春季北海道大会は6月5日に決勝戦が行われ、駒大苫小牧が函大有斗に勝利。2013年以来、4年ぶり5度目の春季大会優勝に輝いた。
駒大苫小牧は2回表に4点を失う苦しいゲームの入りながら、2回途中から救援のマウンドに上がったエース・工藤稜太(3年)が好投。函大有斗打線を0点に抑えつづけるなか、駒大苫小牧打線が追い上げを開始する。
3、4、6回裏に1点ずつ取って流れを引き寄せると、7回裏に3点を挙げて逆転。そのまま6対4で逃げ切り、歓喜の瞬間を迎えた。
駒大苫小牧は今大会の4試合すべてで逆転勝利。夏の南北海道大会のライバル・東海大札幌、札幌第一、函大有斗を撃破した。夏の勝機も十分。この粘り強さを武器に、2007年を最後に遠ざかっている夏の甲子園出場をつかみたい。
北海道大会決勝の翌日、6月6日に行われた春季北信越大会の決勝。星稜対金沢という石川県大会のファイナルと同じ組み合わせとなった。
石川県大会では5対1で金沢に軍配が上がったが、今回は星稜が5対0で勝利。リベンジを果たすとともに、春季北信越大会連覇を達成した。
優勝のキーマンとなったのは、「背番号14」の福田隆太(3年)。約1年前から取り組むアンダースローで、金沢打線をわずか5安打に抑え、シャットアウト。
福田はこれが公式戦初完投だったが、決勝という大舞台で完封と力を出し切った。新たな個性派投手の登場は、夏の甲子園に向けての強力な援軍となるだろう。
八戸学院光星(青森)と仙台育英(宮城)との決勝戦を残すだけとなった春季東北大会。ここでは、敗退したチームのなかから光るプレーを見せた選手をクローズアップしたい。
まず、打者では「福島のギータ(柳田悠岐、ソフトバンク)」の異名を取る柳葉潤(福島、東日本国際大昌平、3年)。
6月10日のいわき光洋との準々決勝では、初回に本家・ギータを彷彿させる豪快なフルスイングで先制の3点本塁打を右翼スタンドへ叩き込み、チーム初の東北大会準決勝進出をアシストした。
チームは準決勝で八戸学院光星に敗れたが、柳葉は今大会の3試合で11打数7安打6打点。夏の「甲子園ロード」では他校の脅威になるだろう。夏の福島大会は絶対王者の聖光学院が10連覇中。今年こそ「ストップ・ザ・聖光」を果たせるか。
ちなみに「柳葉潤」の読み方は「やなぎは ひろ」。
春季東北大会で注目したい投手は、弘前学院聖愛(青森)のエース・山口大成(3年)。6月9日の2回戦、強豪・盛岡大付(岩手)を7対4で撃破した立役者だ。
今関勝(元日本ハム)コーチの勧めで、牧田和久(西武)のフォームを参考に、昨年の11月からアンダースローに挑戦。週3日で200球の投げ込みを行い、フォームを自分のものにしていった。
アンダースローでの最速は120キロ。当然、球速はオーバースローのときよりも落ちたが、代わりに「緩急のコツ」という新しい武器を手に入れた。
これが盛岡大付の強力打線に見事にハマった。2回途中からリリーフのマウンドに上がった山口は7安打されるものの、ゼロを並べ続けることに成功。延長10回の逆転勝ちを呼び込んだ。
弘前学院聖愛は八戸学院光星と青森山田の「2強時代」に待ったをかける新勢力。遅球派エースの活躍で、4年ぶり2度目の甲子園切符を手にできるか。
高校通算最多本塁打(107本塁打=山本大貴・神港学園)更新まであと8本塁打。清宮幸太郎(早稲田実、3年)を取り巻く「清宮フィーバー」は天井知らずで加速している。
6月11日に早稲田実業学校王貞治記念グラウンドで行われた九州学院(熊本)と桐光学園(神奈川)との練習試合にも、清宮の「カウントダウンアーチ」をひと目見ようと、多くの観客が押し寄せた。
しかし、九州の怪物スラッガー・村上宗隆(3年)を擁する九州学院との一戦は4打数1安打、桐光学園戦は5打数4安打で、いずれの試合でもアーチはなし。
とはいえ、九州学院戦ではサヨナラ勝ちにつながる安打、桐光学園戦では4番・野村大樹(2年)の2点本塁打を呼び込む安打を放つなど勝利に貢献。打棒に陰りはない。本塁打は次の試合の楽しみとしたい。
沖縄ではいち早く夏の沖縄大会の組み合わせが発表された。
開催期間は6月17日から7月16日(予定)。ほかの地区に約1カ月先駆けて熱戦の火蓋が切って落とされ、63チームが甲子園をかけて争う。
第1シードは春季県大会優勝の沖縄尚学。ただし、沖縄尚学が入ったAブロックは春ベスト8の宜野湾や昨秋ベスト4の那覇などがひしめく激戦ブロック。沖縄尚学が聖地に向けて勝ち進むことができるのか。それとも……。
夏の神奈川大会の日程も発表された。開幕日は7月8日。189チームが甲子園切符をめぐって争うが、注目校は横浜、桐光学園、東海大相模。そして、第1シードを獲得した星槎国際湘南だ。
昨夏の神奈川大会は4回戦止まりだったが、この春はベスト4。準決勝で横浜に0対10と力負けしたものの、夏のダークホースとして一躍脚光を浴びる存在となった。
星槎国際湘南を率いるのは名門・桐蔭学園を長年指揮した土屋恵三郎監督。就任3年目の春でチームを激選区・神奈川の上位に引っ張り上げた。
また、エースの本田仁海(3年)は高校で才能を開花させ、スカウト注目の投手に成長。夏の好投が期待される。
名将・土屋監督はドラフト候補エースとともに夏の神奈川を制することができるか。
春季地区大会は残すところ東北大会の決勝のみ。各地区の春の王者が夏の甲子園を决めるのか。はたまた、爪を研ぐライバル校の逆襲があるのか。それとも勢いに乗った「無印」のチームが頂点まで駆け上るのか。
夏季大会の組み合わせ表を眺めながら、筆者はそんな見方をしてみたいと思った。
何が起こるかわからないのが高校野球。球児たちにはただただ、悔いを残さないよう戦い抜いてほしいと願うばかりだ。
(成績、結果は6月12日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)