昨秋のドラフト1位、即戦力としてもっとも期待されたルーキーが高山俊。東京六大学リーグの通算最多安打131を記録し、“安打製造機”とまで呼ばれた男はやはり本物だった。
8月24日のDeNA戦で今シーズン12度目の猛打賞を記録、1998年に坪井智哉(現DeNA打撃コーチ)が達成した11度の球団新人記録を、坪井の目の前で更新した。
オールスターゲームでは、競争の激しいセ・リーグの外野手部門からファン投票で選出され、球団の垣根を越えた人気と期待の高さをうかがわせた。
最近数試合は3番に抜擢され、開幕から競い合ってきた外野の一角に“レギュラー当確ランプ”を灯したといっても過言ではない。
すでに10年選手くらいの存在感をみせているのが、原口文仁。
とはいっても“超変革”を掲げた金本阪神であったからこそ、今の原口があるといってもいい。
原口が育成枠から一気に支配下登録、即1軍の試合に大抜擢されたのが、4月27日の巨人戦(甲子園)だった。わずか4カ月前の出来事だが、この4カ月での原口の活躍は、首脳陣の期待を大きく上回るものだろう。
キャッチャーという経験が必要なポジションで、日々勉強しながら投手陣をリードし、打撃でも打率.316、9本塁打、42打点とルーキーイヤーとしては十分な結果を残している。
腰の負担を軽減する意味もあってか、一塁手として起用される場面もあるが、将来の扇の要として育ってほしい逸材だ。
鳥谷敬騒動!? に揺れた今シーズンの阪神。
その陰で、着実に力を蓄えてきたのが北條史也だろう。1、2軍の入れ替えが頻繁に行われるなか、ここまで掛布雅之2軍監督の元に強制送還されていない。
鳥谷が本調子でないこともあるが、鳥谷をほかのポジションに押しのける勢いで、ここ最近はスタメン・ショートの座を奪取している。
金本知憲監督から、「今の北條をスタメンから外すことはできない」と言わしめたことからも、将来への期待と信頼の高さがうかがえる。
光星学院高時代は甲子園でホームランを量産し、高校野球ファンを沸かせたスラッガー。プロの投球にも慣れ、長打も打てる大型遊撃手としての片鱗も見せはじめている。
今シーズン、非難を受けながらも一貫して若手を起用し続けてきた阪神。
ここで取り上げた3選手を見る限り、その育成方針は間違いではなかったと現時点では言い切れるのではないだろうか。
「育成しながら勝つ」。
もっとも難しい課題を持って船出した今シーズンの金本阪神だったが、リーグ優勝の夢は立ち消えても、将来への夢は大きく膨らんでいるのは確かだ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。