10月17日にプロ野球ドラフト会議が行われた。そこでは未来のスター候補たち107名(支配下74名、育成33名)が指名を受けている。今回は各球団の指名を振り返りつつ、独自に採点してみた。
(※本誌『野球太郎』のドラフト採点は異なります)
巨人は奥川恭伸(星稜高)、宮川哲(東芝)と2度の抽選を外し、堀田賢慎(青森山田高)を1位で指名した。堀田の評価は高かったが1位は驚き。
2位では太田龍(JR東日本)を指名したものの、それ以下は菊田拡和(常総学院高)、井上温大(前橋商)、山瀬慎之助(星稜高)、伊藤海斗(酒田南高)と高校生がメイン。優勝したことで余裕が生まれたのか将来性を重視した指名となった。ただ。1位で奥川、即戦力候補の宮川を外した部分はマイナス。
DeNAは1位で森敬斗(桐蔭学園高)の一本釣りに成功し、2位で坂本裕哉(立命館大)、3位で伊勢大夢(明治大)と大学生の投手を指名した。中位以下は東妻純平(智辯和歌山高)、田部隼人(開星高)、浅田将太(有明高)と高校生が3人、蛯名達夫(青森大)が下位で唯一の大学生と育成に重きをおいている。森と田部の高卒遊撃手をどう育てられるかがカギ。
奥川の抽選に外れた阪神は1位で、同じく高校生投手の西純矢(創志学園高)を指名。2位以下でも井上広大(履正社高)、及川雅貴(横浜高)、遠藤成(東海大相模高)、藤田健斗(中京学院大中京高)と次々に高校生を5人指名し周囲を驚かせた。6位の小川一平(東海大九州キャンパス)が唯一の大学生である。わかりやすい指名だが、ここ1、2年の戦力という面では不安が残る。
広島は森下暢仁(明治大)をまさかの一本釣りに成功。2位では左の外野手として宇草孔基(法政大)と六大学出身者を上位で指名した。3位・鈴木寛人(霞ケ浦高)と6位・玉村昇悟(丹生高)の素質型投手は2年目以降に期待。4位で侍ジャパンU-18代表でも活躍した内野手・韮澤雄也(花咲徳栄高)、5位で捕手の石原貴規(天理大)とバランスのいい指名となった。
中日は地元のスラッガー候補・石川昂弥(東邦高)の当たりくじを引き、2位で橋本侑樹(大阪商業大)、3位で岡野祐一郎(東芝)と2人の先発投手候補を指名した。4位の郡司裕也も「打てる捕手」候補として魅力的。下位では岡林勇希(菰野高)、竹内龍臣(札幌創成高)と高卒の2投手と未来を見据える。岡林にコンバートの可能性はあるが、外野手の指名がなかったのはややマイナスか。
ヤクルトはドラフト1位で3球団競合の奥川を引き当てた。それだけではなく、即戦力クラスである吉田大喜(日本体育大)、杉山晃基(創価大)、大西広樹(大阪商業大)の3人を指名。下位では次世代に目を向け、長岡秀樹(八千代松陰高)、武岡龍世(八戸学院光星高)と2人の遊撃手を指名した。即戦力、将来性どちらも押さえており、満点に近い出来と言っていい。高齢化が進む外野手と1人戦力外を出した捕手の指名がなかったのは気がかり。
西武は佐々木朗希(大船渡高)の外れ1位で宮川へ入札。再び重複したが当たりくじを引き、即戦力投手の交渉権を獲得した。2位でも社会人の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ)、3位では投手歴1年半の異色右腕・松岡洸希(埼玉武蔵ヒートベアーズ)と投手で上位を固めた。
6位・井上広輝(日大三高)、7位・上間永遠(徳島インディゴソックス)と下位でも投手を指名しており、投手に重きをおいていることが伝わってくる。野手は4位で川野涼多(九州学院高/内野手)、5位で柘植世那(Honda鈴鹿/捕手)、8位で岸潤一郎(徳島インディゴソックス/外野手)と各ポジションを指名している。投手陣、野手陣ともにバランスがとれた。
ソフトバンクは石川の抽選を外した後に右の外野手・佐藤直樹(JR西日本)を1位で指名。2位で大学ナンバーワン捕手と呼び声の高い海野隆司(東海大)、3位でサイドスローの津森宥紀(東北福祉大)、5位で巧打の柳町達(慶應義塾大)と即戦力が中心。
4位の小林珠維(東海大札幌高)は投手としてではなく、内野手としての指名となった。野手陣は競争、そして世代交代をすぐに行うことを想定しているように見える。
佐々木の抽選を外した楽天が1位で指名したのは、大方の予想を裏切る社会人遊撃手の小深田大翔(大阪ガス)だった。2位でも黒川史陽(智辨和歌山高校)と二塁手を指名しており、二遊間を刷新したい意図が見える。
3位で津留崎大成(慶應義塾大)、5位で福森耀真(九州産業大)、6位で瀧中瞭太(Honda鈴鹿)と3人の即戦力投手を指名し投手陣を強化。4位で左の外野・武藤敦貴(都城東高)、7位では侍ジャパンU-18代表の正捕手・水上桂(明石商)を指名した。意外性のあるドラフトは吉凶どちらに出るか。
ロッテは大注目の佐々木を引き当てた。その他は2位で手薄だった次世代捕手として佐藤都志也(東洋大)、3位で安打製造機の外野手・高部瑛斗(国士舘大)、5位では内野手の福田光輝(法政大)と大学生を指名。
また、4位で高校生投手の横山陸人(専大松戸高)を指名している。全体的にバランスよく指名した印象。佐々木を育てられるができるかがカギ。
日本ハムは1位で河野竜生(JFE西日本)、2位で立野和明(東海理化)と社会人の先発投手候補の交渉権を揃って獲得したのは大きい。3位では守備で魅せる上野響平(京都国際高)を次世代の内野手として、4位では変速の鈴木健矢(JX-ENEOS)と中継ぎ候補を指名した。
それ以降も望月大希(創価大/投手)、梅林優貴(広島文化学園大/捕手)、片岡奨人(東日本国際大/外野手)と大学生・社会人に舵を切った。高校生の指名が多かった過去とは一味違う指名。方針が変わったか。
1位入札で2度の抽選を外したオリックスは、高校生左腕の宮城大弥(興南高)を指名した。2位では大型遊撃手の紅林弘太郎(駿河総合高)、4位で高校生右腕・前佑囲斗(津田学園高)と高校生は合計3人。未来を見据えた指名となった。
即戦力候補としては、3位では最速150キロを超える右腕・村西良太(近畿大)、5位では強打の内野手として勝俣翔貴(国際武道大)の大学生2人を指名している。社会人選手の指名がないのは2008年以来11年ぶり。
文=勝田聡(かつた・さとし)