まず名前が挙がるのは、来シーズンの広島野手陣の中核となる活躍が期待される西川龍馬だ。
西川は2015年のドラフト5位。今シーズンは62試合に出場して、打率.294と好成績を残し、ルーキーながら年間通してほぼ1軍で過ごした。
オープン戦から、走攻守で高いセンスを見せつけた西川は開幕1軍を勝ち取ると、プロ入り初安打を三塁打で飾る。これはドラフト発足後史上初の「新人選手の初安打が三塁打」という記録。ルーキーイヤーに華々しいスタートを切ってみせた。
守備面でも、慣れない三塁では失策を犯す場面も見られたが、二塁では軽快な動きを見せるなど、守備センスの高さを証明した。
西川の出身校は東出輝裕打撃コーチと同じ敦賀気比高。東出コーチもルーキーイヤーから大活躍したスター選手で、広島史上有数の名手と呼ばれた。東出コーチと西川は、同じ小兵型内野手で似た点は多い。東出のように西川も成長してほしいと願うファンは多いだろう。
しかし、東出コーチは職人タイプだったが、西川は日本シリーズの大舞台でヒットを放つなど、スケールの大きさを感じさせる。東出コーチ以上のスター選手になってくれることを願ってやまない。
「来季は首位打者を争うのでは?」という声も挙がる打撃センスで、一気にスター街道を進んでもらいたい。
次に挙げたいのは、次代のスラッガー候補・高橋大樹だ。
高橋は2012年のドラフトで1位指名された逸材。だが、同年のドラフト2位・鈴木誠也とは大きく水を開けられてしまった。高橋のここまでの1軍出場数はわずか2試合。今シーズンは1軍出場もないばかりか、ファームでも打率.226と、壁にぶち当たっている感は否めない。
しかし、1軍昇格を果たした2014年の初打席では「あわやホームラン」という大ファウルを放った。この飛球にロマンを掻き立てられたファンは多いのではないだろうか?
自慢の長打力に磨きをかけ、壁を突破できたときこそ、広島待望の和製大砲が誕生する。
最後に挙げたいのは、こちらも和製大砲候補の美間優槻だ。
美間も高橋同様、今シーズンは壁にぶち当たってしまった。1軍出場はわずか1試合。1軍実績は皆無に等しく、3打席に立ち、まだヒットは記録していない。
しかし、プロ2年目の2014年にはファームではあるものの1カ月で4本塁打を放ち、2015年のオープン戦では、開幕1軍を決める特大ホームランを放ってみせた。その長打力は実証済みだ。
また、美間は生まれながらにスラッガーとしての武器を持っている。それは「噛む力」だ。美間の「噛む力」は日本人男性の平均値を遥かに超える129キロを誇る。スイングのインパクト時に大きな力を発揮するのが「噛む力」。天性のスラッガーたる力を持っているといっていい。この男に期待せずにはいられない。
俊足巧打の西川。長打力の高橋と美間。そして「神ってる」鈴木誠也。彼ら「大谷世代」が、広島が誇る田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、野村祐輔ら「89年世代」に肉迫するようになれば、広島の黄金時代が到来するのも夢ではない!
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)