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《2016ドラフト会心の指名》「今年、一番いい選手」田中正義(創価大)の獲得こそ会心!


 歓声やどよめきに包まれながら終了した今年のドラフト会議。

 ひいき球団の指名選手、ライバル球団の指名選手に、いろいろと思うことがあったのではないだろうか?

 週刊野球太郎では、今週から4週・全8回に渡って、週刊野球太郎編集部とライター陣が、「よくぞ指名した!」と考える「会心の指名選手」を紹介していく特集をスタート。

 名づけて「野球太郎ライター大推薦! 俺たちのドラフト会心の指名」。

 連載第1回は、野球太郎編集部を代表して持木秀仁編集長が登場。持木編集長の思う「会心の指名」をライターの森田真悟氏が直撃した! いったい誰の名前が飛び出すのだろうか?

「今年、一番いい選手」を引き当てたソフトバンク


森田:まず、今年のドラフトを見終わってみての感想を教えてください。

持木:事前に言われていたように投手が豊作でしたね。大学生、高校生を問わず有力視されていた投手が軒並み、上位で指名されたという印象です。

森田:そういう意味では驚きは……?

持木:あまりなかったですね。佐々木千隼投手(桜美林大)が「外れ1位」に残っていたことくらいで、ほかは想定内。上位指名は7、8人の注目選手で決まっていた感がありましたので。

森田:想定内の指名で進むなか、持木さんが「会心の指名」と思ったのは、どの球団のどの選手でしょう?

持木:ソフトバンクの田中正義投手(創価大)ですね。今年の目玉選手で、しかも、5球団が競合する選手を獲得できたことが、ドラフトとしては大成功だと思います。

森田:「今年、一番いい選手」を獲得できたと?

持木:事前に「田中を1位で指名する」を公言していましたが、小細工することなく勝負に出て、狙い通り獲得したところが見事です。


巨大戦力のメリットは故障持ちの田中に好都合


森田:田中投手は昨年、侍ジャパン大学代表のユニバーシアード壮行試合でNPB選抜チームを相手に4回を投げて、7者連続を含む8奪三振を記録。順調なら1年目から2ケタ勝利も期待できる即戦力投手です。

持木:実力は間違いないので、気になるのは、肩の故障くらいですね。

森田:確かに故障の度合いは気にかかりますね。昨年の秋は「12球団競合か?」とまで言われていたのが、約半分の5球団に減ったことも故障が影響していたように思えます。

持木:それでもこの秋は試合で投げているので、そこまで心配はいらないんじゃないでしょうか。それに故障明けというコンディションを考えると、いいチームに指名されたとも思います。

森田:ソフトバンクは投手陣が充実していますから、1年目から無理をする必要がないですもんね。

持木:そうです。だから大卒ドラフト1位とはいえ、「痛かったら3軍で調整して、じっくりいこう」と休ませられる。こんなに余裕のあるチームは、ほかにないですから。

森田:厚い選手層メリットを、つくづく感じさせられます。

ウルトラCの起用法


持木:ソフトバンクには「必要なら休養させられる」という余裕があるだけではなく、「ならでは」の田中正義起用法も試せそうです。

森田:と、いいますと?

持木:中継ぎ、あるいは抑えでの起用ですね。さっき、話に出ましたが、田中投手はNPB選抜を相手に7者連続で三振を奪いました。短いイニングで全力投球をしたら、どんな球を投げるのか? とても興味があります。

森田:確かに、そういう発想の転換は、先発陣の揃っているソフトバンクにしかできない起用法ですね。ものすごいストレートをビシビシ投げ込んで三振を奪う抑え、という将来像にもロマンはありますね。

持木:今の最速が156キロで、プロでの目標が160キロ。兼任ではなく投手に専念したのが大学生になってからという経歴を考えると、伸びしろはまだまだあると考えられます。160キロは十分実現可能な数字だと思います。


課題をクリアして真のスターへ


森田:肩の故障が心配とはいえ、前途洋々という感じですね。

持木:あえて言うなら、今は純粋な「素の力」で相手を上回っている状態なので、一流のプロのバッターと対峙したときにどうなるかは気になります。バッターとの駆け引き、牽制やフィールディングについては未知数なので。

森田:これまでは大学生のバッター相手に、常に相手を見下す立場で投げられていましたからね。プロでは田中の球を豪快に弾きかえすスラッガーもいますし、足や小技といった、あの手この手でかき回されることもあります。

持木:ただ、身体能力は抜群なので、キャンプで毎日、守備や牽制を鍛えられれば克服できるはずです。田中と同級生ですが、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平投手のような怪物になれる素質はあるので、ぜひソフトバンクに覚醒させてもらいたいですね。

森田:田中投手には、新時代の怪物になってほしいものです!


故障を抱えてもみなぎる自信


 持木編集長との話にも出てきたが、田中正義の懸念といえば肩の故障。現時点でどこまで回復しているのかという不安がつきまとうが、持木編集長は「田中投手は故障の不安があったら“プロには行かない”と言いそう。そんな周りに迷惑をかけないように配慮する性格だと思います」と、田中のパーソナリティーを分析する。

 これは田中の「とにかく真面目でストイック」という性格を踏まえてのもの。「故障があっても治してやっていける」と確信しているからこそ、プロ志望届を提出したはずだ。

 ソフトバンクは3年連続で故障を抱える投手をドラフト1位で獲得してきた。一昨年は松本裕樹(盛岡大付高)、昨年は高橋純平(県岐阜商高)、今年は田中。現有戦力に余裕があるのはもちろんだが、3軍まで備えた育成システム、体をケアする体制、それらを支える裏方のスタッフの力にも自信があるからこそできる芸当だろう。

 そういった環境を鑑みて、野球の神様は工藤公康監督に当たりクジを引かせたようにも思える。とは考えすぎだろうか?

 次回の「野球太郎ライター大推薦! 俺たちのドラフト会心の指名」には、野球太郎編集部からカバディ西山氏が登場。お楽しみに!


文=森田真悟(もりた・しんご)

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