10月25日に行われるドラフト会議まであとわずかとなった。各球団は候補リストの最終確認を行っている最中だろう。今年は、昨年の清宮幸太郎(早稲田実〜日本ハム)のような超大物の候補は不在だが、高校生組に注目が集まっている。根尾昂、藤原恭大(ともに大阪桐蔭高)、吉田輝星(金足農高)、小園海斗(報徳学園高)ら今夏の甲子園を沸かせた選手が上位で指名されそうだ。
とは言うものの、大学生や社会人に逸材がいないかというと、そういうわけではない。もちろん、各カテゴリーにドラフト1位候補は存在する。そのひとりが東洋大の甲斐野央である。
最速159キロのストレートに空振りを奪う鋭いフォーク。どちらか一つでも武器になることは間違いないが、甲斐野はその両方を備えている。
東洋大姫路高から東洋大に進学し、1年秋からリーグ戦(当時二部)で登板していた甲斐野だが、本格化したのは3年秋、すなわち昨年のことだ。開幕2戦目にリリーフで初勝利を挙げると、すべてリリーフ登板でそこから4勝を上積みする。結果、5勝1敗、防御率2.06の好成績で最優秀投手を受賞した。
今春もクローザーとして9試合に登板。20回を投げ27奪三振、防御率1.80と役割を果たし、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。
また侍ジャパン大学代表のメンバーとして日米大学野球、ハーレム国際大会に出場。ここでもクローザーとして起用され、合計11試合で防御率0.00。13回1/3を投げ24奪三振と圧倒的な力を見せた。
三振を奪える最速159キロを誇るストレートに鋭いフォークと、甲斐野は守護神に必要な球速と落ちる球をすでに身につけている。制球面でやや不安な部分はあるが、制球難に陥るほどではなく、即戦力となることは確実だ。
1位での指名が濃厚な甲斐野だが、プロでの起用法はリリーフになるだろう。思い浮かぶのは、大卒と高卒社会人出身の違いはあるが、昨年の1位指名でヤマハから中日へ入団した鈴木博志のイメージだ。
鈴木博は開幕から中継ぎで起用され、一時は守護神役にも抜擢された。年間を通して1軍で活躍することはできなかったが、53試合に登板し4勝6敗、4セーブ、12ホールド、防御率4.41の成績を残した。守護神として、中継ぎエースとしては少し物足りない成績かもしれない。しかし、高卒社会人出身の1年目としては充分だったのではないだろうか。まずは鈴木博の成績を超えることが一つの基準となる。
鈴木博以外に近年におけるドラフト上位指名選手と比較すると、1年目から守護神として結果を残したのは山崎康晃(DeNA)の名前が挙がる。山崎は鋭く落ちるツーシームを武器に、1年目から守護神に定着。今年、4年目のシーズンを終え通算100セーブに到達するなど、今や日本を代表する守護神となった。タイプは違うが、成績面では山崎を目標にしたい。
一方、アマチュア時代は中継ぎでもプロに入ってから先発として起用されるケースもある。近年では星知弥(ヤクルト)がその例だ。明治大時代の星は主に中継ぎ起用されていた(最後のシーズンのみ先発を担った)が、プロに入ってからは中継ぎ、先発と両方の役割をこなしている。
今シーズンも終盤の勝負どころで先発起用され結果を出した。現時点では、3年目となる来シーズンの起用法は明らかになっていない。甲斐野も若いうちに多くの経験を積み、プロ野球人生に役立てたい。
社会人出身の美馬学(現楽天)もリリーフからプロで先発転向した一人だ。腰の不安があった東京ガス時代、都市対抗など主要大会ではリリーフとして登板していたが、プロ入り2年目に先発へ転向。2013年には日本シリーズMVPにも輝き、2017年には念願の2ケタ勝利も達成している。
星、美馬を見てもわかる通り、アマチュア時代にリリーフだったからといって、先発で成功しないわけではないのである。甲斐野が先発として大きく羽ばたく可能性も十分にありえるだろう。
甲斐野を獲得した球団はどのような方針で育てていくのだろうか。その育成プランに注目したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)