この試合、金本監督がベンチで見せた落胆ぶりは、首位・広島に力の差を見せつけられ、連日の大量失点で完敗したことだけが理由ではない。
8回表の守備でルーキー・糸原健斗が捕球の際、右膝を故障。歩くことすらできず担架で運ばれ、離脱が決定的になったことにも起因している。
ここ数試合の糸原の活躍には、目を見張るものがあった。
7月9日の巨人戦で4安打を放ってから7月19日の広島戦まで、15打数11安打2四球、打率.733、出塁率.764を記録。打撃において何かをつかんだ矢先のアクシデントだった。
このまま長期離脱となれば、チームにとっても、また遊撃のレギュラーの座を手繰り寄せつつあった糸原自身にとっても、非常にダメージが大きい。
そして、離脱が危ぶまれるのは糸原だけではない。
3連戦の初戦で途中交代した糸井嘉男も「右わき腹の筋挫傷」で登録を抹消され、短期間での復帰は難しいと見られている。
ただ、この試合では後半戦に向けて、明るい兆しがなかったわけではない。終盤、頼みの救援陣が炎上した状況にあって、唯一救いとなったのがドラフト2位ルーキー・小野泰己の好投だ。
先発を務めた小野は4回まで広島の強力打線を無安打に封じ込め、与えた四球も2つ。勝利投手の権利が得られる5回表も1安打で切り抜けた。
広島の打者が3巡目となる6回表は、先頭の田中広輔を空振り三振に抑えたまではよかったが、後続の打者に甘く入ったところを連打され降板となった。
小野はこれまで8試合に先発して0勝5敗と勝ち星にこそ恵まれてはいないが、試合を作ることで先発としての最低限の役割は果たしていた。登板のたびに何かをつかんで、再びマウンドに上がる。その繰り返しでここまできている。
常にポーカーフェイスでマウンドでは何事にも動じない小野。未だ勝ち星は手にしていないが、一歩ずつ階段を昇り、成長を続けている。後半戦は、ルーキー・小野が投手陣のキーマンになるに違いない。
前半戦を、これといった故障者なく戦ってきた阪神。しかし、独走し始めた広島に食らいつきたい正念場にきて糸井が登録抹消。加えて、成長著しい糸原まで離脱となれば、後半戦への追撃ムードが萎えてしまうことにもなりかねない。
そんなに不穏なムードにあって、復帰した西岡がベンチのナインを鼓舞している。この3連戦の初戦のお立ち台で梅野隆太郎が熱く語った。
「西岡さんが帰ってきて力となり、チーム一丸となっている」
糸井、福留、鳥谷が引っ張ってきた前半戦。ここからは、その役目を西岡が一身に受け、ベンチの沈滞ムードが一新されれば……。
後半戦は、やはり西岡の存在感がチームの行方を大きく左右しそうだ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。