ドラフト同様、WBSC U-18ベースボールワールドカップでも最大の目玉となった佐々木朗希(大船渡)。壮行試合として行われた大学日本代表との試合では、血マメの影響で1回降板となっていただけに、その投球内容に大きな注目が集まっていた。
そんな佐々木が初めて登板を果たしたのは、スーパーラウンドの韓国戦だった。先頭打者を153キロのストレートで遊ゴロに打ち取るも、その後は制球が定まらない。
次打者には全球150キロを超えるストレートを投じたが、ストライクが1球も入らず四球を与えてしまう。1死一塁で迎えた3番打者にも、3球続けてボールとボールが手につかない。4球目でようやくストライクを奪うと、5球目で左飛に打ち取った。
続く4番打者にもややボールが高めに浮きながら、なんとか最後は空振りの三振を奪い無失点に切り抜けた。
当然、2回のマウンドにも上がるものと思われたが、この試合も血マメの影響で降板。結局、1回無失点、被安打0、奪三振1、与四球1の内容に終わっている。
数字だけを見れば決して悪くない。160キロのストレートはなかったものの、ほぼストレートは150キロを超えていた。しかし、制球のばらつきが大きく、苦しんだ印象だ。血豆以外にも、慣れない環境、ボールの影響など様々な要因はあるだろうが、決して本来の姿だったとは言い難い。
とはいえ、ドラフト1位候補という各球団の評価は変わらないだろう。素材はピカイチ、どれだけの選手に育つかは未知の存在。そんな佐々木はどのような道を進んでいくのだろうか。
佐々木と並んで大注目の存在である奥川恭伸(星稜)は、甲子園の疲労を考慮した結果、オープニングラウンドでの登板はなかった。満を持して登板したスーパーラウンドのカナダ戦。休養十分の奥川は圧巻の投球を見せる。
初回は1安打を許したものの、3つのアウトはすべて空振り三振。2回は三者三振に打ち取ると、3回にも2三振を奪う神がかり的な投球内容。
4回にまさかの一発を浴びるが、7回1失点、18奪三振、被安打2、与四死球ゼロでカナダ打線を封じ込めた。球数を103球に抑えていることからも制球のよさがうかがえる。またストレート、スライダー、チェンジアップ、スプリットと球種も複数使いながら、目線をずらす高校生離れした投球術もみせた。
この快投があり、わずか1試合のみの登板ながら大会ベストナインにも選ばれた。
いまさら評価が大きく変わる投手ではないが、さらに評価を上げたとしてもおかしくはない内容だった。
今夏の甲子園には手が届かなかった西純矢(創志学園)が、この大会ではフル回転した。先発1試合、中継ぎとして3試合の合計4試合に登板。チーム最多となる13回1/3を投げ、3失点(自責2)で防御率1.35と主軸の働きを見せる。先発、中継ぎどちらでも対応できたのは好材料。また、与四球が3つだけと制球を乱さなかった面もプラスだろう。
そして打撃では打率.500(12打数6安打)、2本塁打、9打点と本職の野手顔負けの成績を残している。参加国のなかでは少しレベルの落ちる南アフリカ戦だったとはいえ、この試合で2本塁打、8打点とアピールしてみせた。
先発、中継ぎが可能で150キロを超えるストレートを投げ、本塁打を打てるパワーの持ち主ということがあらためて証明された。ドラフト1位の12人に入ってもおかしくはない。
春のセンバツを制したものの、夏の甲子園には足を踏み入れることができなかった石川昂弥(東邦)。この大会ではその鬱憤を晴らすかのように、日本の4番として8試合で打率.333(24打数8安打)、1本塁打、9打点と結果を残した。四球も6つ選び出塁率.484とこちらも高い。
長打率+出塁率で表されるOPSは1.067。これは日本チームの野手で最高値を示している。高校生の強打者は、しばしば木製バットへの対応を疑問視されるが、石川に関しては問題なさそうだ。
ほかのドラフト注目選手では宮城大弥(興南)、前佑囲斗(津田学園)の2人がともに3試合で防御率1点台を記録。野手陣では韮澤雄也(花咲徳栄)が一塁手、森敬斗(桐蔭学園)が中堅手と本来とは異なる守備位置で起用されながらも、非凡な才能を見せている。
念願の世界一になることはできなかったが、このように結果を出している選手は多い。全員がプロ志望届を提出するのかはわからないが、10月17日のドラフト会議が楽しみだ。
文=勝田聡(かつた・さとし)