無観客でも粛々と進んだオープン戦。そんな中、ひっそりと悲惨な状況になっているのは巨人だ。3月14日の時点で球団ワーストのオープン戦8連敗(3分を含む)。勝ち切れない日々が続いている。
あらためて今季の巨人の行方を占ってみたい。
(成績は3月14日現在)
結果は出ていないものの、野手陣はメンバーが揃っている。特に絶好調といえるのは、移籍2年目の中島宏之だ。昨季は期待を大きく裏切ったものの、今季は背水の陣を敷いて春先からエンジン全開。打率3割4分3厘、4本塁打をマークしており、不安のあった一塁の穴を埋めそうだ。
また、丸佳浩、岡本和真も好調。打率2割5分だが、坂本勇人も心配するほどではない。現状、競争枠はレフトの1枠だが、野手8ポジション中7ポジションを固められそうな情勢で、他球団と比較すれば、今季も頭一つ抜けいるだろう。
唯一、不安なのはトップバッター。吉川尚輝が打率1割5分9厘に沈んでおり、亀井善行も打率2割8厘。ここは要検討のポイントだろう。しかし、3年目の20歳・湯浅大が3割6分4厘と打ちまくっており、競争の態勢は整っている。全体的に打線は楽しみといえる。
一方でかなり厳しいのは先発陣だ。山口俊(ブルージェイズ)が抜けた穴はあまりに大きい。
昨季は腰の故障などに苦しんだ菅野智之が4先発で17回を投げ、防御率1.59の好成績を収めていることは明るいニュースだが、ポスト・山口の筆頭だった新外国人・サンチェスは3戦で7.2回を投げ、防御率10.57。京セラドームでは「ドームは慣れない。宇宙船の中でやっている感じ」という迷言を残している。
また、メルセデスも左ヒジ違和感のため、キャンプを離脱。実戦復帰の目途は立っているが、要観察の期間だ。飛躍が期待されていた戸郷翔征も2戦で防御率9.35。まだ経験が浅く、期待しつつも信頼できる水準にはない。
比較的好調なのは、高橋優貴と田口麗斗。田口の先発再転向が本決まりすれば、菅野、高橋、田口の3枚が現時点での表ローテになりそうだ。しかし、仮にサンチェスやメルセデスが復調したとしてもまだ5枚。高田萌生ら若手の台頭にかける形になりそうだ。
昨季は何とかやりくりしたリリーフ陣も盤石とはいえない。特に昨季67登板の中川皓太が疲労蓄積で3月上旬に休養を取っており、“コンディション不良”を抱えている。1軍復帰を果たしているが、昨季フル稼働のツケが回ってこないか心配だ。
また、澤村拓一もキャンプでインフルエンザに罹患して出遅れた。新助っ人のビエイラは球速こそ飛び抜けているが、クイックなどに課題を残している。修正できれば心強いが先行きは不透明だ。
守護神のデラロサは昨季26登板で1勝0敗5ホールド8セーブ、WHIP0.88の成績を収めたが、他球団には研究されているだろう。
高木京介、鍵谷陽平などの中堅が崩れれば、一気にブルペン事情は厳しくなってくる。
「打高投低」が現時点での分析になるが、キャンプ前の情勢とほぼ変わりないのも事実。ここまで負け込む理由はあまり見当たらない。新型コロナウイルスの影響で開幕までやや時間がかかりそうなので、その間に投手陣の整備に成功すれば、2連覇が見えてくるだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)