高校野球の最前線をお伝えする連載企画『高校野球最前線 秋の陣!』。先週、目についたニュースをお伝えしよう。
11月15日に開幕した明治神宮大会。初日の目玉カードは何と言っても明徳義塾と星稜の因縁の対決だった。1992年夏の甲子園で星稜・松井秀喜(元ヤンキースほか)が5打席連続敬遠されて以来の公式戦での対戦だった。
明徳義塾・馬淵史郎監督は「神宮に行く学校のなかで一番弱い」と弱気だったが、蓋を開けてみれば、8対5で勝利を収めた。
今度は真っ向勝負。その思いもあったのだろう。敬遠なしはもちろん、強攻策で相手のミスを誘う馬淵采配も炸裂した。
一方で課題が見えたのは星稜。北信越大会優勝までは圧勝の連続だったが、エース・荻原吟哉が明徳義塾打線につかまり、守備のミスも相次いだ。ここまでは「強さ」を見せてきたが、春のセンバツに向けた改善点が浮き彫りになった。
11月18日の2回戦、天理の河西陽路が1試合3本塁打の大会新記録を打ち立てた。今秋の天理は圧巻の猛打で近畿大会を勝ち上がったチーム。河西は175センチ85キロ、右投げ左打ちでまさに打撃屋の風貌だが、なんと打順は7番。下位でも3本塁打を打てる力があるのだから、天理打線は本物である。
試合は惜しくも9対10で中京大中京に敗れたが、元近鉄・中村良二監督が率いる「奈良のいてまえ打線」はセンバツで火を噴くのか。来年に向けて楽しみが増えた。
11月15日、新潟・帝京長岡の新監督に芝草宇宙氏が就任した。芝草氏は日本ハムなどでプレーし、46勝を挙げた元プロ野球選手。高校時代は帝京で1987年夏には東北戦で史上20人目のノーヒットノーランを達成した甲子園スターでもある。
引退後は解説者を務めたほか、日本ハム1軍投手コーチ、日本ハムスカウトなどを歴任した。甲子園経験、プロ野球経験、スカウト経験と三拍子揃った新監督。50歳での高校野球監督デビューだが、初の甲子園を目指す帝京長岡、そして戦国時代の様相を見せる新潟でどんな仕事をやってのけるのか注目したい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)