優勝候補には、センバツ王者の大阪桐蔭、タレント揃いの横浜、3季連続ベスト4の秀岳館の名を挙げる方が多いだろう。
しかし、筆者が推したいのは盛岡大付だ。岩手では、2011年から奇数年は花巻東、隅数年は盛岡大付と両校が交互に夏の甲子園の代表になっていたが、今夏はそのジンクスを破って、盛岡大付が2年連続で出場を果たした。
横浜瀬谷ボーイズ出身の三浦瑞樹、平松竜也を中心とした投手陣。岩手大会決勝で松井秀喜(当時星稜、元ヤンキースほか)に並ぶ高校通算60号本塁打を放った植田拓とタレントは揃う。植田は昨夏、今春と甲子園で本塁打を放っており、経験も十分。3季連続本塁打でゴジラ越えを狙う。
センバツでは準々決勝で履正社と対戦。強力打線が機能せず、6回までパーフェクトに抑えられる完敗を喫した。あれから4カ月半、持ち前の打力に磨きをかけ、岩手大会を圧勝で勝ち上がってきた。花巻東の菊池雄星(現西武)と大谷翔平(現日本ハム)、盛岡大付の先輩・松本裕樹(現ソフトバンク)らが成し遂げられなかった「岩手勢甲子園初制覇」に期待したい。
優勝候補の対抗馬として挙げたいのは大阪桐蔭だ。2012年に春夏連覇を達成したときは藤浪晋太郎(現阪神)が絶対的エースとして君臨。同じように2010年の興南には島袋洋奨(現ソフトバンク)、1998年の横浜には松坂大輔(現ソフトバンク)と、近年の春夏連覇チームには大黒柱がいた。今夏の大阪桐蔭はエースの徳山壮磨、藤原恭大、山本ダンテ武蔵、山田健太、根尾昂など投打にタレントが揃っているが、いずれも「大黒柱」と呼べる絶対的な存在には至っていないように思える。
春夏連覇に不可欠な精神的支柱の不在という点が、大阪桐蔭を本命に推せなかった理由だ。しかし、全国有数のタレント軍団だけに、彼らが一つにまとまれば、夏も勝ち上がる可能性は高い。
そういえば、1987年のPL学園は野村弘(元横浜、現弘樹)を軸に、橋本清(元巨人)、岩崎充宏とハイレベルな3人の投手を起用。野村は絶対的エースという立ち位置ではなかった。そして、立浪和義(元中日)、片岡篤史(元阪神)ら野手陣との総合力で春夏連覇を果たしている。その総合力はPL学園の歴史において「最強チーム」とも呼ばれるほどだった。さて、今夏の大阪桐蔭はどうなるだろうか。
過去の因縁がある高校同士の対戦が見られそうな今大会。有名なところでは横浜と京都成章だ。1998年夏の決勝、松坂がノーヒットノーランで優勝を決めたときの相手が京都成章だった。また、「日本文理の夏はまだ終わらなーい! 」の実況でおなじみの2009年夏の決勝を戦った日本文理と中京大中京などが挙げられる。昨年の決勝で対戦した作新学院と北海のリベンジマッチも因縁と言っていいかもしれない。
上記は多くの人が真っ先に頭に浮かべるところだが、筆者が取り上げたいいは日大山形と前橋育英の再戦だ。
2013年に山形勢として初の夏の甲子園ベスト4進出を果たした日大山形。当時の4番は奥村展征(現ヤクルト)だった。対する前橋育英は2年生エースの高橋光成(現西武)を擁し、初出場ながら準決勝に勝ち上がってきた。ともに初の決勝を賭けたこの対決は、序盤から前橋育英が3対0でリード。6回に日大山形は奥村の二塁打を口火に1点を返すが、反撃はここまで。前橋育英は追加点を奪い、高橋は104球で完投勝利。山形勢の夢を打ち砕いた。
ちなみに、山形勢というとPL学園に29点を奪われた東海大山形の大敗や、未だに決勝進出がないなど、甲子園では明るい話題が少ない。今大会でぜひ、前橋育英にリベンジし、県勢の悲願となっている決勝進出を果たしてもらいたいものだ。
今夏は、「東の清宮幸太郎(早稲田実)、西の安田尚憲(履正社)」とセンバツを盛り上げた両スラッガーが不在。三浦銀二(福大大濠)、西垣雅矢(報徳学園)といった絶対的エースも地方大会で姿を消した。そのなかで注目したいのは丸山和郁(前橋育英)だ。
左腕から繰り出されるストレートは最速144キロ。昨夏、今春の甲子園では3試合に登板し、13回を無失点。センバツでは全2試合とも先発で起用されている。チームには丸山以外にも皆川喬涼、吉澤悠、根岸崇裕ら好投手が揃っており、今夏、荒井直樹監督が丸山をどのように起用するかはわからないが、ドラフトでも注目されるであろう丸山から目が離せない。
文=勝田聡(かつた・さとし)