ケガ人が続出し、チームは危機的状況に陥っているソフトバンク。それでも、首位争いを繰り広げる強さは、どこに源があるのか? 探ってみたい。
まずはソフトバンクの今季の主な離脱者を並べてみよう。
■離脱した投手
和田毅
バンデンハーク
中田賢一
ミランダ
石川柊太
岩嵜翔
サファテ
■離脱した内野手
明石健志
グラシアル
西田哲朗
■離脱した外野手
柳田悠岐
上林誠知
中村晃
福田秀平
長谷川勇也
グラシアル、明石健志、福田秀平、中村晃らは5月末の時点で戦列復帰を果たしているが、それでも、投手と外野手はまだまだ深刻な人手不足が続いている。
そんな状況でもソフトバンクが首位争いをできている理由はいくつか考えられるが、ユーティリティプレイヤーが多かったことは、ひとつ要因と言えるのではないか。
とくに川島慶三は、左投手のときを中心に、27試合に出場して打率.340(対左投手では.400)と活躍。牧原大成も、内外野を守ってチームの危機を救った。また、復帰した明石健志やグラシアルも複数ポジションに就くことができるため、攻撃力を極端に落とすことなくオーダーを組めたことは大きかった。
故障者が徐々に戻ってきていることと、川島は左肩痛、牧原は打撃不振もあって6月2日付でいったん両選手とも登録抹消となるが、リフレッシュして、またグラウンドに戻ってくることだろう。
投手陣では2年目の高橋礼、ルーキーの甲斐野央と泉圭輔、野手では育成上がりの周東佑京、釜元豪といった、若手の台頭も大きな力となっている。
アンダースローの高橋は、ルーキーイヤーの昨季は12試合に登板しながら未勝利に終わったが、今季は開幕から5連勝を飾るなどエンジン全開。ローテーションをしっかり守っている。
甲斐野と泉は、セットアッパーとして開幕からしばらく無失点の好投を継続。甲斐は13試合、泉は5試合で無失点記録は止まり、さらにその後も痛打を浴びる場面はあったものの、そういった経験も力にして奮闘中だ。
周東は育成ドラフト2位入団の2年目。東農大北海道オホーツク出身で、今季の開幕前に支配下登録されている。登録は内野手だが、外野手としての出場がほとんどで、故障者続出の外野の穴を埋めた。
釜元は2011年育成ドラフト1位で、2015年7月に支配下登録されるも、昨季まで通算出場試合数は10試合に満たなかった。しかし、今季は6月1日終了時点で45試合に出場。5月29日に3安打を放ち勝利に貢献し、呼ばれたヒーローインタビューでは、故障者続出のチームについて「自分にとってはチャンス。今後もアピールしていきたい」と貪欲な姿勢を見せた。
周東、釜元ともにファームでは盗塁王を獲得したことがあり、6月1日までに周東が10盗塁、釜元が6盗塁を記録。他球団にとってはそのスピードも脅威となる。
ソフトバンクのファームは3軍制を導入し、若い選手の実戦の場を増やすのと同時に、より強く競争原理を働かせるシステムが採用されている。だからこそ、次々と若い選手が出てくるのだろう。
また、離脱者が出ているとはいえ、グラウンドに残っている内川聖一、松田宣浩、今宮健太、デスパイネといった実力者はしっかり仕事をしていることも大きい。
このあたりは、球団のバックアップが有効に働いている可能性は高そうだ。経営母体がIT企業ということもあって、映像やデータの解析チームの実力は12球団一とも言われる。
実際の試合で様々な角度から撮影された映像は、AIにより迅速に分析されデータ化。選手や首脳陣、スタッフには、独自開発のアプリが入ったタブレット端末等が支給されており、それを使って、ボールの回転数、スイングスピードなどの細かい数値のチェック、映像による動作確認などを納得いくまで行うことができる。こういったソフトの面の先進的な体制も、チームの強さを下支えする大きな力となっているに違いない。
(成績は6月1日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)