対戦成績をベースに見ていこう。楽天時代の田中将大(ヤンキース)に対して、西武は通算で13勝7敗と圧倒した数字を残している。カモといって差し支えないレベルだ。
なかでも2012年は特筆モノで、田中のこの年の通算防御率が1.87だったなか、田中の西武戦の防御率は6.17。マー君をこれでもかと打ちまくり、毎度のように炎上させた。楽天側も、田中を得意とする西武打線を忌み嫌ったのか、対戦打席数は66と他球団に比べて少なかった。
ただし、24勝(0敗)を達成した翌2013年は、田中もエースの意地をみせる。被打率.167と、パ・リーグ6球団のなかで、西武は最も抑えられて田中に2勝を献上。そのうえ、西武ドームでリーグ優勝を決められるなど、おいしいところを持っていかれた。
日本球界在籍時のダルビッシュ有(現レンジャーズ)の西武との相性も面白い。
2006年から2010年の5年間、ダルビッシュは西武相手に11勝4敗と、お得意様にしていた。しかし2011年、開幕戦でダルビッシュと対戦した西武打線は、溜まっていたうっぷんを晴らすかのように、7得点を奪って快勝した。
ただし、この仕打ちにダルビッシュが黙っているわけもなく、彼のシーズン最終登板試合で再び相まみえると、15個もの三振を奪われて西武打線は沈黙。最後の最後に、「完封勝利」というリベンジを果たされてしまった。
しかしダルビッシュは、この試合後に「西武はセコいマネをしてこないので楽しい」とコメント。純粋な力と力の戦いを楽しめる相手として、一目置いていることがわかった。
斉藤和巳(元ソフトバンク)との対戦も熱かった。
2006年は3勝1敗と、勝ち星では斉藤が上回ったものの、対戦防御率は他の4球団を大きく上回る3.68と悪く、西武打線が斉藤をしっかり打ち崩していたことがわかる。
また、当時のプレーオフでは、第1ステージの初戦で対戦。レギュラーシーズンとはガラリと変わって、白熱した投手戦となった。しかし7回裏、和田一浩(当時、西武)が放ったタイムリーツーベースで西武が勝利。ちなみに和田は、2006年のレギュラーシーズンでは斉藤に対して打率4割を打つなど、“斉藤キラー”として君臨していた。
過去には黄金時代を何度も経験してきた西武には、近鉄時代の野茂英雄をはじめ、各チームがエース級をぶつけてきたという歴史がある。その戦いをくぐり抜けてパ・リーグを制したわけだから、「相手が強いほど燃える」という感覚が、伝統として染み付いているのも理解できる。
ファンとしては特定の投手だけでなく、どんな投手を相手にしてもまんべんなく打って勝利してほしいとは思う。しかし「百獣の王」が、相手の極上エースを餌食にしていく姿はやはり格別。
現状は下位に低迷する西武ではあるが、これからも「エースキラー」の遺伝子は、失わないでいてもらいたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)