100回目となる夏の甲子園では、全国各地の地方大会を勝ち抜いた56校の選手たちが熱い戦いを繰り広げている。このなかには、幾人かの“未来のプロ野球選手”がいる。逆の見方をすると、現役のプロ野球選手たちもこの夢舞台で戦ってきたわけだ。
週刊野球太郎では、2回にわたって高校時代に甲子園で相まみえたプロ野球選手たちの戦いぶりを紹介したい。今回は近年の優勝投手たちだ。
まだ記憶に新しい2017年夏の甲子園を制覇したのは花咲徳栄(埼玉)。そこでエースナンバーを背負っていたのが清水達也(現中日)だ。
綱脇慧(現東北福祉大)との2枚看板で花咲徳栄のマウンドを任されていた清水は、準決勝までの全5試合でリリーフ登板し、14回2/3を投げて失点はわずかに「1」。
花咲徳栄が決勝で戦ったのは広陵(広島)だった。準決勝を終えた段階で、中村奨成(現広島)が1大会における本塁打記録をすでに塗り替え、甲子園のムードは広陵と中村奨成一色と言っても過言ではなかった。
迎えた決勝でもリリーフで登板した清水が、対した最初の打者が中村だった。注目の初対戦は三塁への内野安打で中村に軍配が上がる。続く打席は清水が三振に打ち取り、2人の勝敗は五分に。そして、9回表に3度目の対戦が巡ってきた。この打席で清水は初球を左翼へはじき返され、二塁打を浴びてしまう。
試合の結果としては花咲徳栄が14対4で大勝し、清水自身も5回を1失点に抑え、優勝投手となったが、中村に本塁打こそ許さなかったものの、3打数2安打と打ち込まれたのだった。
その後、ドラフト指名を勝ち取ってプロ入りを果たした2人は、ウエスタン・リーグ選抜のチームメートとしてフレッシュオールスターゲームで再開。残念ながらバッテリーを組むことはなかったが、今後の活躍を誓い合ったことだろう。数年後には1軍の舞台でしのぎを削り、次はオールスターゲームでバッテリーを組む活躍を期待したい。
2016年夏の甲子園を制した作新学院(栃木)のエースは、今井達也(現西武)だった。細身の身体から繰り出される150キロに届くストレートと、切れ味抜群のスライダーを武器に大会を通じて奪った三振は44個(41回)。大会中に評価を急上昇させた。
ひと夏で超高校級へと進化していった今井が、準決勝で顔を合わせたのが明徳義塾(高知)。当時の明徳義塾の打線の中心は2年生ながら3番を任されていた西浦颯大(現オリックス)と4番・捕手の古賀優大(現ヤクルト)だった。
この試合で今井は5回を投げ、西浦に対しては2打数1安打(1死球)、古賀に対しては2打数2安打(1四球)と抑えきることができなかった。試合は作新学院打線が15安打10得点と爆発し、10対2と大勝したが、敗れた明徳義塾の“後のプロ野球選手”2人はしっかりと結果を出していた。
プロ入り後の今井は、2年目の今シーズンに1軍で初登板初勝利をマーク。先発ローテーションの一角を争っている。古賀は2軍で正捕手の座をつかみ、1軍デビューを果たした。また、5月6日の広島戦ではサヨナラ勝利のホームも踏んだ。1学年下の西浦は、今シーズンがプロ1年目。まずは1軍昇格を果たしたいところだ。
今井は甲子園で打たれた借りをプロの世界で返せるか。一方の古賀と西浦は甲子園で敗れた悔しさを晴らしたいところだ。今後、1軍の舞台で彼らの対決が訪れることを期待したい。
7月28日の中日対巨人で、小笠原慎之介(中日)が、出身校・東海大相模(神奈川)大先輩の菅野智之(巨人)に投げ勝ち、プロ初完封勝利を飾った。この小笠原は2015年夏の優勝投手として甲子園を沸かせたのはご存知の通りだ。
小笠原は、吉田凌(現オリックス)とのダブルエース体制で甲子園・準決勝に臨んだ。相手はスピードスターとして大ブレイク中だったオコエ瑠偉(現楽天)が「1番・中堅」で引っ張る関東一(東東京)。オコエは、それまでの3試合で13打数5安打、1本塁打と好成績を残しており、東海大相模の好投手2人との対決に注目が集まった。
この大一番で先発の吉田はオコエに対し、4打席目に1安打を許したものの、2打席連続三振を奪うなど、リードオフマンに仕事をさせなかった。8回から登板した小笠原も二ゴロに仕留めた。
打って、走って、チームに勢いをもたらすオコエを封じ込めた東海大相模は10対3で完勝。決勝戦へと駒を進めることに成功した。
小笠原とオコエはドラフト1位で、そして吉田は5位でプロ入りを果たした。1軍での実績では小笠原が一歩リードしているが、まだ3年目だ。3選手とも、これからの活躍に注目が集まる。
文=勝田聡(かつた・さとし)