履正社の優勝で幕を閉じた令和初の夏の甲子園。8月6日の初戦から8月22日の決勝戦までに悲喜こもごものドラマが繰り広げられ、ハツラツとプレーする高校球児には心を打たれた。
今回は本大会で筆者が選んだ“夏の甲子園ベスト◯◯”をお届けしたい。
まず挙げたいのは今大会最高のチーム。筆頭は頂点に立った履正社だろう。とはいえ、単に優勝だけが理由ではなく、「星稜を破って優勝」という形容詞がさらに箔をつける。
履正社打線は、自責点ゼロで決勝までかけ上がった星稜の奥川恭伸を打ち崩しての優勝。最高の舞台で、センバツ初戦で完璧に抑え込まれたライバルにリベンジを果たした結末は、どんな優れたシナリオライターにも描けない最高のドラマだ。
しかも昨年の王者・大阪桐蔭(大阪)が大阪大会で敗れ、今年の優勝旗は他地区に渡りそうな状況下のなかで勝ちきったのも痛快。あらためて大阪が現在の高校野球王国ということを知らしめる優勝でもあった。
優勝こそ履正社にさらわれたが、今年の甲子園の主役は紛れもなく奥川を擁する星稜だった。彼らが戦った6試合は激闘が多かったが、そのなかでも特に記憶に残っているのは3回戦、智辯和歌山との優勝候補対決だ。
1対1で延長に突入し、タイブレークにまでもつれ込む死闘。炎天下に1人で投げ続けた奥川は傍から見たらガス欠してもおかしくない状態だったが、13回表、14回表ともに相手のバントを三塁封殺でしのぐ好守を披露。
すると大エースの気合が乗り移ったか、14回裏に6番の福本陽生がサヨナラホームランをスタンドに叩き込む。野球の神様が味方したかのような劇的な幕切れとなった。
続く準決勝で東北の名門・仙台育英を17対1で一蹴するのも頷ける底力だった。
いわゆるMVPは一般的には優勝チームから選出されるが、ここでは今夏の活躍と来年の甲子園での活躍に期待を込めて2年生に贈りたい。明石商の中森俊介だ。
昨夏の甲子園では1年生ながら145キロを投げ、今年のセンバツでは3勝を挙げた超有望株。この夏も花咲徳栄、八戸学院光星といった強豪を撃破し、ストレートは最速151キロを記録するなど順調な成長ぶりを見せつけた。
狭間義徳監督就任以降、めきめきと実力を伸ばしている明石商だが、中森のさらなる本格化とともに来年は一気に頂点まで駆け上がるかもしれない。個としてもチームとしても注目だ。
甲子園開幕前は佐々木朗希(大船渡)の岩手大会決勝戦で登板せずに終わったことが話題になった。確かに大舞台で佐々木を見られなかったことは残念だったが、今夏も終わってみれば新たなスター、新世代の才能が生まれた。
住んでいる場所、年齢、ファン歴によってそれぞれのベストは異なるはず。観戦のたびに「マイベスト◯◯」を探そうとしてみると、また違った高校野球の魅力が見つかるかもしれない。
文=森田真悟(もりた・しんご)