴメスが絶好調とはいえ、その前後を打つバッターがチャンスをいかに広げるか、そして追加点を奪えるかが重要になる。上述したような、第1戦の5回裏に見せた攻撃の形が理想型だ。

 なんとか敵地での連敗を防ぎ、甲子園球場に戻ってきての日本一を達成したい。


【パ・リーグサイドから見た日本シリーズ】

 10月25日から、甲子園球場で開幕した2014年日本シリーズ。今年で誕生90周年を迎えた、「日本野球の聖地」で開催されるシリーズに相応しい、記録づくめのスタートだった。

 第1戦、ソフトバンクの先発は、昨季まで阪神に在籍していたスタンリッジ。南海ホークス時代を含めると、球団としては50年ぶりに外国人投手が日本シリーズ開幕投手を務めた。さらに対する阪神の先発はメッセンジャーで、日本シリーズの長い歴史のなかでも、両チームの開幕投手が外国人投手というのは、史上初の出来事だった。

 ホークスの50年前の助っ人投手とは、1964年、対阪神との「御堂筋シリーズ」で、3完封の離れ業を披露したスタンカ。その伝説にあやかった好投が期待されたスタンリッジだったが、4回に先制点を奪われてしまう。さらに5回2死満塁から、不動の4番・ゴメスにタイムリーを浴び、5回持たずに降板。結果、2−6で阪神がシリーズ開幕戦をモノにした。

度胸満点!! 武田翔太の108球


 続く第2戦、阪神の勢いを止めたのが、21歳の若鷹右腕・武田翔太だ。本人も試合後は、「緊張した」と振り返ったように、プレッシャーのかかった日本シリーズ初登板。ところが、7回を3安打1失点、しかも6回2死まで完全試合ペースと、度胸満点の投球を披露した。

 武田が投じた108球のなかで、阪神打線を苦しめたのが、「落ちる魔球」だ。第1戦で大活躍したゴメスに対しての第1打席、2球で追い込んだ後の3球目は、ホームベースの前でワンバウンドする変化球。ゴメスから空振りを奪い、三球三振に仕留めた。

 この「魔球」こそ、武田の度胸の良さを象徴するボールだろう。分類としては「カーブ」となるが、球速は120キロ台で、186センチの武田がオーバースローから投げ下ろすことで、さらに落差と独特の角度を生み出す。このボールでストライクが取れたことにより、高卒1年目から8勝という結果を出せた。この試合も、武田は持ち前の強心臓で、臆することなくこの魔球を操り、阪神打線を手玉に取った。

 試合途中には、130キロ前後のスライダーを追加。140キロ台後半のストレートとのコンビネーションで、6回2死から代打の狩野恵輔に安打を打たれるまで、パーフェクトピッチング。日本シリーズに登板したパ・リーグ投手のなかで、最も長いイニングで完全投球を記録した投手となった。

 ちなみに武田は、2012年7月7日のプロ初登板の日本ハム戦でも、5回までノーヒットピッチングを披露。この日、投じた108球には、魔球を操る、度胸満点の“強心臓”を持つ武田翔太が詰まっていた。

10月初黒星を喫した阪神! 今後の展望は?


 阪神はクライマックスシリーズ(CS)を含めて、10月に入って初黒星を喫した。この1敗で、チーム状況や勢いが変わってしまうか、ヤフオクドームに場所を移して行われる第3戦は、阪神にとって非常に大事な一戦となるだろう。予想先発は、プロ2年目にしてエースの風格すら出てきた藤浪晋太郎だ。

 一方、本拠地に帰ってきたソフトバンクは、第3戦の先発に大隣憲司を起用する模様。リーグ優勝を決めた試合に続き、CSファイナルステージ最終戦でも好投した大隣は、最も頼りになる投手。逆に言うと、この試合は絶対に落とすことができない。第3戦は、今シリーズの行方を占う試合になるだろう。

 第1、2戦を終えて、短期決戦で不調に陥る、チャンスでことごとく凡打に終わる「逆シリーズ男」は、まだ見当たらない。シリーズの行方は、やはり細かい継投策がカギとなり、お互いのちょっとしたミスで決まる可能性は高い。


■ライター・プロフィール
(セ・リーグ担当)オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。Twitterアカウントは@oguman1977

(パ・リーグ担当)鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterアカウントは@suzukiwrite

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