日々、試合を見ていると、あっと驚く珍オーダーや、思わず感嘆してしまう名オーダーなど、印象的なオーダーが生まれる。その要因や背景は、ケースバイケースだ。今季、目を惹いたそんなオーダーをピックアップしてみたい。
1(左翼):筒香嘉智
2(右翼):ソト
3(中堅):乙坂智
4(一塁):ロペス
5(三塁):宮崎敏郎
6(二塁):倉本寿彦
7(捕手):伊藤光
8(投手):石田健大
9(遊撃):柴田竜拓
ひと昔前のプロ野球界は、シーズン最終盤になると、(とくに優勝の目がなくなったチームでは)個人成績のための起用がよく行われていた。最多勝がかかった投手を勝ち試合の5回途中からマウンドに送ったり、打率を考慮して打席数を加減したりということも珍しくなかった。
今季は、そのベタすぎる形が見られた。1番に筒香嘉智を置いた10月7日のDeNAの先発オーダーだ。広島の丸佳浩、同僚のソトらと本塁打王争い繰り広げていた筒香に対し、1回でも多く打席に立たせたいというラミレス監督の配慮だったのだろう。
「1番・筒香」はこの日だけでなく次の試合(9日)でも実現したが、その心遣いが力みにつながったのか、筒香のバットからアーチが生まれることはなかった。
その一方で、ソトは10月6日、7日、9日と3試合連続でスタンドに放り込んで41本塁打。筒香に3本差、丸には2本差をつけタイトルを奪取した。
1(二塁):川島慶三
2(右翼):上林誠知
3(三塁):グラシアル
4(中堅):柳田悠岐
5(DH):デスパイネ
6(左翼):中村晃
7(一塁):内川聖一
8(遊撃):西田哲朗
9(捕手):甲斐拓也
レギュラーシーズン143試合のうち142試合で先発起用されていた松田宣浩がスタメン落ちとなったのが、このCSファイナルステージ第3戦だ。
2015年(35本塁打)以来、2度目の30本塁打超え(32本塁打)を達成した今季の松田だったが、成績は安定しなかった。5月までは打率2割前後と低迷。そこから気温の上昇とともに調子が上向き、8月は打率.371、8本塁打、22打点とようやく覚醒。しかし、9、10月は打率.207と、またも下降線をたどってしまう。
CSに入っても、ファーストステージ3試合、ファイナルステージ2試合を終えたこの日までの時点で打率.190(21打数4安打)。しかも8三振と、打席でくるくる回るシーンが目についた。工藤公康監督も、決断せざるを得なかったのだろう。
結局、その後のファイナルステージ2試合、さらに日本シリーズでも6試合のうち4試合でスタメン落ちとなった松田。チームは2年連続日本一を飾ったが、ポストシーズンの打率は.139(36打数5安打)と、貢献したと胸を張れる内容ではなかった。
そんな状況だっただけに、日本シリーズ制覇後に行なわれた祝賀会では、鏡割で壇上に呼ばれた際に、チームメイトから盛大なブーイングが松田に送られた。これはもちろんガチの非難ではなく、ペナントレースの成績や普段からのベンチでの声出しも含め、その存在感を誰もが認めているからこそ。松田も、腫れ物に触るような扱いをされるより、イジられたことで楽になったに違いない。
1(中堅):秋山翔吾
2(遊撃):源田壮亮
3(二塁):浅村栄斗
4(一塁):山川穂高
5(捕手):森友哉
6(右翼):外崎修汰
7(左翼):栗山巧
8(三塁):中村剛也
9(DH):メヒア
このオーダーのポイントは下位打線。とくに8番・中村剛也、9番・メヒアだ。本塁打王の経験もあり、昨年まではクリーンアップを形成していたこの両者が8、9番に置かれているということは、それだけ不調だった証でもある。
今季の中村は8月に打率.319、12本塁打(6試合連続含む)、26打点で月間MVPを獲得するなど活躍したものの、この6月30日を迎える時点でのシーズン打率は.129、本塁打もわずか3本と深刻な不調に陥っていた。
メヒアも、中村ほどではないにせよ打率.216、5本塁打。来日5年目、スタメン起用493試合目にして初の9番に下げられていた。
ただ、一部スランプの選手がいても、この名前の並びは圧巻。全員が好調なら、歴史的な打線と言っても過言ではない。相手投手に与える圧力は相当なものがあったのではないか。
浅村栄斗が楽天にFA移籍し、中村や栗山巧、メヒアはすでにベテランの域。今季は打力でパ・リーグを制圧した西武が、来季、どういったオーダーで臨んでくるのか、非常に興味深い。
文=藤山剣(ふじやま・けん)