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イチローや中村紀洋と同じ吉兆のドラフト4位指名!縁深い日本ハムに指名された平沼翔太への大いなる期待

【この記事のよみどころ】
・精神面も大人だとわかる平沼のコメント力
・強気で、言い切る発言は北島康介級!?
・指名された日本ハムは、平沼にとって縁深いチーム

☆コメントからわかる平沼がプロでも活躍できそうなわけ

 こんなに簡単に、野手転向を受け入れるのは意外だった。

 中学時代から投げて、打って、走って、敦賀気比高に入学以降も、1年春から投打に存在感を出し続けた平沼翔太。常々、今日は投手(または野手)での出場だったけど……といった記者の質問に対して、「その日、起用されたポジションでやるべき仕事をする」「二刀流って言われますけど、投げる時は投げますし、打てる時は打ちたい」と、“どちらもがんばります”と、アピールするように装っていた。

 しかし実際は、下級生時代から明らかに投手に執心していた。試合後のコメントでは、本塁打については1を聞いて、2が返ってくるのに対して、投球については5も6も返してくれる。特に、捕手の嘉門裕介の話題になると、とても嬉しそうに話してくれる顔が印象的だった。

 2年夏の甲子園で大阪桐蔭高に負けて以降は、悔しさと見返してやりたい一心で、投手が一番だという気持ちを隠さなくなった。

 その気持ちをバネにして、センバツでは高校生の中にひとり大人の投手がいるような投球で、チームを優勝に導く。調子を落としながらも、夏の甲子園にも出場。試合を作ることにおいては、?橋純平(ソフトバンク1位指名)と同レベルで、今年の高校生ではトップではないかと思っている。


 しかし、下級生の時からずっとスカウトの評価は断然野手だった。センバツ優勝で投手として再評価されても、「投手としてもいいんだけど……」という前置きはなくならなかった。こうした評価を耳にする度に、反骨心の強い平沼は、より一層、投手にこだわりを持つようになっていったはずだ。

 ところが結果は周知の通り、日本ハムから4位で内野手として指名を受けた。ドラフト前の国体に、突然、遊撃手で出場した平沼。実は甲子園終了後、内野でノックを受けていたという。プロから指名を受ける場合は、「まずは内野手で」と言われていたのだろう。

 すんなりと事が進んでいるな、と思ったが、スカウトとの面会後の平沼のコメントで合点がいった。

「まず球団から期待される遊撃手としてレギュラーになる」

「ヤクルトの山田哲人さんみたいになりたい。なれるようにして、負けたくない」

「プロという目標を夢で終わらせてはいけない」

 そうだ、これが平沼翔太だ。「大人の投球ができる」と評したが、それは同時に、精神面も普通の高校生とは違う「大人」なのだ。

 平沼のコメントを聞く度に、どんな時でも言い切っていたことを思い出した。自分への自信、もっと上のレベルにいくんだという向上心、口にすることで逃げ場を作らない強い気持ち……。平沼の言葉にはそんな思いが詰まっている。少し大げさな例えになるが、競泳選手の北島康介に似た言葉の雰囲気だ。

☆縁があった日本ハムからの指名

 指名されたのが日本ハムという点も良かった。

 単純に高卒選手が育っているから、だけではない。支配下選手数が少なく、根気よく2軍でも試合に使い続ける方針は、ほぼ内野経験ゼロの平沼にはありがたい環境だ。それに加え、正直なところ、打撃、走塁は反応や身体能力は高くても、そこまで洗練された印象は薄い。みっちり叩き込まれるチームに加われることで、より将来の平沼が輝く選手になるはずだ。

 日本ハムの2軍の遊撃手に目を向けると、2歳上の渡邉諒が最多出場。来年の2軍、あるいは将来の1軍で、渡邉諒が平沼の最大のライバルとなるだろう。

 渡邉諒は東海大甲府高2年時に1番・遊撃手として甲子園ベスト4入りに貢献。3年時は侍ジャパンに選ばれ、2013年のドラフト1位で日本ハムへ入団した。中学時代には陸上の大会に出場して、100メートルで茨城県2位入賞。高校3年時にはマウンドにも上がり、最速146キロを記録するなど、身体能力は平沼を凌ぐ。ちなみに平沼も、中学時代には1500メートルでジュニア五輪に出場した経歴を持っており、この2人はなにかと似ている印象を受ける。

 日本ハムは渡邉諒などスケールが大きい選手を獲得する傾向がある。数々の逆境をはねのけてきた平沼にとって、ライバルが強ければ強いほど闘争心は掻き立てられ、プラスになるのは間違いない。

 生まれ育った福井に一番近い雰囲気があるのは北海道だろうし、中学時代に所属したオールスター福井でお世話になった故・小林繁氏が最後にコーチとして在籍したチームが日本ハム。平沼にとって一番、縁深いチームとは、実は日本ハムだったのかもしれない。


☆高卒ドラフト4位指名の野手として

 将来的に、どちらが遊撃手のレギュラーになるのかはわからない。しかし12球団のポジション争いで、一番スケールが大きな戦いになるだろう。仮に平沼が正遊撃手ではなく、三塁手や外野手に回っても、川端慎吾(ヤクルト)のように打撃を生かす野手になれれば、それは大成功だ。

 野手転向ということで、センバツ優勝投手の実績も霞んでしまった平沼。今回のドラフトでは“空気”のようになってしまい、結果も4位指名であった。

 しかし過去の高卒ドラフト4位の野手には、イチロー(マリーンズ)や中村紀洋(元近鉄ほか)、前田智徳(元広島)など、下位指名の割に活躍する選手が多いというジンクスがある。その1人として、平沼の名前が並ぶことを祈りたい。

 遊撃手か、三塁手、外野手か、はたまた投手へ再転向……どんな未来が待ち受けているか、平沼のプロ生活がいよいよスタートする。


文=カバディ西山(『野球太郎』編集部)

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