注目された伊藤優輔は履正社の3番、4番から5奪三振。いずれも内容のいい三振で、内角を突く大胆さと、逃げるスライダー、落ちるフォーク系のボールは、どれもマグレではなかった。それを下位打線にも……とは続かなかったし、続けたとしても、いつかスタミナ切れになるだろう。短い、制限された練習で育った投手としては、センスも持ち合わせる上級の存在であるには間違いないが、練習量で培われる実力差も感じてしまった。ただ、それは練習量で補えるものでもある。
第一打席に立った瞬間の第一印象は「坂口真規(智辯和歌山高→東海大→巨人)」。ユニフォームとシルエットが近いだけだろうが、岡本和真からは、正直言って中田翔(日本ハム)の大阪桐蔭当時のような高ぶりは、打席のムードからは感じられなかった。
しかし、その印象は1打席ごとに、場内のざわめきとともに変化していった。甲子園デビュー打席で早速追い込まれ、大丈夫か? と思っていたら、いきなりのバックスクリーン弾。第一試合の朝日を浴びる寝ぼけまなこの甲子園球場をたたき起こすかのような一発だった。
遊撃手出身だけあって、フットワークに優れた好捕手・岸田行倫。バントへのチャージが素早く、二塁送球も下半身を連動させた機能的なスローイングができる。沖縄尚学高戦では、昨秋チームトップの盗塁数を記録した上原を余裕で刺してみせた。打撃は軸足に乗せる意識が強く、バランスよくはまった時は長打もある。4打数無安打だったが、ライトポール付近への大きな飛球を放った。
重厚な体躯に威圧感を覚える2年生強打者・山本龍河。明徳義塾高戦では3番・中堅手で出場も、センター前ヒットを後逸したり、なんでもないフライを落球したり、失点につながるミスを犯したうえ、終盤まで打撃でもいいところなし。しかし、同点で迎えた延長10回にライトへ強い当たりのヒットを放つと、すかさず二盗。さらに12回には、打った瞬間ガッツポーズを作るほどの本塁打をライトスタンドに運んだ。この大舞台でミスをリカバリーする底力には、ただ者ではないものを感じる。打撃はスタンスを広めに取るノーステップ打法。深く大胆に取るトップが、長打力を生み出す源のようだ。
最速139キロ右腕・名西宥人は、「今日みたいな投球では次は厳しい」と本人も認めるとおり、バランスが悪く、133キロにとどまったストレートも、多投したスプリットを含むいずれの変化球も持ち味の「キレ」はなし。豊川高との2回戦では本来の投球を見せてもらいたい。
打線では4番・岡本昌也の最終打席に大器の片鱗を見た。その前の3打席では緩い変化球に体が伸び上がり、全くバットが出ていなかったが、「先頭打者なので、思い切り振って」ライト前へ火の出るような安打。このイメージをぜひ2回戦でも継続してほしい。守備ではいいプレーもあった5番・木村諄らも、このバッティングを参考にしてほしいと思う。
昨秋は九州大会初戦で8安打完封を飾るなど、「打たれても還さない投手」として名をあげた伊波友和。関東一高戦も、7回まで安打こそ許すものの無失点に抑え、このまま完封でもしたら「らしい投球」と称賛されたはず。それが逆転負けの憂き目に遭うのだから、厳しい現実に向き合わなければならない。常時135〜140キロのストレート、120キロ台のスライダー、スプリットと、高球速帯のボールを制球良く扱うことにかけては、全国でも屈指のテクニックを誇る。さらに走者を出しても生還させない、生命力の強さ。
しかし、うまくまとまったスリークオーターのフォームや制球のいい投球スタイルから、打者に「恐怖心」を与えることが難しい。ストレート自体の爆発力不足を含め、これからもう一回りスケールアップできるかが鍵になりそうだ。