センバツ出場をかけた秋季大会やドラフトが終わり、高校野球もひと段落。これからしばらく球児たちは来春に向けた練習の日々を過ごす。
週刊野球太郎の11月の「高校野球最前線」では、新情報を追いながら今年の高校野球シーンをまとめていく。
今回は大会の結果から小ネタまでバラエティー豊富にお届け。
逸材揃いだったミレニアム世代の後を受ける新怪物候補・奥川恭伸(星稜)。秋季北信越大会の優勝で平成最後のセンバツ出場を確実なものにし、来年のブレイクは必至の状況だが、ひと足先に明治神宮大会でも大仕事をやってのけた。
2回戦で広陵(広島)を7回0失点11奪三振(7回コールド)で退けると、準決勝の高松商(香川)でも7回4安打1失点12奪三振と相手打線を寄せつけない投球を披露した。奥川は先輩・松井秀喜(元ヤンキースほか)が歩いた道を継ぎ、甲子園の怪物になれるか。その真価が問われるときがもうじき訪れる。
菊池雄星(西武)、大谷翔平(エンゼルス)と周期的に怪物が生まれている岩手。今注目を浴びているのは、最速157キロを投じる佐々木朗希(大船渡)だ。
1年生のころから試合に出続けているが、2017年、2018年と夏の岩手大会では3回戦止まり。秋季岩手県大会は3位決定戦に敗れて4位と、東北大会への出場も叶わなかった。最後の夏に、最初で最後の甲子園初出場の望みをかけることになる。菊池と大谷は甲子園の土を踏んで名選手への道を歩んでいった。後に続きたい。
よく知られていることだが、今年のドラフトの超目玉となった根尾昂(大阪桐蔭)の両親はともにお医者さん。根尾は親譲りの頭脳も持ち合わせた、まさに文武両道のど真ん中を行く選手としても世間の話題を呼んでいる。
「父親から寮に毎月20冊本が届く」という読書家の一面も持っており、根尾が読んだとされる本の売れ行きは右肩上がりで伸びるそう。
例えば『思考の整理学』という本は、1983年の発行以来200万部以上を売り上げているが、ドラフト後からの短い期間で2度の重版がかかった。
本が売れないこのご時世にあって、根尾は出版業界のヒーローになる可能性もはらんでいる。本の帯に推薦コメントを書く日も、そう遠くないだろう。
松坂世代、ダルビッシュ世代、田中世代という具合に、時代の核となる選手は数年に1度、現れるもの。
特に根尾たちが築いたミレニアム世代は多くの好選手がひしめいていたため、高校野球ファンは数年にわたって「根尾ロス」に悩まされると思っていたのだが、来年も怪物たちが盛り上げそう。怪物登場は数年に1度、という時代は変わったのかもしれない。
奥川や佐々木が作る新時代、ひと冬を越えたときにどんな世界が広がっているのか。冬を超えて覚醒する怪物の台頭が楽しみだ。
文=森田真悟(もりた・しんご)