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超変革〜サブマリン・青柳晃洋(阪神)の来期に期待。偉大な大先輩・小林繁に学ぶところとは?


「青柳に勝ちがつかなかったのが……ね」

 9月27日のヤクルト戦で逆転勝利し、シーズン初の5連勝を飾った阪神・金本知憲監督が試合後のインタビューで唯一悔しがったのが、青柳晃洋に話しが及んだときであった。

 この日先発した青柳は、6回まで1失点と好投。しかし7回、送りバントの処理にまごつき、打者走者を生かしピンチを広げてしまう。最後は自らのフィールディングミスで降板。今シーズン最後の登板を、勝利で飾ることができなかった。

“自らのミスでことごとく勝機を逃す!”

 これが今シーズンの青柳が歩んできた道だ。

 この壁を打ち破ってほしい。金本監督の悔しさは、青柳に対する期待度の高さをうかがわせる。

適度な荒れ球を生かした青柳の投球術


 昨年ドラフト5位で阪神に入団した青柳は、6月1日の楽天戦で先発として1軍デビュー。3回に3連続四死球を与えるもピンチを切り抜け、5回を3安打1失点でプロ初勝利を上げた。

 今シーズンは、13試合に登板し、防御率3.29、4勝5敗で1つの負け越し。しかし、成績以上に、各球団の右バッターは青柳のインコースに切れ込むツーシームを毛嫌いする。元々コントロールに難があり抜け球の多い青柳の内角攻めは、右打者の恐怖心を助長するからだ。

 青柳が現在のサブマリン投法に変えたのは、少年野球時代のコーチの勧めだという。対する打者が口々に、「怖い、怖い」と連呼するのが打者を封じるという意味で楽しくもあった。

 投げるとき体が下から浮き上がることで、潜水艦に似ていることから名づけられた“サブマリン投法”。

 打者にとって厄介な下から浮き上がる球筋と適度な荒れ球が、今の青柳にとって生命線となっている。


常に気合を込めてマウンドに上がったサブマリン、故・小林繁氏


 サブマリンといえば、青柳から見れば大先輩でもある故・小林繁氏が思い出される。

 小林氏は、かつて巨人が野球協約の盲点をついて江川卓を強引に入団させようとし、球界を震撼させた「空白の1日事件」のあおりを受けて、巨人から阪神にトレードされ、「悲劇のヒーロー」と呼ばれた大投手であった。

 トレードされた1979年には、巨人戦に照準を合わせたローテーションを小林氏が懇願。巨人相手に8連勝を記録した気合あふれる投球は、記憶に残っている。

 小林氏のストレートの球速は130キロ台後半と、当時としても決して速い方ではなかった。しかし、独特の間を置いたフォームから変化球を巧みに使い、打者のタイミングを外す投球術は野球ファンを魅了した。

 また、1球1球気持ちをこめて打者を面白いように料理していく様は、躍動感にあふれ輝いて見えた。

 とくに巨人戦の登板では「絶対に負けられない!」といつも以上に気合を込めてマウンドに上がった。

青柳が今後身につけていくべきもの


 青柳はそんな小林氏に憧れの気持ちを抱いているという。

 当時の小林氏を重ね合わせてみて、現在の青柳に欠けているところはどのようなところであろうか。

 145キロ前後のキレのいいストレートは、小林氏も持たなかった武器ではある。

 ただ、小林氏はストレートで押す投手ではなかったが、打者のタイミングを外す術を備えていた。2段モーションは原則禁止とはいえ、サブマリン投法の特徴を生かし、投球フォームの間、緩急の変化など、打者のタイミングを外す術は、これからの青柳にとって必要だ。

 そして、何よりも小林氏から学ぶべきところは、気持ちの部分であろう。「なにくそ!」という気概が、青柳からはまだ見えてこない。

 気がつけば四球を連発、牽制悪送球、そしてフィールディングミス……。気持ちの弱さがミスを誘発していると感じる。

 今後、偉大な大先輩の気合のこもった投球に、青柳が少しでも近づくことができれば、大きく羽ばたく逸材であることに間違いはない。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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