昨秋、台湾のウインターリーグでリリーフとして9試合連続無失点と結果を出した成瀬功亮。その快投が評価され、育成8年目にしてこの春、1軍キャンプへ呼ばれた。
成瀬の武器は、右のスリークオーターから繰り出す最速150キロのストレートとスライダー。度重なる故障で出世が遅れているが、それでも球団が待っているということは、その資質を評価している証に他ならない。キャンプや紅白戦でアピールし、オープン戦で登板。そして支配下登録を勝ち取りたい。
2015年は13勝、2017年は14勝と、故障さえなければ抜群の安定感を誇ったマイコラスが昨季限りで退団。その穴を埋める存在として期待されているのが新外国人選手のヤングマンだ。メジャー通算9勝で、昨季は3Aで9勝2敗、防御率2.59と安定していた。198センチの長身から投げ下ろすパワフルなストレートと大きな縦カーブは、うまくコントロールできれば、打者は苦労しそう。キャンプ初日からブルペンに入るなど、野球に取り組む姿勢も真剣そのものだ。
正式な英語表記は「Jungmann」だが、登場曲は西城秀樹の「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」を使う意向を表明。巨人にはマギー、ゲレーロ、マシソン、カミネロと、すでに実績のある外国人選手がいるため、まずは外国人枠との戦いになる。
正捕手・小林誠司に次ぐ存在と目される3年目の宇佐見真吾が、昨年11月に骨折した左手首の影響でキャンプは3軍スタート。ドラ2ルーキーの岸田行倫、育成から支配下登録された4年目の田中貴也にとってはアピールの大チャンスだ。
岸田は、報徳学園、大阪ガスという球歴。高校時代は最速144キロの投手として甲子園のマウンドにも立っており、肩の強さは折り紙つき。捕手は高校2年の秋からで、キャリアはまだ5年ほど。プロで磨かれてさらなる成長を遂げられるか。
田中貴は、昨季の夏に育成枠から支配下登録されたが、まだ1軍での出場経験はない。このキャンプ、オープン戦を飛躍の足掛かりとしたいところだ。
いまだに固定できないのが二塁手。昨季の時点でチームにいた選手たちに抜きん出たところが見られないことが、この混沌としたな状況を生み出している最大要因だ。オープン戦でも多くの選手が試されるだろうが、ここはルーキーの2選手に大暴れを期待したい。
まずは昨秋のドラフト5位入団で、兄に広島の田中広輔を持つ田中俊太。東海大相模高ではセンバツで優勝、夏の甲子園で準優勝。東海大では大学選手権で優勝。日立製作所では侍ジャパン社会人代表に選出されBFAアジア選手権に出場し、大会通算15打数5安打。決勝では先制打を放つなど、全勝優勝に貢献している。輝かしい球歴は、まさに「持っている選手」。足もあり守備も堅実だ。
そして、ドラフト6位の若林晃弘は桐蔭学園高、法政大、JX-ENEOSという球歴。桐蔭学園高時代は茂木栄五郎(楽天)とチームメイトだった。社会人時代の守備位置は主に二塁だが、高校時代は投手や遊撃、外野で試合に出場している。しかも、俊足のスイッチヒッター。スピードと器用さを兼ね備えた好素材だ。侍ジャパン社会人代表では、前述の田中俊らとともにプレーした。
なお、父の憲一さんは、かつて大洋(現DeNA)に1972年から9年間在籍し、163試合に出場した元プロ野球選手だ。
2016年秋の育成ドラフト5位での入団ながら、頭角を現しつつあるのが松原聖弥(明星大)だ。ルーキーイヤーの昨季は3軍で100試合に出場し、打率.332、45盗塁と奮闘した。昨秋の台湾ウインターリーグでも19試合で打率.311。キャンプからオープン戦にかけて、さらに化ける可能性もある。
ちなみに松原の兄は、太田プロ所属のお笑いコンビ、ロングアイランドの松原侑潔(ゆい)。年明けの登竜門的番組『おもしろ荘』に出演するなど、若手の有望株と目されている。兄弟でどちらが先にブレイクするかも注目だ。
(※写真は日立製作所時代の田中俊太)
文=藤山剣(ふじやま・けん)