逆転の味。大団円で終わった『ルーズヴェルト・ゲーム』と豊橋カレーうどん/13杯目
今期のドラマの中で野球ファンを虜にしたのがTBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』だ。アメリカ第32代大統領、フランクリン・ルーズヴェルトが「野球で一番おもしろいスコアは8対7だ」と語ったという逸話から端を発するこのドラマは、本格的な野球描写はもちろんのこと、プロ野球や社会人野球にまつわる小ネタも多く、野球ファンを飽きさせない内容になっていた。
そんなドラマの中で、重要なアイテムになっていたのが「カレーうどん」だったのをご存知だろうか。第8話で描かれた臨時株主総会において、会社の経営統合案を否決された株主に対し、会社の会長・青島(山崎努)が「飯でもどうですか? 外で食うのもいいが、うちの野球部の食堂で出すカレーうどんも悪くない」と誘うシーンがあった。実はこの場面、池井戸潤による原作小説では外で鰻を食べることになっていたのが、わざわざカレーうどんに変更されたのだ。
このほかにも、第3話で監督の大道(手塚とおる)が社長である細川(唐沢寿明)に啖呵を切るシーンで食べていたのが、やはりカレーうどん。またドラマ内にとどまらず、唐沢寿明が番組宣伝で出演した「王様のブランチ」でも、200勝投手・工藤公康氏の息子であり、ドラマの中で天才投手役を務めた工藤阿須加が「アッコにおまかせ」に出演した際にも、ドラマのオススメグルメとしてカレーうどんを紹介している。
このカレーうどん、実はロケ地として使われた豊橋市民球場のある愛知県豊橋市のご当地グルメ「豊橋カレーうどん」だ。材料には自家製麺と豊橋名産のウズラ卵が使われているのが特徴といえるが、それ以上に普通のカレーうどんとは大きく異なる点がある。それは、どんぶりの上から順に“カレーうどん・とろろ・ごはん”の三層構造になっていること。うどんを食べていたと思ったら、いつのまにかご飯に変わっているという、ドラマ同様に「逆転の味」といえるだろう。
ちなみに、フランクリン・ルーズヴェルトの好物は、野球愛好家らしくホットドッグ。にもかかわらず、自身の名前が冠せられたドラマにおいてホットドッグが一度も登場することなく、カレーうどんばかりをすすっているとはルーズヴェルトもビックリの展開に違いない。
豊橋カレーうどんに限らず、カレーうどんは愛知県で昔から親しまれている地元グルメだ。ナゴヤドーム内にもカレーうどん専門店・若鯱家が出店しているほど。ルーズヴェルト・ゲームの影響で、今後その認知度はますます広まっていくかもしれない。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。
『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、
『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/
@oguman1977
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