パ・リーグの外野手部門で唯一の「1票戦士」だった栗山巧(西武)。
この票の意味は単純明快。プロ野球人生で初のオールスターゲーム出場を果たし、第1戦でホームランを打ったことが理由だろう。
これはとてつもないインパクトだったが、ダントツ首位打者の角中勝也(ロッテ)、35歳にして盗塁王を獲得した糸井嘉男(オリックス)、日本シリーズで超劇的グランドスラムを放った西川遥輝(日本ハム)などが相手では、栗山に票が入らなくても致し方ない。
同じく西武からは、遊撃手部門で金子侑司に1票が投じられていた。
糸井と分け合ったとはいえ、初のタイトル・盗塁王を獲得したことが得票につながったと考えられる。
しかし悲しいかな、今季の金子は遊撃手としては21試合にしか先発しておらず、66試合に先発した右翼、27試合に先発した三塁よりも先発数が少ない…。
本来なら外野手部門に票が入っているべきなので、「有力選手の多い外野手部門じゃ空きがないから、遊撃手に入れちゃえ」という記者の気持ちも感じられてしまう。
今季のセ・リーグを制した神ってる広島からは、実に5つの部門で受賞者が生まれた。
そんな広島勢のなかで、「1票戦士」として存在感を示したのがエルドレッド。一塁手部門と外野手部門で1票ずつ入っているのだが、2部門で名前が挙がったのは大谷とエルドレッドだけだった。
ちなみに今シーズン、エルドレッドは主に左翼手として出場し、チーム2位の21本塁打を放った。日本シリーズでは一塁手として2試合連続本塁打と活躍。どちらのポジションにも票を入れたくなる気持ちも理解できる。
「見ている人は見ている」と思わずにいられなかったのは、井納翔一(DeNA)に投じられた1票。
7勝11敗という成績を額面通りに受け取ると得票に疑問符がつくが、開幕戦にオールスターゲームと節目節目で故障するエース・山口俊のフォローをしており、その健気な働きぶりに記者の心が動かされたと考えられる。
結果的に自身初の2ケタ黒星を喫してしまったが、チームが初のクライマックスシリーズに出場できたことに加え、ベストナインの票が入ったことで、少しは報われたのではないだろうか。
今回取り上げた選手以外にも、セ・パ合わせて16人の「1票戦士」が生まれた今年のベストナイン投票。
投票する側には簡単にはなれないが、その立場になったと仮定して投票した記者の気持ちを想像することは誰にでもできる。
残る16人はもちろん、上記の選手に対する別の意見もあるはずなので、ぜひ自分の意見を踏まえながら楽しんでほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)