2016年のドラフトで広島新庄高から1位指名を受けた堀瑞輝。田中正義、佐々木千隼を抽選で外しての1位だったが、その順位は限りなく妥当だっただろう。
2016年夏の甲子園では最速150キロ、キレのいいストレートとスライダーのコンビネーションを低めにビシビシと刺し、気迫のこもった投球は高校の先輩である田口麗斗(巨人)を彷彿とさせた。甲子園後に侍ジャパンU-18代表のメンバーとして臨んだBFA U-18アジア選手権では、3試合、9回2/3を被安打1に抑える完璧な投球を見せ、紛れもなく世代ナンバーワンの左腕になった。
昨季の2軍成績も高卒ルーキーとは思えない出来だった。11試合を投げ、3勝1敗、防御率1.98。27回1/3で32奪三振を記録した。
完全に2軍レベルは制圧していたが、高卒1年目ということもあり、1軍登板は無理せず調整して4登板、防御率3.38。9月には初先発も経験し、5回を1失点、0四死球にまとめた。
とりわけ、昨季のハイライトは8月のソフトバンク戦で柳田悠岐から三振を奪った場面だ。インハイのストレートに柳田のバットは空を切り、空振り三振になっただけでなく、その対戦時の印象から、シーズン後のテレビ番組で柳田は「スピードボールナンバーワン」に堀を挙げていた。角度あるスリークオーターは柳田のように背中でタメを作る左打者には威力を発揮する。
シーズン後にはアジア プロ野球チャンピオンシップ2017に挑む侍ジャパンに選出。高校時代のキレに加え、球の重さも出てきた。体も厚みが目立ち、1年での進化を感じられた。単なる新人枠ではない、侍ジャパン首脳陣が将来性を感じ取ったからこその選出だった。
1軍での出場機会が少なかったこともあり、堀の実力は日本ハムファンはともかく全国には轟いていない。しかし、少ない登板でも「高卒1年目でこんな投手がいるのか!」と唸らせる迫力があった。
ただ、ひとつだけ課題があるとすればスター性だ。
マウンド上で仁王立ちし、微笑み、物怖じしない堂々とした投球を見せる。その一方で、普段は“超”が付くほど物静かだ。
ドラフト直後、筆者が広島新庄高に取材に行った際、そのギャップに驚いた。“制服の堀”は“マウンド上の堀”とは対照的に、とても大人しい高校生だった。
「クラスでも目立たない方なんです」
恥ずかしがり屋で控えめ。体が大きいわけでもない。体育会系の匂いが一切しなかった。
今季はチームに人生二周目のごとく雄弁な清宮幸太郎が加わった。ゴールデンルーキーの存在は、堀のメディア露出にとっては脅威だ。それでも堀は淡々と寡黙に、マウンドで己を証明しようとするだろう。「男は黙って」の世界を生きている。
素晴らしい1年目だったが、もっと注目されていい。2年目の今季は“地味”から脱却し、ド派手にブレイクしてくれるはずだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)