安倍昌彦がイチ押しの2013夏・必ず現場で見て欲しい選手〜北海道から関東まで〜
夏の高校野球の地区大会が多くの地区で開幕しました。開幕とともに関東では梅雨明けを迎え、暑い、アツい夏がやってきました。しかし、『週刊野球太郎』の夏の高校野球大特集でまだ登場していない方がいらっしゃいますよね? そうです、「流しのブルペンキャッチャー」こと安倍昌彦さんです!
7月5日に開催された三省堂神保町店での『野球太郎No.005』発売記念トークイベントで、安倍さんがこの夏に注目する選手を語っていただいたのですが、残念ながらご参加できなかった方のために、『週刊野球太郎』でその模様を記事で、なるべく再現いたします! 地区大会開幕目前(記事が公開になった日には多くの地区で開幕していますが…)の安倍さんが気になる選手、球場で見るにはオススメの選手を地区別に紹介いたします!
今週、来週と2週間にわたって掲載しますので、高校野球観戦の参考にしてください!
「流し」で受けた清水洋二郎投手
――『野球太郎No.005』の「流しのブルペンキャッチャー」では函館ラ・サールの清水洋二郎くんを受けにいきましたが、夏は函館支部大会で負けてしまいました。
安倍 ヒジに違和感がある中での登板と聞きましたが、それでも夏の初戦は延長14回まで投げ切った試合になったんですよね。全部で42アウト取るんですけど、半分以上の23三振でしょう。高校生の場合、持続できないピッチャーが多い中で、三振を取り続ける能力はフィジカル、身体能力だけじゃないですよね。体の身体能力がすごい選手は毎年いるけど、頭脳でチームを構築していこう、という高い志をもった高校生がまた出てきたら受けにいきたいですよね。野球がちょっと上手いあんちゃんよりかは魅力あるなぁ。
▲清水洋二郎(函館ラ・サール)
今年の注目は岩手県!
――では、続いて、地区大会で安倍さんが気になる選手を北から紹介して行きましょうか。
安倍 僕の独断と偏見で注目している選手、おすすめ選手、見たい選手を選びました。
――安倍さんに名前を挙げてもらったのが、青森山田の松本一輝くん、花巻東の岸里亮佑くん、盛岡大付の望月直也くん、仙台育英の上林誠知くん、聖光学院の園部聡くん。見たい選手と見た選手が混ざっていますか?
安倍 見ていないのは岸里くんですね。岸里くんは花巻東の佐々木洋監督が彼のことを推すんですよね。「うまくいけばプロで1番が10年打てる選手になる」素質があるとおっしゃっていました。足が50メートル5秒台という俊足で広角打法が売り、とのことです。僕も見ていないので、これ以上は言えないのですが。楽しみですね。
▲岸里亮佑(花巻東)
――岩手からは唯一、2選手の名前が挙がりました。
安倍 岩手県は今年の高校野球で面白いと思う地区の一つですね。花巻東に盛岡大付、そして、一関学院には白鳥翔くんというピッチャーもいます。怪物と最初は言われていたんだけど、ケガなどで停滞気味になっています。
東北一番評価は園部聡
――見た選手の中で一番、評価が高い選手はどの選手になるのでしょうか?
安倍 とりあえず、僕の中で順番を付けて、コメントつけていきますね。僕の中では一番は園部くんなんですよ。彼を初めて見た時、清原さん(和博/元西武ほか)みたいに思ったんですよね。大人の雰囲気がすでにバッターボックスでありました。イメージとしては、もう少し古くなってしまうと大杉勝男さん(元東映ほか)みたいなバッターになるんじゃないかな、と思います。
―― 園部くんの話では、今はファーストを守っていて、そこが「どうなんだ?」と思われる人が多いと思います。
安倍 いつになったら、サードをやるのか気になっていてね。でも、以前にサードでノックを受けているのをチラッと見たことがあるんですが身のこなしはかっこよかったです。試合はファーストですが、夏の公式戦が終わったら、とことんサードの練習をやるそうです。
▲園部聡(聖光学院)
――2番目に気になる選手は?
安倍 好き嫌いになりそうですけど、望月くんですね。望月くんを見ていると思い出すのは、石毛宏典さん(元西武ほか)。石毛さんってね、ゴロを捕る時、極端にいうと、ここまで腰を落とせることができるんですね。
――完全に股割りみたいなところまで落とせるんですね。
安倍 そう、カタカナの「コ」の字の空いているところが下にくるような、太ももが地面と平行になるように落とします。現代では股関節が硬くなってきているけど、望月くんはこれができる。彼の躍動感や柔軟性は今の高校生には見られない魅力を持っている。自分の素質に気がついて、本気を出すのがいつかな、と楽しみです。
▲望月直也(盛岡大付)
仙台育英・上林の欠点とは…
――続くのは誰でしょうか?
安倍 上林くんになります。この前、仙台育英のグラウンドで光星学院と練習試合をしていたのを見ました。3打席で2安打して、アウトになったセンターライナーも凡打といえるものではなくてね。
――上林くんが3番目なのは意外でした。
安倍 彼は打ちにいく時にグリップが下がってしまうんです。低いグリップの位置から打ちにいくので、グリップより上のボールは打てないんですよね。その付近もまぁ難しい。打てるコースを高い確率で打ち返す能力は高い選手です。最後になりましたが、青森山田の松本くんは春の東北大会で4番でした。キャッチャーの西村凌くんやショートの成田塁くんが注目選手として言われていますが、プロということになると、この選手に限られると思います。懐の深い左バッター。大学進学のような話はありますが、プロ志望届を出せば、プロもあると思いますよ。
▲上林誠知(仙台育英)
――追加でお話しておきたい選手はいらっしゃいますか?
安倍 見たことのない選手では、今年は福島に行ってみようかなと思っています。日大東北の左ピッチャーがいいと聞いていたり、光南の八木澤くん(天成)というピッチャーをいいという人が多いので。
――秋田・明桜の左ピッチャーはどうでしょうか?
安倍 砂田(毅樹)くんですか。練習試合では140キロ前後を計測したということは聞いていますが、ちょっと肩、ヒジが痛いとのことで、春は1イニングも投げていないそうなんですよね。あと、おまけに光星学院にね…。
――八戸学院光星に校名変更したんですけど(笑)…。
安倍 そうでしたね。その光星のショートの1年生がいいんですよ。名前は中崎寿希也ですね。井口選手(資仁/ロッテ)が國學院久我山で出てきた時のような肩の強さがある選手。体もあるし、期待したいですね。
――坂本勇人選手(巨人)と比べるとどうなんでしょう?
安倍 坂本選手とは違うタイプなんだよね。坂本選手は人間らしい、素直な動きをするタイプの選手で「うまい」と思われる選手。中崎くんは動物的というか、直感的というか、こいつにしかできないメカニズムで動いている感じがしますね。「すごい」と感じるプレーをするのが中崎くんですね。
背中の目で投げる!?
――関東にいきましょう。
安倍 一番は渡邉くん(諒/東海大甲府)だよね、やっぱり。ただ彼はスナップスローができないから、こいつがショートか、と思われるかもしれませんね。でも、バッティングもよくて、足もある選手だから、プロで生きていけるとは思います。甲子園で活躍してるから、説明しなくていいよね(笑)。
▲渡邉諒(東海大甲府)
――昨年の夏のプレーぶりは鮮烈なものでしたよね。
安倍 でも、一番印象に残ってるのは1年春の関東大会。袖ヶ浦球場で打ったホームラン。入学して1カ月かそこらで、代打で出てきたのかな、そこでドーンとライナーで打ってね、先輩の高橋周平選手(中日)は放物線を描いて打つタイプですけど、渡邉くんはライナーで飛ばすようなタイプだと思っています。2番目は金子くん(一輝/日大藤沢)なんですよね。彼は守備がいいんですよ。背中に目があるような、カットプレーをするんです。普通はカットをするときは半身で、外野とキャッチャーを両方見られるような形で待つんですけど、金子くんは完全に外野を向いているんですね。そこから振り向きざまにキャッチャーの方向は見ないで投げるんです。注目して見てみてください。あと、金子くんは、簡単なショートゴロはかっこよくさばいて、自分が一番うまいと見せようとプレーしていると思いますね。誰しもができることではなくて、それができるというのもひとつの素質。僕は好きなタイプですね。
▲金子一輝(日大藤沢)
――3番目に気になる選手は?
安倍 若月くん(健矢/花咲徳栄)ですね。バッティングは時間がかかりそうですが、スローイングが非常に良くなっていました。昨年の秋は体の強さに任せていた感じでしたが、今年のセンバツでは体重移動がしっかりできるようになっていて、うまくなったな、と思いました。相手のチームは盗塁のサインが出しにくくなるでしょうね。敦賀気比の喜多(亮太)くんもいい肩ですが、それ以上かな、と思います。
▲若月健矢(花咲徳栄)
――続いては?
安倍 堀越の安西くん(拓人)というピッチャー。スリムで柔らかい軟体動物みたいなピッチャーなんですね。
▲安西拓人(堀越)
安倍 この写真だとリリースの時に軸足が浮いているじゃないですか? これだと力が入らないです。これが今年の夏は、どこまで粘れているか、地面についたまま投げられるか、というところに注目すると、よくなったかどうかがわかると思います。
――この秋のドラフトでどうこうのという選手ではありませんか?
安倍 いやいや、あると思いますよ。安西くんはスピードガンで測ると135キロもなかなかいかない程度かもしれませんが、バッターと対峙すると伸びが違うタイプのピッチャーです。実戦力があるタイプ。あと一人挙げますと、福山くん(聡史)という東亜学園のピッチャー。安西くんをひと回り小さくしたタイプなんですが、彼もかなり前で投げられて、同じようなタイプになると思います。すぐプロというタイプじゃないかもしれないんですが、大学、社会人とコツコツがんばって、ロッテの服部選手(泰卓)みたいな感じで働けるんじゃないかと思います。
次週は関東より西の地域の気になる高校生の話をしていきますので、特に西日本にお住いの方々は来週も要チェックです!
■プロフィール
安倍昌彦(あべ・まさひこ)/早稲田大学2年まで捕手としてプレーし、3、4年時は母校・早大学院の監督を務める。その後、スカウト的観戦を30年以上に渡って続けるかたわら、2000年秋から「流しのブルペンキャッチャー」として有望投手の球を受け始める。『スカウト』シリーズに続いて、『監督と大学野球 若者が育つということ』(日刊スポーツ出版社)を上梓。最近、twitterもはじめる。アカウントは
@abe_masahiko
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