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いくつ知ってる? パ・リーグにスポットを当てた個性満載のプロ野球マンガたち


 かつてのパ・リーグは「人気のセ、実力のパ」と形容されるように、観客動員数ではセ・リーグに大きく引き離されていた。しかし、2004年の球界再編以降、パ・リーグ各球団はファン獲得のために努力を重ね、今やパ・リーグがプロ野球界のトレンドを引っ張るまでにリーグ全体が成長した。

 そんな中、かつてパ・リーグを舞台にした野球マンガを振り返ると、「パ・リーグの人気がもうちょっと早く来ていたら…」と感じてしまうファンも多いだろう。そんなパ・リーグにスポットを当てた3本の野球マンガを紹介したい。

「あぶさん」(水島新司)


 パ・リーグを語る上で絶対に外すことのできない野球マンガ。主人公の景浦安武(あぶさん)が大酒呑みの代打専門選手というユニークな設定で実在のチーム・選手が多数登場する。特にあぶさんが所属した南海・ダイエー・ソフトバンクは取り上げられることが非常に多く、球団側も昨年まであぶさんの背番号90を空番にして、その功績に敬意を表している(背番号90は今季からロベルト・スアレスが付ける)。また、南海時代の本拠地・大阪球場ではあぶさんの似顔絵入り看板が外野スタンドに掲示されていた。

「あぶさん」と言えば本業である野球のシーンはもちろんのこと、野球を離れた光景も印象的だ。妻・サチ子の父親が営む居酒屋「大虎」に集まる常連客とのエピソードや酒にまつわる話。独身時代だった初期の女性とのエピソードなど、非常に人情味あふれる話が多い。

 代打専門選手だったあぶさんも南海後期からはレギュラーとなり、ダイエー時代には1991年から1993年まで3年連続三冠王を達成。還暦を越えても現役でプレーし、2009年に惜しまれつつ現役を退いた。


「がんばれ!! タブチくん!!」(いしいひさいち)


「おじゃまんが山田くん」「ののちゃん」で知られるいしいひさいちが描いた野球ギャグマンガ。ホームランアーティスト・田淵幸一をモデルにした「タブチくん」が主人公であり、その姿をユーモアたっぷりに描いている。マンガでは阪神時代も描かれているが、その後に発表された劇場版映画の影響もあって一般的には「タブチくん=西武」のイメージが強い。

 作品には当時の西武監督・根本陸夫をモデルにしたネモト監督など、実在選手をモデルにしたキャラクターも登場。特にヤクルトのヤスダ投手(モデルは安田猛)とヒロオカ監督(モデルは広岡達朗)はセ・リーグの球団ながら脇役として登場回数が多い。劇場版アニメ映画では3本製作され、タブチくんの声を俳優・西田敏行が演じ話題を呼んだ。

 モデルとなった田淵はこの作品で再び人気を獲得。西武も創設当初は下位を低迷したが、1982年に広岡監督が就任し、球団初の日本一に。翌1983年には巨人を倒して、日本シリーズ制覇を果たした。


「ストッパー毒島」(ハロルド作石)


 作者は「ゴリラーマン」「BECK」のハロルド作石。パ・リーグの架空球団・京浜アスレチックスの若きストッパー・毒島大広を主人公にした、1990年代中盤を舞台にしたマンガ。毒島の活躍とともに、弱小と言われたアスレチックスが優勝争いを繰り広げていく。ちょうど野茂英雄がドジャースで活躍した直後だっただけに、作品全体にMLBを意識した開放的な雰囲気が漂っている。野球とサッカーの二刀流選手が登場しているのも大きな特徴だ。

 作品でクライマックスとなるのは終盤の優勝争いだ。特に連勝すれば優勝というロッテとのダブルヘッダーは、未だ語り継がれている1988年10月19日の近鉄対ロッテの「10・19」を彷彿とさせる。現役選手でもこのマンガを読んでいた選手は多く、愛読者だった松坂大輔(ソフトバンク)は高校時代にチェンジアップを投げる際、毒島の投げる変化球「ブスジマチェンジ」を参考にしたと言われている。

文=武山智史(たけやま・さとし)

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