竜の未来を担えるのか、どうなのか。今季の高橋周平はその一言にかかっている。というか、ここ何年かずっと言い続けている。
高橋は高校通算71本塁打の長打力を引っさげ、プロの世界に飛び込んだ。2011年のドラフトで、高木守道次期監督(当時)が当たりくじを引いて喜んでいる姿が今でも鮮明に思い浮かぶ。甲子園未出場ながら3球団が1位競合した高校生野手は、後にも先にもこの男のみ。期待値の高さは半端じゃなかった。
その経緯を思うと、プロでの成績は伸び悩みと言わざるをえない。ルーキーイヤー(2012年)からの年度別の打撃成績を以下に記す。
2012年:打率.155(71打数11安打)/2本塁打/OPS.432
2013年:打率.249(197打数49安打)/5本塁打/OPS.691
2014年:打率.257(144打数37安打)/6本塁打/OPS.744
2015年:打率.208(154打数32安打)/4本塁打/OPS.624
2016年:打率.251(255打数64安打)/4本塁打/OPS.688
1年目に見せた逆方向への初アーチだったり、2年目に甲子園球場で放ったバックスクリーンへの満塁弾だったりと、インパクトの強い活躍はあった。だが、それ以降は遊撃へのコンバート失敗や打撃不振などにより、何度もあったチャンスを生かしきれなかった印象だ。
2016年シーズンはプロ5年目にして自身初の開幕スタメンを勝ち取り、いきなり猛打賞と幸先のよいスタート。さらに3月31日の広島戦ではグランドスラムをぶっ放し、5点差を跳ね返す大逆転劇の主役に。この調子でいよいよ覚醒かと思われたが、4月末に右手有鉤(ゆうこう)骨骨折が判明し無念の離脱。復帰はシーズン後半までかかり、成績も平凡なもので終わった。
では、今季の周平はどうなんだ。このまま埋もれてしまうのか。筆者からは「君コン」選手からの脱却のカギを2つの要素から見る。
1点目は「特別扱いしない森繁和監督」の存在だ。これまでの指揮官、高木元監督と谷繁元信前監督は、なんとかして周平を一人前にしようとするフシが見られた。高木元監督だとルーキーイヤーの開幕1軍、谷繁前監督だと就任1年目の「3番構想」が、その代表例だろうか。
その点、森繁和新監督は異なるスタンスのようだ。メジャーで実績のある新外国人・ゲレーロ(ドジャース)の獲得について、「今までは(周平を)使い続けようと決めていたところがあるのかもしれないが、ダメだと思ったらすぐに外します。そのための外国人補強です」と公言。これまでに比べ猶予はなさそうだ。
2点目はプライベートの変化。今月3日に婚姻届を提出し、家族を養うことになった。「僕が稼がないといけないので頑張ります」と、4歳年上の姉さん女房を幸せにする自覚は十分なよう。和食中心の食事とトレーニングで体重が8キロ減。早速、結婚の効果は現れている。
昨年末のイベントで自らの状況を「崖っ縁」と語った周平。そこから這い上がり、1年間レギュラーであり続けられたら、「君コン」脱却はもちろん、チームの再建にも大いに貢献することだろう。
ゆくゆくは日本を代表するスラッガーへ。まだ、その望みは捨てられない。
文=加賀一輝(かが・いっき)