今季の広島の前評判は高いものではなかった。その要因がチームを支えてきたエース・前田健太のドジャースへの移籍だった。前田の抜けた穴は埋まるのか……。そんな広島ファンの不安を覆したのは野村祐輔の活躍だった。
昨年はわずか5勝と悔しい結果に終わった野村。だが今季は、3月29日のシーズン初先発こそ黒星に終わるも、4月は3勝0敗と勝ち星を積み上げる。6月には4勝0敗、防御率1.44で月間MVPを獲得。チームの首位独走に大きく貢献した。
ここまで14勝3敗(9月12日時点)。同僚のジョンソンとともにハーラーダービーのトップに立ち、マエケンの穴を埋める頼もしい存在に成長した。
チームを支えた投打のベテラン・黒田と新井はともに節目の記録を達成した。
開幕前、2000安打まであと29本としていた新井は4月26日、神宮球場でのヤクルト戦の第2打席でタイムリー二塁打を放ち2000安打を達成。ここまでリーグトップの98打点(9月12日時点)とその存在感を発揮している。
2000安打達成が近づいた時には、チームメイトが背中に「まさかあのアライさんが…」とプリントされたTシャツ着て励ますなど、「いじられキャラ」も健在だ。
一方、開幕前に日米通算200勝まであと7勝としていた黒田。6月29日のヤクルト戦で199勝目を挙げ、あと1勝とするもそこから連敗。足踏みが続く。しかし7月23日、本拠地・マツダスタジアムでの阪神戦で7回無失点で勝利投手に。野茂英雄以来2人目となる日米通算200勝を成し遂げた。
今季の広島で一気に飛躍を遂げたのがプロ4年目の鈴木誠也だ。プロ2年目の2014年には36試合の出場で打率.344と結果を出し「将来の主力候補」として頭角を現す。昨季はレギュラー獲得が大いに期待されたが、レギュラー定着には至らなかった。
今季は春季キャンプ中に右足太ももを痛め開幕1軍を逃すも、4月上旬に合流。4月下旬からは「6番・ライト」でスタメン出場が続く。なかでも6月17日からのオリックス3連戦では17日、18日と2試合連続サヨナラ本塁打。さらに19日には4対4で迎えた8回に勝ち越しのソロ本塁打。チームでは20年ぶりの3試合連続決勝弾を放った。
この活躍に緒方孝市監督は「神ってる」とコメント。そのフレーズとともに鈴木は一躍、知名度を上げた。さらにはオールスターゲームにも初出場、現在も打撃3部門の上位につけるなど、チームには欠かせない打者へと進化した。
文=武山智史(たけやま・さとし)