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コミッショナー表彰に格上げ! 至上命題でもあるプロ野球試合時間短縮に変化は起きているのか?

プロ野球2016 ココが変わってどうなった?【コネタ編】

 開幕前日の3月24日、NPBは試合をスピーディに進めた選手やチームをコミッショナーが表彰する「スピードアップ賞」を制定したと発表した。平均試合時間がリーグで最も短いチームのほか、無走者時の投球間隔を測定し、シーズン平均が最も短い投手、相手投手の平均投球間隔が最も短い打者を表彰する。

 「ココが変わったプロ野球2016」。最後は、「ココが変わった」という視点以上に、「変わって欲しい」という願いも込めて、12球団の「平均試合時間」を取り上げたい。

試合序盤のワクワクも、試合終盤のドキドキも味わえない野球中継


「スピードアップ賞」は、これまでにもセ・パ各リーグが個別に表彰を行っていた。それが今季から“コミッショナー表彰”に格上げとなった形だ。それだけ、スピードアップが至上命題、という決意の表れともいえる。

 プロ野球の地上波中継が激減して久しい。中継数減のひとつ要因とされるのが「試合時間の長さ」だ。たとえば、4月12日にフジテレビ系で「ヤクルト対巨人」戦(@神宮)が全国中継されたが、この日の放送は夜7時から9時まで。3回途中から放送が始まり、8回途中で終わってしまった。

 試合序盤のワクワクも、試合終盤のドキドキも味わえないようでは、野球ファンであっても興味がそがれてしまう。いくら観客動員数が増え、CSやネット中継の数が増えているとはいえ、このままでは潜在的な野球ファンや若年層のファン拡大は見込めない。だからこそ、今、試合時間短縮が求められているのだ。


3時間17分→3時間13分→3時間12分


 では、具体的にどれくらい試合時間が短くなればいいのか? 今年1月、熊崎勝彦コミッショナーは試合時間の理想は「3時間以内」と語っている。

 昨季の12球団平均試合時間は「3時間13分」(※9回で終了した場合。以下同)。この数字は、前年(2014年)と比較すると4分の短縮だった。そして今季、ここまで(4月24日現在。以下同)の平均は「3時間12分」。あと「12分以上」の短縮が必要なわけだ。

 各球団、登場曲を短くするといった工夫はしているものの、更なる努力と工夫が求められているのは間違いない。

 ただ、この「3時間以内」という目標は決して不可能な数字ではない。12球団平均ではなく、球団別の試合時間を見ていくとすでに3時間を切る球団も存在しているからだ。

 そんな“短時間球団”が巨人。ここまでの平均試合時間は「2時間57分」で、12球団で唯一、2時間台を記録している。実は巨人、「平均試合時間」に関しては、今季だけでなくずっと優秀な球団だ。昨季まで3年連続で平均試合時間が12球団でもっとも短く、昨季も前半戦までであれば平均3時間を切っていた。


 一方、今季“もっとも試合時間が長い”球団はオリックス。平均「3時間24分」と、12球団平均よりも12分長く、巨人より27分も長い。


平均試合時間が短い球団? 長い球団?


 この2球団だけ見ると、弱い球団は投手交代が多くなるから試合時間が長いのか? とも思えてくるがそう単純な話ではない。今季の平均試合時間を順位付けしてみよう。

<セ・リーグ>※リーグ平均3時間9分

1位 巨人【1】
=2時間57分(昨季から7分減)

2位 DeNA【6】
=3時間4分(昨季から11分減)

3位 中日【2】
=3時間5分(昨季から3分減)

4位 ヤクルト【5】
=3時間12分(昨季から2分増)

5位 阪神【3】
=3時間16分(昨季から1分増)

5位 広島【4】
=3時間16分(昨季から5分増)


<パ・リーグ>※リーグ平均3時間15分

1位 日本ハム【5】

=3時間3分(昨季から15分減)

2位 ロッテ【2】
=3時間10分(昨季から1分増)

3位 楽天【4】
=3時間17分(昨季から1分減)

4位 ソフトバンク【1】
=3時間18分(昨季から2分減)

4位 西武【3】
=3時間18分(昨季から5分増)

6位 オリックス【6】
=3時間24分(昨季から7分増)

※【】内は4月25日現在のリーグ順位

 実際の順位と試合時間には相関関係がないことがわかる。ただ、巨人の試合時間が毎年短いように、いつも短い球団、長い球団、といった傾向は存在する。

 パ・リーグで毎年試合時間が短い球団はロッテだ。ここ数年、パでは1、2を争う平均時間の短さを誇り、今季もここまでパでは2番目に短い。

 一方、毎年試合時間が長い球団の代表例がセでは阪神とDeNA。パ・リーグはロッテ以外どこも似たような数字なのだが、比較的ソフトバンク、オリックス、楽天の試合時間が長い。

MLBも甲子園も、試合時間はもっと短い


「試合時間を短く」という話題を出すと、「野球は間のスポーツ。時間ばかり気にして、試合本来が持つ楽しさを失っては本末転倒」といった声を耳にすることがある。

 本当にそうだろうか?

 昨季、MLBの平均試合時間は前年より6分短縮して「2時間56分」と2時間台を記録した。この短縮成功に導いたのは、イニング間は通常2分25秒、打者は完全に打席を外してはならない、といった「時短ルール」の導入だ。MLBではさらに、投球間の時間短縮ルールも3Aで実験するなど、更なる試合時間短縮に努力を続けている。

 だが、「3時間を切ったから試合がつまらない」といった声は聞こえてこない。日本においても、高校野球は試合時間が2時間を切ることも珍しくない。同じルールのスポーツをしていて、これほど試合時間が異なる方がおかしいのだ。

 まだ開幕して1カ月。試合時間に関しては、ペナントレースが進むにつれ、自然と長くなっていくはずだ。だからこそ、ファンは今まで以上に、日が経つほどにシビアな目を向けなければならない。

 一部では、「五輪種目に野球競技が復活するために7イニング制にしよう」といった声も挙がっている。むしろ、そちらのほうが「野球本来の楽しさ」を損なう暴論のはずだ。

 試合時間短縮はこれまでも何度か議題に挙がり、その都度、数分短くなっては、また長くなる、の繰り返しだった。ここらでその負の歴史を止めなければ、新規のファン獲得は叶わないと思った方がいい。NPBや選手だけでなく、ファンの意識も求められている問題なのだ。



文=オグマナオト(おぐま・なおと)

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