その課題の1つが盗塁だ。この3連戦、両軍の盗塁は明暗が分かれた。ソフトバンクは単独スチール、重盗、ランエンドヒットなど8企図5盗塁とよく走ったのに対し、楽天はわずか2企図1盗塁。
両軍投手陣の牽制球でも差が開いた。楽天投手陣は25球、ソフトバンク投手陣は16球。特に初戦、楽天投手陣は打者に181球を投じたが、一塁走者にも18球の牽制球を投じるハメになった。
出塁を許すと足で揺さぶられるという印象を鮮烈に植えつけられ、楽天の投手たちは走者のケアに追われ、打者との対決に専念しづらい状況を余儀なくされた。
一方、パリーグ4位・19盗塁の楽天はこの3連戦に限らず、相手にイヤな印象を残せていない。
筆者がずっと気になっている点がある。外国人打者が打席にいるとき、楽天の盗塁を試みたケースがたったの一度しかないのだ。
その1回もこの3連戦にようやく記録された。それも、バンデンハークの投球がワンバウンドになり捕手が球を弾いた隙に、一塁走者が二塁を狙ったが送球に刺されてアウトになったもの。投手のモーションやクセを盗んで仕掛けた盗塁ではなかった。
ウィーラー、ペゲーロ、アマダーと外国人打者3人をスタメンに敷く布陣は、今シーズンの売りの1つである。しかし、同時にこれは諸刃の剣でもあるのだ。
塁上に走者を置いた場面で彼らを打席に迎えても、楽天の走者はほぼ仕掛けない。この共通認識が相手チームに周知徹底されているのだろう。足で仕掛けられるプレッシャーが相手投手にかからないため、特に「走者一塁」での彼らの打撃成績がすこぶる悪いのだ。
■ウィーラー、ペゲーロ、アマダーの走者一塁での成績
ウィーラー:51打数13安打/3本塁打/打率.255
ペゲーロ:51打数10安打/2本塁打/打率.196
アマダー:46打数4安打/2本塁打/打率.087
3人合計:148打数27安打/7本塁打/打率.182
一発長打を持つ彼らに打撃に専念してもらうため、走者を動かさないのだろう。しかし、この数字をみると、相手投手も走者に気を配る必要がないため、彼らとの勝負に集中できているのがわかる。
「走るか・走らないか」は結果としても、「相手投手に自分のピッチングを楽々と許している状況」は、今後の優勝争いを考えるとマズい。
一塁走者がいるときの彼らの成績を上げていくためにも、走者が大きめのリードを取ったり、繰り返し牽制球を誘うなど、もっと塁上での揺さぶりが必要になってくるはず。今後この点がどう改善されるのか、注視したい。
(成績は7月3日現在)
文=柴川友次
NHK大河ドラマ「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドにみえる、楽天押しの野球ブロガー。開幕前から楽天有利、ホークス不利の前半戦日程を指摘、イーグルス躍進の可能性を見抜いた。