これまでの城所は、代走と守備固めが主な仕事。その存在感は、昨年のメジャーでのキャンプでイチローが着て話題となった「キドコロ待機中」のTシャツそのもの。
試合の終盤まで待機し、勝負どころで内川聖一や外国人選手の代走として登場。さらには、まるでクローザーのように最終回の守備固めとしてだけ起用されたりと、スーパーサブ的な出番がほとんどだった。
しかし、今季はひと味違う。4月3日には、2011年6月26日の日本ハム戦以来となる先発出場。そして5月18日の日本ハム戦では、2007年8月19日の楽天戦でのプロ1号以来、9年ぶりのプロ2号本塁打を放った。
昨年まで通算打率.166の男が、5月19日の試合まで打率.417。打数が少ない(12打数5安打)とはいえ、バッターボックスでもしっかりと結果を出している。
試合を決める、貴重な代打3ランを放った5月18日のヒーローインタビューには城所らしさが出ていた。
「球場のお客さんも、ぼくが出てきて『大丈夫か?』ってなったと思うんですけど、チャンスだったんで思い切っていきました。振ったら飛んだって感じでした」
自虐を交えて振り返った城所は、自ら会心の当たりの手応えを語った。
選手層の厚さは球界一と言っても過言ではないソフトバンク。若手も伸びてきており、ベンチに入り続けるだけでも大変。城所も「出たときには、やってやるぞという気持ちでいます」と決意を新たにしていた。
チームは、5月中旬以降、ベンチ入り捕手を高谷裕亮と鶴岡慎也の2人にしており、有事に備えて城所は捕手の練習もしているという。昨季はケガもあり、わずか1試合の出場に終わっただけに、今年に賭ける意気込みは相当なものがあるはず。
13年目の中堅が必死に準備し、プレーしているソフトバンク。チーム内が活性化しないはずがない。このままの勢いで、5月31日からの得意の交流戦に突入していきそうだ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)