6月の終わりから7月にかけて、中日・松井雅人、松井佑介とオリックス・松葉貴大、武田健吾、広島・下水流昂と楽天・三好匠、阪神・石崎剛とロッテ・高野圭佑と、交換トレードが立て続けに行われた。また、中日・モヤはオリックスへ金銭トレードされた。
シーズン中のトレードの期限は7月末。各チームとも、今のうちに補強ポイントを洗い出し、可能であれば弱点を補強してシーズン終盤へ向かいたいところ。そこで週刊野球太郎では、僭越ながら独断と妄想でトレードプランを考えてみた。
虎党ならずともその動向が気になる藤浪晋太郎(阪神)。2013年のデビューから3年連続で2ケタ勝利を記録し、2016年9月には日本球界6人目となる160キロを叩き出した。
ところが、持ち味でもあった「荒れ球」が、いつしか度を超えた荒れ方となり、制球難から自滅するケースが目立つように……。それにともなって、成績が伸び悩んでいるのが現状だ。
今季は7月10日の時点でまだ1軍昇格なし。ただ、2軍戦では6試合30イニングを投げ、防御率2.10とまずまずの結果を残している。与四球も直近の試合で5つ与えたが、それまでは4つと安定していた。それでも、1軍に招集とならないところが藤浪に対する現状の信頼度なのだろう。
その藤浪が環境を変えて他球団でもうひと花、ということならこれはもう西武しかない。大阪桐蔭時代に、ともに甲子園春秋連覇を成し遂げた1歳下の森友哉が正捕手に成長。バッテリー再結成なら、思い切って腕を振ることもできるはずだ。このプランは、SNSなどを中心にネット上でかなり語られてもいる。それだけ野球ファンの藤浪への注目度が高いということだろう。
一方、西武からのトレード相手にはメヒアを挙げたい。2014年にシーズン途中加入で本塁打王になるという史上初の快挙を達成するも、近年は若手の台頭もあって出番が減少気味。たまのスタメン出場でも打順は下位に置かれることが珍しくない。今季は代打とスタメンでの出場がほぼ半々という状況のなか、74打席で4本塁打。年間を通して打席に入れば20発以上はまだまだ期待できる。
近年、ロサリオ、マルテと、鳴り物入りで招聘した助っ人がハマっていない阪神。新たな外国人選手を補強する報道もあるが、来日してみないとわからないことは身にしみている。それなら、ある程度計算が立つメヒアのほうが安心感はあるはずだ。
2010年に47本塁打を放ったブラゼルも西武からの移籍だった。そのことを覚えていて、メヒアがブラゼルの再来となることを期待する阪神ファンは多いのではないだろうか。
原辰徳監督が復帰し、セ・リーグのペナントレースを引っ張る巨人。勝っているだけに、補強の必要はないように思えるが、過去にはこれでもかと選手を集めてきた球団。まだまだ手を打ってくる可能性はある。
巨人の補強ポイントとして、固定できていないのが内野、特に二塁だ。開幕スタメンだった吉川尚輝が故障し、田中俊太、山本泰寛、若林晃弘、増田大輝らが使われているが、なかなか一本化できない現状は、各選手とも、もうひとつ決め手に欠けているからだろう。それなら、楽天から藤田一也を招くのはどうか。
加入した浅村栄斗が二塁、茂木栄五郎が遊撃で安定しているだけに、出番が減っている藤田。ただ、S級の守備職人がこのまま埋もれていくのはあまりにももったいない。
37歳という年齢から、そう長く活躍することは難しいかもしれないが、2014年、当時38歳だった井端弘和が中日から加入し、2年間現役としてプレー。そのままコーチとして残ったおかげで、坂本勇人や岡本和真ら巨人内野陣の守備力向上に大きな効果をもたらした。藤田にもそういった役目が期待できるのではないか。
また、今季、12球団一犠打が少ないのが巨人。2011年には41犠打を決めている藤田なら、シーズン終盤、あるいはポストシーズンにおける“ここ一番”の場面で、ピンチバンターとしても重宝されそうだ。
トレード相手としては、田口麗斗の新天地での一変に期待したい。2016年に10勝、2017年には13勝を挙げたものの昨季は2勝8敗で4.80。今季はおもにセットアッパーとして登板しているが、やはり先発である程度のイニングを投げてもらいたい投手だ。
高橋由伸前監督のもとで開花したように、もしかすると若い監督の方が相性のいいタイプなのかもしれない。楽天の平石洋介監督は39歳。今季、広島から移籍してきた福井優也を甦らせた実績もある。まだ24歳の田口が、平石体制の下でのびのびやれるようなら、先発投手として復活する可能性はある。
リーグ4連覇を狙う広島が苦しんでいる。特に打線の落ち込みが深刻で、ここにきて丸佳浩、新井貴浩、エルドレッドと、昨季までチームの主力だった選手の抜けた穴の大きさをあらためて思い知らされた感がある。
そんな状況下だけに、中途半端な補強では意味がない。ここは、日本ハムから中田翔を迎え入れるというのはどうだろう。
まず、大きなメリットとして一塁手が固定できることが挙げられる。バティスタの守備もよくなってきてはいるものの、ミットさばきの安定感では中田のほうが上だ。今季、田中広輔の不振が目立っていて、昨季7個だった失策が、7月10日終了時点ですでに9個。このあたりの不安要素も、一塁に中田が入ることで、内野全体が落ち着いてプレーできるようになれば、解消する可能性はある。この効果で田中が本来の打撃を取り戻し、チーム全体に好循環が生まれることも十分考えられるのだ。
もちろん、中田本人の打撃にも期待がかかる。年間25から30本塁打を計算できる長打力に加えて、シーズン100打点を4回記録しているように勝負強さも備えている。鈴木誠也の後に入れば、相手投手は鈴木との勝負を避けづらくなるので、鈴木にとってもチャンスが増える。打線が活性化するに違いない。
中田にとっても故郷・広島の球団というのは、もう一段、奮起する材料になるのではないか。
一方の日本ハムは開幕投手を務めた上沢直之が膝に打球を受け今季絶望。かつて、トレードに出した吉川光夫を呼び戻すほど先発投手の補強を急いでいる。中田のトレード相手となれば相応の選手が必要だが、ここは“野村祐輔+α”でどうか。
2016年には16勝3敗で最多勝と最高勝率を記録。先発ローテーションの柱ではあるものの、ここ3年は9勝5敗、7勝6敗、今季もここまで3勝3敗と物足りない数字だ。ただ、大崩れしていない点は評価できる。球威よりは制球で勝負する投手だけに、フェンスが高い札幌ドームに本拠地が変われば、投げやすさは増すだろう。
直近の成績を考慮すれば、中田と1対1というのは、釣り合わないようにも見えるので、広島側から若手投手をもう1人プラスすれば、トレードはまとまりやすくなるかもしれない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)