鈴木は静岡の磐田東高出身。高校時代も早くから才能を認められ、1年時からベンチ入りを果たすも故障に悩まされた時期が長く、3年間で目立った活躍はできなかった。当時から140キロ台中盤のストレートを投げていたが、甲子園、東海大会への出場もなく全国的には無名の存在だった。一部のスカウトが目を向けていたものの、どちらかというとチームメイトのエース・齋藤誠哉(ソフトバンク)に注目が集まっていた。
また、線が細かったこともあり、鈴木はドラフト前にプロ志望届を提出することなく、社会人野球のヤマハへと進む道を選択している。一方、齋藤はプロ志望届を提出し、育成2位でソフトバンクに入団。現在、支配下登録を目指し奮闘している。
ヤマハに進んだ鈴木は2年目の昨季、ブレイクを果たす。これは1年目にウエートトレーニングで体重を増加させ、球速アップを実らせたことが大きい。球速が150キロを超えるようになり、公式戦で11試合に登板。17回を投げて21三振を奪うなどチームの主力投手としての地位を確立した。先発は2試合だけで、中継ぎがメインだった。
とはいえ、先発でもしっかり結果を残している。秋に行われた日本選手権では、2回戦のNTT西日本戦に先発し、5回1/3を投げて1失点。与四死球7と制球にばらつきはあったものの、粘りの投球で勝利に貢献。
ドラフト解禁を迎えた今シーズン、チームとしての出場は叶わなかったが、新日鐵住金東海REXの補強選手として都市対抗に出場。最速155キロのストレートを披露するなど実力を発揮。2試合で6回を投げて1失点、7つの三振を奪った。
秋の日本選手権予選では、永和商事ウイング戦に先発。9回1安打完封と圧巻の投球を見せ、1対0の勝利に貢献。本戦出場を決めている。
鈴木のウリは181センチ90キロの恵まれた体格から繰り出される最速157キロのストレートだ。制球に難があるものの、力でねじ伏せることのできる球は圧巻。社会人では先発で結果を残しているが、プロではセットアッパーとして1イニングを全力で抑えるイメージも湧く。
本戦出場を決めた日本選手権は、ドラフト会議後に開催される。昨年は先輩の池田がドラフト指名を受け、その後の同大会でチームの優勝に貢献。MVPに輝いた。鈴木も同じようにプロ入りを決め、育ててくれたチームへの恩返しをしたいところだ。
文=勝田聡(かつた・さとし)