谷繁元信監督が解任されるなど、御家騒動が続いた中日。チームも最下位に沈み、停滞感が否めないなか、ドラフトで高校野球ファンを「おっ」と言わせる指名があった。5位・藤嶋健人(東邦高)だ。
投げては最速146キロ、打っては高校通算49発の二刀流。素材としても申し分ないが、藤嶋といえばやはり爆発的な「喜怒哀楽」が持ち味。1年夏に甲子園で初登板を果たしたときから絶叫しまくり、高校3年間、高野連から怒られるんじゃないかというほど、ド派手なガッツポーズを繰り出してきた。
藤嶋はうるさい。とにかく声を出す。中日のベンチは暗いとよく言われるが、そんなことはお構いなしだろう。「俺は野球が楽しいんだ」という思い、生命力が藤嶋にはある。見ているだけで頬が緩んでしまうのだ。
インターネット上では新井貴浩(広島)の喜怒哀楽シーンが切り取られ、「新井さん画像」として人気を博しているが、藤嶋も切り取りたくなるだけの独特な表現力がある。
その上、メディアへの話題提供力もすばらしい。ドラフト後、地元テレビ局が学校に来た際には校門の前で堂々と校歌を歌い上げ、山本昌、山崎武司のOB両氏と並んでも笑顔でハキハキと発言。背筋をきりっと伸ばし、次第に新人アナウンサーに見えてきた。それほど堂々としていたのだ。
新人の話題が毎年恒例の「コメダ珈琲にお出かけ」では大人しすぎる。藤嶋ならよくも悪くも、なにかしでかしてくれるのではないだろうか。
10月の国体では名勝負も見せた。U-18侍ジャパンでチームメートだった堀瑞輝(広島新庄高→日本ハム1位)との対戦が決まり、前日に両チームが宿泊するホテルで堀と出会うと藤嶋は「ストレート勝負」を申し込んだ。
対峙した両者は終始笑顔。藤嶋が2安打を放てば、堀も自己最速の150キロ(テレビ局のスピードガン)を叩き出し、己の力を出し尽くした勝負だった。
停滞した中日の現状を打破するには藤嶋の心が必要なのだ。根性、根性、ド根性。“根性論”に終始したが、かつてのギラギラした中日を取り戻すには、元気印の藤嶋に期待を寄せたくなる。
文=落合初春(おちあい・もとはる)